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きっといつかわかるはずだから

私の名前は薊 桜花。最後の時まで楓真君に上手く話しかけられない。


だって楓真君の目線の先は玲奈だから。玲奈は伊吹君に告白されていた。


顔が赤くなっている。二人とも。そんな事を考えていた時だった。


「あっ!よう薊」と楓真君に声をかけられた。私はドギマギしてしまう。


必死に「楓真君」と呟く。楓真君は言う。「いつかまた皆で会いたいな」


私もそうだねって笑いあう。最後の三十分を皆、他愛もない話をして盛り上がる。


わざと皆、明るくふるまいあっている。私は涙が零れてしまう。


すると楓真君が「薊はこの場所が本当に好きなんだな」と言われて頷いた。


楓真君が俺もだよと微笑みかけてくれる。私は楓真君が好きだとあの日、気付いた。


この気持ちは恋なのだとあの日、思った。私は必死に考えてこう言った。


「You are dear to me」「I'm happy to have met you」


意味はあなたは私にとって大切な人です。とあなたに出会えて幸せです。だ。


「You Like」そして最後に私はそう言った。意味はあなたが好きです。だ。


すると楓真君は「どういう意味?」と聞いてくる。私が視線を逸らす。


楓真君が「ごめん俺、英語マジで出来ないんだよ」と言った。


つまり、完全に伝わらなかったという事なのだろう。私は肩を落とす。


さすがに最後はわかったと思ったのに…。まぁいいやと私は思い。


「なんでもないよ」と言った。好きバレしたくなかったから。


最後だし本当はバレてもよかったのだけどね…。それに、もしかしたら。


彼なりの傷つけない為の振り方なのかもしれないからと思った。


私は笑って「楓真君は玲奈に告白しないの?」と聞く。


楓真君は「そりゃしないだろ」と言った。私が驚いていると。


「だって俺が好きな女子、玲奈じゃなくてお前だし」と言った。


私は衝撃で固まってしまった。彼が「今更でごめんな」と言った。


想いが、好きが溢れて涙が瞳に溢れていく。だって…両想いだったのに。


私、全然気付かなかった。私、今伝えなきゃと思った。


「私も楓真君がずっと好きだった」と言った。


彼が「なぁんだ俺ら両想いだったのかよ」と上を向いて笑った。


涙を堪えているのだと直感的に気が付いた。だって…私も嬉しいけど悲しいから。


だから、はっきりと言う。「絶対にいつかまた月空公園で会おう!」


私はずっとそれを願っていた。あの七月七日からまた月空公園で会いたいと。


その時、時間が来てしまう。


この世界で過ごせた日々が走馬灯のように私の心と頭に流れていく。


「桜花、私女の子の友達、初めてなんだ!」と嬉しそうに言った玲奈。


「あたしの事、名前で呼んでください!」必死にそう言った彩音ちゃん。


「俺は桜花の味方だから、離れたってな!」と言ってくれた悠月。


「僕、薊先輩って穏やかで良い人だと思いますよ」と言ってくれた伊吹君。


「桜花ちゃん。君はもう大丈夫。憂鬱な日々じゃないよ」と言ってくれた優也君。


「だって俺が好きな女子は玲奈じゃなくてお前だし」と言ってくれた楓真君。


私、もう大丈夫だよ。学校にちゃんとまた行くよ。もう憂鬱な日々は終わったの。


心の中にはいつでもあなた達がいるから。記憶がなくても心の中に。


私はもうろうとしていく意識のなかそう思った。私ならもう大丈夫だよ。


夜さん。昔、会った事あるの覚えている。あれは私が小四の時だった。


最後に皆が泣きそうな笑顔で手を振ってくれたのが見えたのだった。




目が覚めるとベッドの上に私は寝ていたようだった。


手に何かが握りしめてあった。二通の手紙のようだった。


急いで封を切って手紙を開く。


薊 桜花へ


桜花がこの手紙を読んでいる時には俺達の事もう忘れているのだろうな。


それでも…俺、お前の味方だ。お前は毎日が嫌で嫌で仕方ないと言っていたな。


次第に俺達といれて幸せだと言ってくれたな。俺の身勝手さを許してくれ。


俺は自分の幸せの為にお前らの幸せを奪いました。マジで反省している。


自分の事で頭がいっぱいだった。友達の事を守りたいとか言って本当は、


俺が優也といたかっただけだ。本当にダメな人間でごめんな。


だけど、そんな俺にも皆、優しく接してくれて本当にありがとう。


だからいつか絶対にまた会おう。月空公園の桜の下で。


お前が二十一歳の十二月二十日に俺達はきっとそこにいる。


東海林 悠月より


とても濃い字だった。だけど思いやりが伝わって来る。彼の優しさが伝わって来る。


誰なのか全然わからない。だけど、何故か切なくて目頭が熱くなる。


私は何か大切なものを忘れてしまったのだろうか。


ふと私は何もかもいっそ忘れたいと思った事が昔あったなと思い出す。


だけど…今この何なのかわからない手紙を読んでそれってあまりにも残酷だと知った。


私は、たくさん知りたい。醜い事も綺麗な事もこの世界の事、沢山知っていきたい。


そう思えた。もうふさぎこむのは終わりにしよう。いつかの男の人を思い出す。


あれは私が小学四年生の時だ。『こんにちは。君、迷子かい?』と聞かれた。


もちろん迷子だった。親と旅行に行って途中ではぐれてしまったのだ。


その人は『迷子センターの場所はわかる?』と聞かれ私は首を横に振った。


『そっか、なら連れて行ってあげるよ』と言ってくれた。


私はその人がアイドルみたいに輝いてみえた。年齢は五十四歳だったようだ。


五十代ってこんなにも若く見えるのだと驚いたっけ…。


その人は迷子センターに着くまでに色々な話をしてくれた。


綺麗な景色の話や冬桜という桜がとても好きな事や息子の話。


その人の息子は二人いて一人はもう成人していて大学も卒業している事。


その息子とは一緒に暮らしていない事。理由は職場の近くに住んでいるから。


もう一人の息子は小三で今も一緒に暮らしている事。


その息子は優しいけれども疑心暗鬼な事。


他には自分の夢は人の命をいつか救う事だとか言っていた。


あの頃の私はとても純粋無垢だったな…。今じゃこんなにも憂鬱な日々。


だけど、それも今日で終わり!明日からがんばって生きるのだ。


何故かわからないけれど勇気がみなぎってくる。心の奥底から。


その時、二通目の手紙を読んでいない事を思い出し慌てて開ける。


桜花ちゃんへ


君は本当にこの世界が好きだと思ってくれていたね。僕も嬉しかった。


僕の空想の世界をこんなにも好きになってくれる人がいるなんてと思ったから。


君がまた僕達に会いに来てくれるかは僕にはわからない。


それでも、悠月の手紙を君が忘れないでいるかぎり僕達はまた会える。


僕はそう思っているよ。だから、忘れないでね。僕からの最後のお願い。


君に出会えて僕はよかったと思っている。君の事、素敵な人だと思うよ。


大丈夫。世界は醜いけれど綺麗な部分だってたくさんある。


そんな事もう知っているか。余計な事だよね。


それでも、もしもまた人生が嫌になったらこの手紙を読んでね。


辛い事があっても僕達はいつも君の味方だよ。覚えていてね。


君が暗闇に飲み込まれそうになった時、傍に居てあげたいと思っている。


君は一人なんかじゃない。心の中にはいつも僕達がいるからね。


僕達は心の中でいつも繋がっているよ。だからまたいつか会おうね。


優也より


涙が溢れてくる。私、この人とどこかで出会ったはずなのだ。


だけどちっとも思い出せない。零れ落ちてしまう。涙が。


私、どうして泣いているのだろう。口に涙が入って来る。しょっぱかった。


優也君の字はとても丸くて優しい筆圧をしたじ字だった。


彼の字はとても薄かった。弱々しく所々字がふにゃっとなっている。


きっと書くのにとても苦戦したのだろうと想像する。


私は二通の手紙をとても大事に机の引き出しにしまう。


気が付くともう朝の六時だった。十二月二十一日の。


今日は学校があるはずだ。久しぶりに行こうと思う。


だけど、怖くなる。周りからどう思われるかと想像すると。


震えながら一階に行くとおばぁちゃんが「桜花ちゃんおはよう」と言った。


私も「おばぁちゃんおはよう」と言う。おばあちゃんがこう言った。


「制服着ているって事は、今日学校に行くのね」


私は大きく頷き「でも、学校に行くの久しぶりで怖い」と言ってしまう。


おばあちゃんは「たしかにそうね」と言い「でも、大丈夫よ」と言う。


それが何故か説得力があって「そうだね」と言って朝ご飯を食べる。


私はリュックの中身を確認すると家を出る。学校に着くと皆が驚いた。


ある女の子が「桜花ちゃん久しぶりー」と微笑んでくれた。


私も微笑んで「うん!久しぶりー」と言う。私、もう大丈夫だよ。


あなた達に会う為に頑張って生きるから。生きたいから。


私の生きる意味。


それは、きっといつかわかるはずだから。今はわからなくてもいつか絶対に。



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