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光の館の終わり

僕の名前は上青木 優也。悠月から今、衝撃的な事を言われた。


意味がわからない。命がなかったら記憶があったって意味がない。


なのに、悠月は今はっきりとそう言った。はぁ…これじゃあ記憶残せないよ。


悠月のバカ。だけど、夢として全て残してあげようと思った。


これは本当は僕が貰うはずだった記憶なんだけど悠月にあげようと思う。


楓真君には夢として残してあげよう…そう思った。


僕は悠月の事が好きだ。愛している。だからもっとそばに居たい。




私の名前は茜 玲奈。私は叶わぬ恋をした。優也君に。


彼がいつも私をこの世界に連れてきてくれた事を思い出すと胸が苦しくなる。


でも、もう行かなければいけない。私達は幻の桜の中に入ってしまった。


だから、もうここにはいられない。勝ったのは楓真だった。


私は驚いた。だって楓真って優しいのによくあんな事、願えたなって思った。


だけど、それはきっと楓真君が強いからだよね。私よりも遥かに。


私もう大丈夫。明日、目が覚めたらきっと忘れているだろうけれど。


もう自分の事、嫌いじゃないよ。私は私でよかったって思えるようになった。


優也君のおかげだよ。本当に感謝している。そして、私はふと思った。


どうして優也君があんなふうな決断をさせたのか。それはきっと。


強く生きられる人間だけに記憶を残したかったのだと思う。


私は心の中で優也君。大好きでした。あなたは私の初恋の人ですと思った。


もう会えないと思うと悲しいけれど私は優也君どうか病に勝って!と心の中でありったけ叫ぶ。その瞬間、優也君が私に微笑み言った。


「わかった。できるだけがんばるよ。そして、会いに行く」


恥ずかしくなる。全部伝わっていたようだった。顔が赤くなる。


告白したのも同然だよと思った。だけど、伝えずに終わらなくてよかったと思った。


言えないけれど伝わった。それってとても凄い事だよね。


その時だった楓真が「なぁ優也君。俺が記憶を消せばお前は生きられるのか?」と聞く。楓真、気にしているのかな。そりゃそうだ。自分のせいで人が亡くなるのだから。


すると優也君は「まぁそうだね」と笑顔で言った。


そして「それに僕。まだ死なないよ」と言った。皆が息を呑む。


彼は「だって、あんなにも皆に生きてって言われたら生きるしかないよ」と言う。


私は目を丸くする。だって「それなら最初からそうすればよかったじゃない」と言う。


すると彼が説明してくれる。今までは本当に不可能だったこと。


だけど夜さんが自分の残りの灯をすべて使ってこの場所を作ってくれた事。


この場所に連れて来た六人が全員、優也君の幸せを祈れば病気が治る事。


その方法は幻の桜を見つけたら出来る事。つまり私達は騙されていたのだ。


だけど、そこで、ん?っと思った。だって楓真は皆と違うかったはずなのに…と


思っていると「楓真の記憶は夢として残すことになった。ごめんね」と言った。


楓真は「大丈夫」と言った。私も夢でもいいから残したかったなと思った。


その時だった。「あの、玲奈先輩好きです!」と伊吹君に言われた。


私は「えっ?」とつい言ってしまった。だって、告白された⁉私が⁉と混乱する。


どういう事ってこんがらがっていると「あのよかったら返事ください」と言われる。


私は一度落ち着く、そして「だけど、記憶なくなっちゃうよ?」と言う。


伊吹君は「それでも、玲奈先輩が好きなんです」と言った。


私はドキッとした。初めて告白されたから。だけど…それすらなかった事になる。


とても残酷な事だけれど…違う。困難だけど嬉しい言葉だったではないか。


私は「初めて告白されたからよくわかんないけど嬉しかった」と答える。


そして「だけど、私は伊吹君の事、友達としての気持ちしかないからごめん」と言う。


伊吹君が「そうですよね…だけど僕、諦めませんから!」と言った。


笑っていた。涙を浮かべながら微笑んでいた。私は思った。好きになってくれた。


それは、奇跡みたいなものなのかもしれないと。私の事を想ってくれた。


この奇跡すらもなかった事になってしまうと思うと私まで泣きそうになる。


そんな私達に優也君が「皆、笑ってよ。最後なんだから」と言った。


悠月が「俺、夢だったって思いこむって事だよな?」と聞いてくる。


私は「記憶が残るだけいいじゃない」と言う。すると悠月は「本当だ!」と言った。


相変わらずバカな奴だ。だけど、その姿すら今はとても愛おしくて微笑む。


すると悠月がふと私を見つめてきてから「これ受け取れ」と渡された。


それは手紙らしいものだった。それを悠月が皆にも渡していく。


優也君も「僕からもー」と皆に渡していく。私、手紙書かなかったなーと悔やむ。


だけど私は思う。たとえ手紙がなかったとしても私達はいつかまた会えると。


その時だった。優也君が「もう時間だよー」と言い視界がにじんでいく。


たくさんのこの世界で過ごした八ヵ月間の間がフラッシュバックしていく。


走馬灯のように流れていく。「玲奈、私達気が合うね」そう言ってくれた桜花。


「俺はお前と過ごす時間悪くないなって思っている」と呟いていた楓真。


「玲奈ってファッションセンスあるよなー」と真剣な顔して言っていた悠月。


「仲良くなりたいの!」そう言ってくれた彩音ちゃん。


「玲奈ちゃんは大丈夫。とっても素敵な心をもっている」と言ってくれた優也君。


「好きです!」と伝えてくれた伊吹君。いつも本の、話したっけな。


七月七日現実で会えたのに…。もう二度と会えないのかな?


そんなの嫌だなだけどそれが運命なのだとすれば受け入れるしかないよね。


最後に私の頭に映ったのは皆の涙と笑顔と手を振る姿だった。




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