1-6
佳山も光太郎を追い掛けた。
満点の星空から、流れ星が悲しそうに一筋落ちていった。
光太郎はわけもわからずに、走る。
鈴姉!
今更ながら、責任を感じてしまう。
もう少し、後もうほんのちょっとだけ、早くに鈴姉を庇うことができればよかったんだ。
そうすれば……。
いや、そうしていれば……。
鈴姉は……きっと……。
気がつくと、光太郎は天台学校のグラウンドに戻って来ていた。
「うっがーーーっ!」
前見た血塗れの得体の知れない生物は、硬そうな尾を持つ巨大な黒い物体に変わっていた。目だけが真っ赤で、ぎょろりとしている。
まるで、大きな黒い蛇のようだ。
高さと長さは、二メートルくらい。
未だに、校舎は逃げ惑う人々で大パニックだった。
光太郎は拳を握ると、今度は真っ赤な炎が腕から拳へ行き渡る。不思議と熱くはなかった。
炎のパンチを黒い物体に打ち込むと、黒い物体は遥か後方へぶっ飛び。
瞬時に、燃えカスとなった。
硬くて、弾力が少しある。
光太郎は、黒い物体がゴムのような感触だと思った。
光太郎は無心でたくさんの黒い物体を、叩きのめす。
そうこうしていると、クラスメイトの藍川 廻が一階の教室から光太郎を呼んだ。
「光太郎さーん! こっち来てー! 学校内の黒い蛇も倒して!」
「凄ーい! 光太郎くん!」
「凄いですわ! 光太郎!」
「光太郎ー! カッコイイじゃん!」
藍川の取り巻きが叫ぶ。
藍川 廻は学校一有名なアイドルの卵だった。
「うらーーー!」
光太郎は学校内へと駆け出した。そして、教室にたどり着くと、ギュウギュウ詰めの黒い物体を見境なく、片っ端から、炎の拳で燃やしていった。藍川と取り巻きは、教室の片隅で蹲っている。
「光太郎! ちょっ、危ないよ!」
狭い教室で辺り構わず暴れていた光太郎の背後に、黒い物体が迫っていた。
屈んでいた藍川が危ない! と、思って目を閉じた。
その時、藍川の手が仄かに光った。
光太郎の身体も同時に、仄かに光りだした。
「あれ? 手があったかい? なんで??」
藍川は不思議がって目を開けると、光太郎は、それでも気がつくことなく。黒い物体をなぎ倒していく。背後にいた黒い物体が、光太郎目掛けて派手な頭突きをした。だが、ぶち当たった光太郎はびくともしない。
それどころか、光太郎の身体に黄金色の翼が生えた。
「うおおおおーっ! とどめだ!」
光太郎が背後の黒い物体を炎の拳で燃やすと、それで最後だった。
黒い物体は全て燃えカスになり、教室は静けさを徐々に取り戻していった。