異常進化
同時刻
つくば市 天台高校
「ねえ、光太郎? 今日の卒業式でお別れね」
「……ああ、卒業おめでとう」
「ホントにお別れね。寂しくなるわね」
「……ああ」
「明日には、早朝に空港へ向かうわ」
「ああ……」
鈴姉とは今日で、ホントのホントのお別れだ。
これといって、何て言おうとも考えていなかった。
お土産買ってきて?
海外でお幸せに?
大学の名前が未だに覚えられません?
でも……これで、ホントにオ・ワ・カ・レ……。
なのか……。
鈴姉は頭がいい。
そりゃあ、海外のナントカ大学へ行くのはどこもおかしくないけどさ。
でもなあー。
なんかなあー。
「よっ! 光太郎! いつまでも、校舎の隅にいないで、外へ出てみろよ。空から何か降って来るんだ」
「ああーん?」
友達の佳山の声に。
廊下の窓際から見える空は……。
いつもの血のように赤身がかって……。
太陽光線が、これ以上ないほど真っ赤だった。
このところ世界中では、想定外の異常気象が目立ってきていた。
赤い空から、小さな黒い斑点が見える。
佳山の言う通りに、空から何かが無数に降ってきていた。
「鉄屑? 大空が大量のゴミを捨てたみたい? だんだんこっちに近づいてくるわね」
「大きいなあ。あれ。まさか全部爆弾なんじゃ……」
「いや、ありゃ、カプセルだろ? だって、円筒形で窓みたいなものがあるじゃん」
鈴姉が佳山と一緒に、空を見上げた。
確かに、窓のような外から中が見えるような透明なガラスがついている。それはまるで巨大なカプセルのようだった。
「うーん……なんだろ? あれ?」
光太郎は目を凝らした。
「いや、どう見たってありゃ、カプセルだろ!! 中に何か入ってるんだよ!」
「え? え? 宇宙人でも入ってるのかしら? 避難した方がいいわ!」
近くの道路に、最初のカプセルが落ちた。
凄まじい衝突音と共に、道路の瓦礫など車の破片などと共に透明な水が飛び散った。
ここまで、爆発的な水飛沫が飛来する。
それを機に、街の至る所から地響きと、大爆発や破裂音が木霊してきた。
「光太郎! ひ・な・ん! 避難した方がいい! ほら、急いで!!」
「ありゃ! こっちに飛んでくるぞ!」
「お、おう!」
カプセルと地上との正面衝突に、巻き添えを喰らった水に濡れた何台かの普通自動車が、こっちへ飛んできた。