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エピローグ

━さて。


その後の私達をお伝えしますわね。

‥‥とはいっても、恐らく皆様の予想通りですわ。


まず、ナルヴィク殿下と聖女様の婚約披露パーティー。


私達は東屋で過ごしたあの後、大変恥ずかしながら城で働く侍女の方々にお願いをして、軽く化粧直しをして頂きました。(アルが容赦ない口付けをしてきたせいで口元が‥)

そうして身だしなみを整えてから再び大広間に戻り、王族の皆様や聖女様がいらっしゃるところまで参りました。


アルが情けない姿を曝し(もちろん、王族の方々のみに。)心配をお掛けしていたので、無事仲直りをした旨をお伝えにです。

これにはナルヴィク殿下と聖女様が特に安心した様子でしたので、『どれだけ醜態を曝したのかしら‥‥?』と別の懸念が生まれましたが、とりあえず考えないことに致しました。

そのまま今日はお暇させて頂きたい旨をお伝えしましたところ、陛下が快く許可してくださったので、アルと2人で感謝を示しつつ、お暇させて頂きました。


そして、侯爵邸に帰ってきた私達は使用人一同にも仲直りした旨を伝えたところ、全員大喜び。

━ではありませんでした。セニア、ノーラ、カーチャが不満そうでしたので、私の自室について来てもらうことにしました。


どんなに綺麗なドレスだろうと、私が着ているのは王家御用達の一級品。

正直、落ち着かないのだ。パーティーの間も『ちょっとでも汚したりする訳にはいかない。』と気が気でない思いでした。━要はさっさと脱いでしまいたい。


という訳で、ドレスはどうせ一人で着脱不可の面倒なもの。手伝いは必須。

なので、セニア達に手伝ってもらいつつ説明をしようと思った次第です。


『ナルヴィク殿下と聖女様に改めてご説明頂いた。その内容はバルトロが直接伺って私達に話してくれたのと同じだった。』

と伝えた。


でも、何かが腑に落ちない。


そんな表情を浮かべつつ、一応納得はしてくれた様です。

なにより、私が許してるなら自分達が拘るのは違うからと。


そうして、セニア達も苦笑いを浮かべてはいたが、『もう奴ではなく、お館様とお呼びすべきですね。』と私に答えてくれたので、私も安心した。


━ただ。


湯浴みを終えて自室のベッドに向かおうとした私の前にアルが現れた。

というか、私のベッドの縁に座っていた。こちらも寝る準備万端で。

そして、私に気付くと満面の笑顔で近付いてきて、私を抱きしめた。


「エレーナ。早速今日から一緒に寝よう?」


‥‥私はこれを聞いた瞬間、反射的にアルのお腹に拳で一発食らわせてました。


アルは『うっ‥‥』と呻いたあと、蹲りました。


「あ。‥ごめんなさい。つい‥‥」


「つい!?‥‥エレーナ‥‥これは調子に乗るなってことなのか‥‥?私はまだ許されてなかったのか‥‥?」


お腹を抑えて涙目で見上げてくるアル。


英雄と言われる程の強さは持ってるはずだし、私の弱い一撃が本当に効いているはずはないので、これは精神的な負傷なのだろう。


━それはよくて。


「えっと‥‥」


さて、どう答えたものかしら。


そうして迷っていると、アルの顔に徐々に悲壮感が‥‥


「エレーナぁ‥‥」


‥‥この人、本当に英雄なのかしら?


そう思ってしまう程、情けない姿を曝す我が夫。

でも、その様子が可愛く見えてしまう。


全体的には大型犬。対外的には一匹狼(らしい)。

でも今のアルの首から上だけ見たら、庇護欲をそそる可愛いわんこ。


‥‥どうしよう‥‥もう少し見ていたいわ‥‥


━━ちなみに、セニア達はアルトゥールの姿を視認した瞬間、睨もうとしてやめ、すぐに部屋を出ていった。━━


私が現状に悩んでいると、アルがゆっくり立ち上がり、私に手を伸ばしてきた。━涙目のままで。


「エレーナぁ‥‥エレーナが嫌なら何もしないから‥‥だからせめてベッドは一緒がいい‥‥」


そう言いながら恐る恐るゆっくり私の背中に手を回し、再び抱きしめてきた。

もちろん、私は抵抗せずアルの腕の中だ。


「エレーナ‥‥頼むから‥‥」


情けなさ過ぎる声のアルにさすがに可哀想に感じた私は答えてあげることにした。

私もアルを抱きしめ返し━


「アル。確かに今日は疲れたから、休ませてほしいわ。」


「‥‥ベッドは‥‥?」


「仕方ないから一緒でいいわ。」


「!!! ほんとか!?」


さっきの情けなさ過ぎる声はどこに?と感じる程嬉しそうな声で聞き返してきたアルに、つい軽く笑ってしまいつつ、答えた。


「ふふっ。─ええ。」


「!! やった!!─ありがとう、エレーナ!!」


「そんなに嬉しいの?」


「もちろんだ!!─やっと‥‥やっとエレーナが帰ってきてくれた‥‥」


そう言いながらアルの私を抱きしめる手に少しだけ力が加わった。

全く苦しくないので、ちゃんと適度に力を抑えてくれてるのだろう。


「ふふっ。‥‥あ。」


「?─どうした?」


私はあることを思い出した。

なので、アルに腕の力を緩める様に促し、顔を見合せた。

そして、私は笑顔で告げた。


「遅くなったけれど‥‥アル。─いえ、アルトゥール様。長きに渡る戦闘、お疲れ様でした。そして、おかえりなさいませ。無事の帰還を嬉しく思いますわ。」


「!!!‥‥エレーナ‥‥」


目を見開いて驚きを現したアル。

けれど、すぐにその表情は嬉しそうなものに。


「ああ。ただいま、エレーナ。」


「私も本当はアルが帰ってきたその日に言いたかったんだけどね?」


「うっ‥‥改めて、色々申し訳ありませんでした‥‥」


「ふふっ。─さて、もう寝ましょう?」


「ああ。」


そうしてその日は大人しく、けれど一緒のベッドで眠った。


**


━その後。


というか、翌日からアルは私を構いだした。

婚約期間、結婚後も構ってくれてはいたが、先代である義両親が亡くなり、当主の仕事に追われてそれどころではなかった。

その後はアルが戦争に駆り出されて‥‥


だからか、それらの時間を取り戻したいと鬱陶しいぐらいに私にべったりになったのだ。


例えば━


「‥‥アル。気まずいのだけど‥‥」


「駄目。」


「もう‥‥こうしてじっとしてるのが勿体ないわ。」


「それでも駄目。私のエレーナが足らなくなる。」


「私、栄養剤とかではないわよ‥‥?」


「私にとっては栄養剤以上の効果がある。」


「‥‥‥」


ちなみに、アルは自分の執務室で書類を捌いている。

問題なのは私がいる場所。


なんと、アルの膝の上に横抱きの状態で座らされている。


『邪魔でしょ?』とか『重くない?』とか『これでは手伝えないわ』とか言ってみたが、先ほどの様に頑として譲らず、降ろしてくれないのだ。


もちろん、バルトロや他の使用人達も出入りする。

その時が一番気まずくて恥ずかしいのだ。


そうして限界になった時、私は毎回こう言ってアルの膝から降りるのである。


「‥‥降ろしてくれないなら、今晩からベッドは別々にするから。」


「!? だ、駄目だ!それだけは!!!」


顔に絶望を現すアルを見て、『今だ』とスルッと降りると━


「!! エレーナ!」


「はぁ‥‥もう逃げないって言ってるのに‥‥」


「でも‥‥」


私は呆れ顔。アルは悲壮感を漂わせている中、バルトロが口を開くが、やっぱり呆れ混じりで‥‥


「お館様。奥様は嘘はつかないでしょう?」


「うっ‥‥分かってはいる‥‥」


しょんぼりするアルにバルトロと2人でため息を吐く。


「‥‥ねぇ、バルトロ。」


「‥なんでしょう?奥様。」


「この人、世間では英雄と言われてる人よね?」


「ええ‥‥そのはずです。」


「見えないわぁ‥‥」


「激しく同意致します‥‥」


「2人共ひどい‥‥」


そんなやり取りをすることもあるが、アルは外ではちゃんと『国の英雄』だった。


情けない姿を知るのはヴァシーリ侯爵邸の者達と王家の皆様だけ。

現に城の騎士団に顔を出すと、途端に凛々しくなる。


騎士達は英雄に師事したいと集まるため、アルも相手をしたりする。

私もたまにその様子を見させてもらってる。


剣を振るアルは控えめに言ってもカッコいいのだ。

それはもう、惚れ直すぐらいに。

魔法の腕も凄いので、『そりゃ強いよな』と納得もする。

英雄と呼ばれるほどの実力は本当に持ち合わせていたのだ。


そんな日々を過ごし━


***


戦争に勝利し、英雄として帰還したアルと仲直りしたあと、2年が経った頃━


私達に漸く子供が産まれた。


長男であり、アルの後継ぎとなる子供。

カルルと名付けた息子は私と同じ黒髪とアルと同じ緑の瞳で、アルそっくりの顔だった。


そして、カルルの後も男女一人ずつの3人の子宝に恵まれた。


私もアルも子供達に看取られてこの世を去ることができた。

私はそんな日まで幸せな人生を過ごした。


ただ、この幸せな人生の中で文句を言わせてもらえるなら━


『私より先に死ぬなんてずるいわ、アル。』


そう言いたい。


でも、きっと私を待っててくれているはずだから━


また、夫妻喧嘩からかしらね。


今逝くわ、アル。─待ってなさいよ‥‥?



そうして、私の幸せな人生が終わった。



━━あの時アルと話し、仲直りして良かった━━



そう、心の中で呟きながら━


エピローグとしながらおまけ話があります。

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