赤いお茶と木目のカップ
慣れるとなかなかクセになりそうだが、好みが分かれそうな味でもある。
「うちの食堂を仕切っている男がかなりのお茶好きでして、お昼と、午前と午後のお茶の時間の3回には日替わりで色々なお茶を出してくれるんです。」
「そうなんですね。はじめて飲みましたが、クセになりそうな美味しさです。」
以前、南の島に旅行した時に似たようなものを飲んだ気がするが、この世界でははじめてなので、そう言っておく。
「伝えておきます。きっと喜ぶと思います。」
二人の間に、なんとなく穏やかな空気か流れる。
その穏やかさに後ろ髪をひかれながらも、俺はユキの喉が潤ったのを見計らい、切り出した。
「ひょっとして、こちらもキノヤさんで作っているものですか?」
こちらとはもちろん、お茶を入れたカップのことである。
「そうです。一番多く作っているものです。まぁ、他でも似たデザインのものはたくさんあるんですが。」
自宅のコップを思い浮かべる。たしかもっと濃い茶色だ。
他の工房で作ったものも作りたては淡い色をしているのだろうか?
「先ほどニトさんがご覧になられていた置物は、このカップで王宮からいただいたんですよ。」
「え?そうなんですか?」
「えぇ。」
そう言ってユキは自分の後ろの棚から、先ほどの置物をテーブルの上に移動した。
「もしよかったら手にとって見てください。」