工房キノヤ
「はい、よろしくお願いします。申し訳ないのですが、今日は工場長がいなくて…、僕から説明させていただきますね。」
「今日はまず、ここで、この工房キノヤの全体的な話をさせていただき、その後工房の中を見てただこうかと思っているのですが、それで大丈夫ですか?お昼は食堂がありますので、そこで他の皆さんにもご紹介させていただこうかと。」
「はい。よろしくお願いします。」
ユキは今日一日俺に付き合ってくれるようだ。この手の説明に時間をかけてくれる工房は珍しい。さすがは大店といったところか。
ユキの説明は、よくまとめられていて分かりやすかった。
工房キノヤは創業100年を迎える近隣では老舗の木工工房である。専門の木材係を持ち、腕のよい職人をかかえ、質の良い木工製品を安価で提供している。
一家に一つは工房キノヤの製品があると言っても過言ではないだろう。
この工房で毎日働いているのは約50名。この他に不定期で手伝いに来るものもいる。
材料を買って管理する木材係に、実際に木を加工する木工職人たちの加工係、それに防腐処理や色付けをする彩色係がある。
分業することで、それぞれの技能を高めることができる。ただし、どの係も専門知識や専門技能が必要となるため、係が変わることはほとんどない。
街の中心部に工房キノヤの品を取り扱う店舗もあるが、基本は仲介業者への販売で、個人向けはそれこそ王宮向けなどの一点物がメインとなっている。