表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/12

鐘の音の朝

ゴォーンゴォーンと遠くで鐘の音が聞こえる。

ちくちくと肌を刺す刺激が不愉快で俺は目を覚ます。

ここは転生先の世界、ハイダツ。ベル王国の地方都市フアカクにある俺の家であり、今日は俺の転生xx日目である。

ゲーム序盤のナレーションのように基本情報が脳内に流れ込んでくる。毎朝の日課となった基本情報を聞き流し、俺の一日が始まる。


この世界での俺の名前はニト。

この世界での俺の職業は職人で、基本的には工房に勤めて日々の糧を得ている。

まだ早朝といっても良い時間だが、工房の朝は早い。そろそろ起きなければならない。

身を起こすとベッドが軋み、嫌な音を立てた。

震えながらもベッドから這い出して、小さく伸びする。木の床に絨毯を敷いているのだが朝はどうしても寒い。

窓からは弱い光が差し込みはじめており、ちょうど夜が明けたことが分かる。


瓶から木桶に水を汲む。

木桶の縁はささくれだっていて、トゲが指にささってしまった。

(朝からツイてない…。)

うんざりとした気分でトゲと格闘しつつ顔を洗い、台所へ向かう。

台所には鉄のオーブンがあり、炭が入っている。今でこそ火打石に何の違和感もないが、初日はギョッとしながらやってみたものだ。もといた世界では火打石など使ったことどころか見たこともなかった。

(しっかし、初日でも意外とあっさり火がついたんだよな。)

そしてその時、この世界で生きていくための基本的なスキルは身体が習得していることを知った。

そういえばパンを焼くことも、体に身についていたスキルの一つだ。

俺は自分をこの世界に送り込んだ何者かの計らいに感謝しつつ、カットしたパンをフライパンにのせ、鍋に水を沸かす。

火力が強いのかこの世界の特性なのか、あっという間に湯が沸く。湯を少量小鍋にとり、お茶替わりの葉っぱを入れて煮出す。湯色が薄く黄緑になれば出来上がりだ。謎の葉っぱはミントのような清々しい香りがする。

茶漉しはないので、葉の沈殿を待って上澄をお玉で木製のカップによそう。木のカップは縁がぽってりと厚く、濃い茶色である。

そうこうしていると焼けたパンの香ばしい匂いが漂い始める。

(こうして、食事が美味しいだけで、この世界でやっていける気がするな。)

コーンブレッドに似た雑穀入りの甘みのあるパンを口に含み、お茶で流し込む。冷えたからに熱いお茶が染み渡る。


のんびりしている余裕はない。あっという間に二度目の鐘が聞こえ、家を出る時間だ。

さぁ、今日から新しい仕事だ。出かけよう。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ