超越するもの月女神に勝負を挑まれる
ここ最近はあの川辺でのトラブルを除いたらヘパイストス様もモノづくりに熱心だしまぁ穏やかなものだ。でもあの一件以来ダプネから月桂樹の冠や花が送られてくるんだが俺なんか感謝されるようなことしたか?趣味じゃないからというのも捨てたら祟りがありそうなレベルの頻度なので取りあえず部屋に飾ったりお母様にあげたりしてるんだが・・・
そうして今後の月桂樹の利用法について考えていると・・・
「貴方がメタよね?」
弓矢と鹿を引き連れて数多のニンフたちに囲まれた少女・・・いや女神アルテミス様が立っていた・・・・
「あ、アルテミス様が何でこのような海に?」
「決まってるでしょ。ダプネをあなたがたぶらかしたせいで私の所を去ってずっと月桂樹や植物で何か作るようになっちゃったのよ。」
「いや、たぶらかしてはいないんですけど・・・」
っていうかこっちはその贈り物をどうするかで困ってるからあなたに戻って来いって命令して欲しいくらいなんですよ?
「とにかく私のニンフをたぶらかしたの。例え同じ父だとしてもこのままにはしておけないわ。私と勝負なさい!」
「・・・分かりました。勝ったらダプネにニンフとして働くように言ってくれません?」
そうすれば贈り物作る時間もなくなるだろうし・・・
「え?勝つ条件が自分に不利になる要求なの?まぁいいわ・・・こっちが買ったらこの鹿の餌やりを毎日傷つけないようにやってもらうからね。」
(アルテミスのシカはヘラクレスの試練にもでる神々しくずっと追いかけてしまい最後には飢えてしまうと言った恐ろしい逸話を持つシカである。)
人のこと言えないくらいにいい条件だな。
「わかりました、勝負内容は?」
「狩りだと私が勝ってしまうわ、それでは勝負をしかけた私の器に関わるからね。お前の得意な釣り勝負にしてあげる。」
そうして始まった釣り勝負だったがアルテミスはこの勝負内容を後悔することになる・・・何故なら・・・
ー数時間後ー
「ま、全く釣れない・・・」
「・・・・・」
そう、狩りは獲物がいれば追いかけ常に動き続けるのに対し釣りは釣れるポイントを定め釣れるまでまたなければいけないからだ。アルテミスは裸体をみたり女性が交わっているのを見るとすぐに罰を与える短気なところのある女神。待つというのに耐性があるわけがなかった・・・
「ぐっ・・・狩りと同じだと思って油断した・・・同じところを一点に見つめるのは同じでも風景の変わる森と違ってあまり景色の変わらない海・・・気が狂いそう・・・」
しかし向こうを見てみると・・・
「それ!ほっ!とりゃ!」
「す、すごい!魚がどんどん釣れている!」
ニンフたちの言う通りメタのところでは驚くほどの魚が釣れていた・・・
しかも・・・
「落ち着くな~・・・」
待っている時間も彼は全くと言っていいほど退屈してなかったのだ・・・」
(こっちは釣れなくて気が狂いそうになってるのになんて奴なの・・・!そうだ場所を替えれば・・・)
そうしてアルテミスはメタが移動したのを確認すると素早く彼の場所に移動するが・・・
「ま、全く釣れない…」
先ほどと同じだった・・・
そうして制限時間がたったころには・・・
「え、えーっと・・・メタ様30匹、アルテミス様0匹。勝者メタ様!」
審判役のニンフによって勝敗は決した・・・
「そ、そんな・・・・こんなのあり得ないわよ!あなたのお母様の力があったんじゃないの!?」
そう言ってアルテミスは釣り竿を海に投げてしまった・・・
「あ、海にゴミを落としたら・・・」
そう、海はポセイドンの支配下、つまり・・・
「ぎゃぁおぉぉお!!」
「きゃぁああ!怪魚よ!!」
ニンフの言う通り翼の生えた巨大な魚が海から現れたのだ。
「くっ・・・しまったつい悔しさで・・・だけど怪物退治なら!」
アルテミスは弓矢を打ち込むが・・・
ガキンっ!!
「なにっ!?」
ポセイドンがこれを予想して魚の鱗の硬さを青銅並みにしていたのだ。
そして魚が翼をはためかせれば・・・
「きゃぁああ!」
ニンフたちも吹き飛ばされそうになる。そう、ポセイドンはこれをいい機会にアルテミスからニンフを吹き剥がして自分の物にしようとしていたのだ。
「皆!!」
アルテミスが焦っている中でもメタは冷静だった・・・
「やれやれ・・・またトラブルか・・・」
そういうと釣竿を振りかぶり・・・
「そりゃぁあ!」
魚の口目掛けて釣り竿を振って釣り針を魚の口にひっかけた!
そう、この魚は表面は硬くても口、つまり内部は普通の魚そのもの。そしてひっかけた魚をメタは・・・
「岩にたたきつける!!」
ドゴンっ!!
「ぴぎゃぁああ・・・・」
岩に強烈にたたきつけられた怪魚は大人しくなるのだった・・・
「ポセイドン様、この魚を私の聖獣とさせていただきますのでどうか矛を収めて頂けないでしょうか?」
メタがそう叫ぶと海からアルテミスの投げ捨てた釣竿が落ちてきて魚は海へと帰っていった・・・・
「おわったか・・・」
メタはひと悶着が終わってため息をついていると・・・
「その・・・ありがとう。」
アルテミスが違づいてきてメタにお礼を言ったのだ。
「男嫌いのアルテミス様が珍しいですね。」
「あ、あの退治を見せられてお礼を言わなければそれも女神の威厳にかかわるのよ!」
そう言ってアルテミスはニンフたちを連れて去っていった・・・
「あ!ダプネに言うの忘れないでよ!」
メタは去っていくアルテミスにそう叫んだ・・・
一方そのころアルテミスはというと・・・
「まさかあの怪魚を聖獣にすることで矛を収めさせるなんて・・・」
「他の男の神とは違うということでしょうか?アルテミス様?」
ニンフたちはそう聞く。
「・・・そうね、お友達としては良さそうだし私も釣り始めてみようかしら?」
「「えぇええ!?」」
アルテミスの乙女顔にニンフたちは困惑してしまうのだった・・・
そしてそのことで結局ダプネに関する約束を忘れてたので・・・
「また来た・・・でも香辛料としてはいけるな・・・」
ダプネからメタへの月桂樹アタックは止まらないのであった・・・




