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第四話 僕は決断が出来ない

怖いくらいに綺麗な笑顔に気圧される。

正直、異世界転生に興味はある。そういう本はよく読んでいたからね。

だけど、この存在の価値観でサービスしてもらうってのはちょっと腰が引ける。絶対なんか罠とか、悪意は無いけど価値観の相違から来るトラブルが仕込まれている筈だ。


「アハハ、信用ないな。でも大体はあってるよ、ボクが面白くなるようにはする。でもそれをどう活かすかは七桜君次第さ。このまま消えちゃうよりは良いんじゃないかな」

「やっぱり、なんか企んではいるんですね。そしてこの転生をお断りしたら僕を消滅させる、と」

「消滅させるってのは酷いな。七桜君は死んだから消える。それは当たり前の事でしょ、ボクが消すわけじゃないよ」

「普通にこの世界に輪廻転生みたいな事にはならないんですか?」

「君たちが死後をどう考えてるかは興味無いけど、死んだら消えて、上条七桜はここで終わり。それだけさ」

「そういうものなんですか。ちなみに転生するとどうなるんでしょう?」

「転生先はみんな大好き剣と魔法の世界がいいかな、お約束だしね。医者になりたかった七桜君には治癒系の力をあげよう。怪我でも病気でもなんでも治せて、万全の状態にする力。あと簡単に死なないように健康でちょっと丈夫な身体もいいね。異性関係は自分で頑張って」


治癒能力と丈夫な身体…… どうしよう凄く魅力的な提案が来たぞ。治癒で色んな人を癒してあげられるのは素敵だし、丈夫な身体は切実に欲しい。少し運動するだけで熱が出て動けなくなってみんなと遊べないのは正直さみしかった。


「例えば治癒の力を使えば多くの人を助けることは出来るだろう。お金だって稼ぎたい放題さ。でも偉い人に捕まって悪用されるかも知れない。その力をどう使ってどう生きるかは七桜君が決めればいい。その辺りの運命線にはボクは何もしないよ」


さらっと運命とかまで操れそうなこと言い出した。凄く怖い。でも力はあくまで力、どう活かすかは自分の責任、っていうのはわかる。


「運命いじっちゃうとタダの出来レースだからね、面白くないよ。だから七桜君の異性無接触記録に関してもボクは何の手も加えてないよ。天然自然、そのままの君の運命として女性に縁が無かったんだ」

「人智を越えた存在に面白いと思われるくらいの縁のなさだったんですね、僕」

「アハハ、人生で一度も女性に触ったことも無い君が選りに選って女性に触ったことにされて死んじゃうなんてね」



笑い事じゃないよ、と言いたいけど多分笑い事なんだろうなこの存在にとっては。


「どうする? 転生する? 言葉や文字は合わせてあげるし、チュートリアルもちゃんとしてあげるよ」

「チュートリアル……?」

「最初だけね、最初だけ。右も左も全くわからない状態だと大変でしょ。自由度の高いゲームでも最初は固定イベントで説明がはいるでしょ。アレみたいなものだよ」

「完全に僕の人生を娯楽の一つとして認識なさってるんですね」

「七桜君ぐらい天然で物理的に女性と縁が無い人生ってそうそう見ないからね。レアキャラだよ、君。そんな君を真逆の位置につきやすい状況に放り込んだらどうなるのかなぁって見てみたくはあるね」


女性に縁が無いを連呼しないで欲しい。あれ、でも真逆の位置って……


「お、気づいちゃった? 次の人生では思う存分女性に触れるようにしてあげるよ。興味はあるんでしょ?」


僕だって健全な15歳男子だ。当然ある。だけど、え、でも、そんなの…… 駄目じゃない?


「駄目じゃないよ。言ってるでしょ、つきやすい状況にするだけだし、運命線は変更しない。七桜君が望むなら今世くらい女性に縁の無いまま生きることも出来るよ」

「はぁ…… それなら、良い…… のかな」

「よしよし、それじゃ行っちゃおうか。大丈夫、ちゃんと愉快な能力にするから」


え、いや、まだ承諾したつもりはないんだけど、え、でも消えるよりはマシなの?


「七桜君、決断出来ないタイプっぽいからもうやっちゃうことにするよ。察しはいいし思慮深いのは美点だけど優柔不断はなおしたほうがいいよー」


流れるように駄目だしされた。いや、忠告、なのか……。

優柔不断の自覚はあるし、異世界ならもっと咄嗟に動けたりしないと生きていけないのかも。


「今世の最期はあまり良い終わりじゃなかったから次は幸せに終われるといいね。同じ展開じゃ飽きちゃうからさ」


そういいながら今度は凄く優しい顔で微笑む上位存在さん。天使の、いや慈母の微笑み、みたいな感じだ。最期の言葉の同じ展開じゃ飽きるというのも本音ではあるけれど、僕の幸せを願ってくれているというのもあるんだろう。

そう思わせられる優しい顔だった。


だんだん意識が薄れていく。転生が始まったのだろう。


悪戯好きそうな、天使みたいな悪魔みたいな存在。

あぁ、お名前くらい聞いておくんだったなぁ。

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