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第十七話 届いたお知らせ 届かなかったお知らせ

「本当は七桜君がさくらんぼじゃなくなったらチュートリアル終了にしようと思ってたんだけど、どうやらそのルートは選ばなかったみたいだからね」

「いきなりなんてこと言うんですか」

「転生モノのお約束でしょ。いいねぇ、安易にお約束に走れないそのヘタレっぷり。期待通りだよ」


走らない、じゃなくて走れない、ね。馬鹿にしやがって、僕だって!とならないのがちょっと情けない気もするけど。安易に女性の尊厳を汚すような真似は出来ないよね。


「そこの彼女について、七桜君が気にしてたみたいだから、その説明もしてあげようかなって。アフターケアも万全なボクに感謝すると良いよ」


そこの彼女、というとミリアさんのことか。チラリとミリアさんの様子を窺うと自分の事が話題になるとは思っていなかったらしくミーナさんと同じく目をまん丸にして驚いている。まん丸お目々親娘だ。記念に写真撮りたい。


「あの犬は元々、ここからかなり北にある魔境に住む種類でね、大きな群れのボスだったんだ。だけど犬にも色々あって群れを追い出されてしまった。それで彷徨った挙げ句に辿り着いたのがこの森ってわけ」

「元々の運命だとそこの彼女はあの時、犬に喰われる筈だった。その後、この小屋も見つけて帰らぬ母を待つその娘も……ってね。あの犬にとって人間はかなり美味しい獲物でね、それからこの近くにある同じ種族の巣を見つけて乗り込み、住民の3/4を食い散らかして、事態を重く見た領主に派遣されてきた凄腕ハンターに討伐されるんだ」


なんでもない事のように恐ろしい未来を語る上位存在さん。同じ種族の巣って要するに町とか村とかでしょ。その人口の3/4って大惨事じゃないか。


「この世界ではそれなりにある話さ。で、本来そうなるはずだったところに七桜君を送り込んだってわけ。うってつけだと思ってさ」

「七桜君がそこの彼女を見捨てて一目散に逃げるならそれでも良かった。追っかけられても結構丈夫にしといたからあの犬くらいじゃ壊せないのは分かってたし、あの犬も齧り付けない七桜君のことは早々に諦めて大人しく元の食事に戻っただろうしね」


淡々と説明してくる上位存在さんがとても怖い。この人(?)、ノリが軽いからつい忘れそうになるけど、やっぱり根本的には僕たち(人間)の事なんてどうでもいいんだ。


「結果的に七桜君は怪我の治療と丈夫さと先天性の疾患の治癒までやれることを確かめられたんだから悪くなかったでしょ。犬の頭撫でて大人しくさせるとは思わなかったけどね」

「そういえばあの狼、なんで大人しくなったんですか」

「七桜君、犬の頭、つまり脳に近い場所触りながら『落ち着けー落ち着けー』ってやったでしょ。それで鎮静効果とか、アニマルセラピー…… は違うか。まぁそんな感じ。あとは混乱しすぎててあの犬の事怖がってはいたけど嫌ったり憎んだりはしてなかったからかな」

「嫌ってると駄目だったんですか」

「七桜君の力は七桜君のありのままにもの凄く左右されるようにしてある。七桜君が対象に悪感情を持っていれば治せるのは治せるけどとても時間が掛かったり、触ったときに不快感や苦痛を与えたりする。逆に絶対に治したい、なんて意気込んでいればどんな症状でも死んでない限りあっさり治るし、性的な魅力を感じていれば性的な快感を、純粋に好意を持っていれば心地よい暖かさを与える、ってな具合だね」


なるほど……それがミリアさんとミーナさんの反応の違いの原因か。と言うことは、つまり、僕がミリアさんに性的な目を向けていたと言うこと!?此処に着いてからならともかく、あの非常時にも!?


「あ、気にしなくていいよ。性的な魅力っていっても生物的な本能に根ざしてる部分が大きいから。具体的に言えば子を成せるかどうか、とかね。子孫を残せる対象だと本能が判断すればそれだけで充分快感を与えられるよ。そこから更に七桜君が惚れたり行為をしたいと思ってたりするとブーストが掛かる感じかな」


あ、生き物の本能的なモノなのか。それならあの状態のミリアさんに欲情する変態の誹りは免れられる気がするぞ。…… いや、ということは、だ。


「本能的なモノってことは、僕がどれだけ心を無にしたり、抑えようとしても……?」

「うん、無駄だね。人型の雌である時点で大体快感与えるよ。あと七桜君が特殊性癖持ちならスライムとか人面樹とか卵とか車とかでもワンチャン可能性はあるね」


平常心を保てれば快感を抑えられる、という話でも無いのか。そんな逃げ道、残していてくれるはず無いか……


「あ、ちなみに七桜君が幼児性愛者だった場合はそこの子にも快感が行ってた筈だよ。ボクとしてはそっちの方が面白くなりそうなのに残念だよ」


本当に残念そうに言わないで欲しい。こんな話を女性に聞かせるのは一種のセクハラに該当しないだろうか。恐る恐るまん丸お目々親娘の様子を確認してみる。

ミリアさんはとても真剣な眼でこちらを見ている。まん丸タイム終了のお知らせ、僕のところには来てませんでしたけど? ホウレンソウしっかりしよ。

ミーナさんはまだこの事態をよく分からなさそうだよな。僕も分かってませんけど。あれ、なんかミーナさんが僕を指差してる。いや、僕っていうかこのスマホを指してる?


「光ってる……」


え……? あ、ずっと耳に当てて通話してたから見えてなかったけど、僕のスマホから神聖っぽい光が放たれてますね。超常現象に超常現象重ねるの、もう止めない?


「あの、なんか僕のスマホ光り出したんですけど」

「あぁ、神託を受けたから神器として目覚めちゃったんだね。大丈夫、問題ないよ」

「僕のスマホを勝手に神器とかにしないでもらえませんか」

「スマホっていうか…… まぁいいや。神託が終われば光は薄くなるし、目覚めた神器を持ってると便利だと思うよ」


上位存在さんが言うにはこの世界に於いて目覚めた神器を持っていると言うことは神に直接認められた、或いは神の意志を代行している者という扱いになるらしい。そういう者はかなり崇められているらしく、本人の意思を最大限尊重され、まともな国なら国王でも無理に言うことを聞かそうしてくるようなことは無くなるとおもっていいらしい。

そういうものなんですか?と目線でミリアさんに尋ねてみるとコクコクと頷いて答えてくれた。ちょっと子供っぽい仕草可愛い。好き。


「どっかのご隠居さんの印籠だと思えばいいよ。大体そんな感じさ」


わかりやすいな、この人(?)の例え。あっさりイメージ出来てしまったぞ。



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