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第十三話 命の恩人にはなんでもする

それからミーナさんは、家の中を走り回り始めた。

何度跳ねても、息が切れない。

苦しそうに胸を押さえることもない。


それに気づいた途端、さらに大はしゃぎだ。


「すごい、すごいよお母さん。ぜんぜん苦しくない」


正直、好きなだけ満喫してほしかった。

だがミリアさんは、名残惜しそうにしながらもミーナさんを止める。


「ミーナ。母さんはナオさんと大事なお話があるの。向こうで夕食の準備をして来て頂戴」


「はーい。ナオさん、気持ちよくしてくれてありがとうございました」


ぴょこんと頭を下げて、奥の台所へ消えていく。

小さな背中を見送ってから、ミリアさんは深く息を吐いた。


「本当にありがとう。私だけでなく、あの子まで救ってくれた」

「やめてください。僕はただ、頂いただけの力を使っただけです」

「それでも、救われた事実は変わらない」


その声は、静かだった。

だが、震えが隠しきれていない。


「言葉だけで済ませるつもりはない。私にできることなら、なんでもする」


ん? いま()()()()()()って言った!?

思わず反射的に反応しかけた自分を、必死で抑える。


「……その。もし望むなら、私の身体でも構わない」


目を伏せたままの告白だった。

覚悟と羞恥が、同じ重さで滲んでいる。


「待ってください」


思わず、被せるように言っていた。


「それは、駄目です」


「…… 価値が足りないか」


「違います」


一歩、距離を詰める。


「ミリアさんは、母親として娘を守るために、全部を差し出そうとしている。それを受け取ったら、僕はきっと後悔する」


言葉にすると、胸の奥が少し楽になった。


「助けたのは、僕がそうしたかったからです。代価を要求する行為じゃない」


ミリアさんは、しばらく黙っていた。

やがて、困ったように眉尻を下げて笑う。


「……どうも君は、妙な男だな」


その笑顔に、胸が少しだけ温かくなる。


「確かにナオ君のような子供に言うべきようなことでは無かった。いや、別の世界で一度人生を終えているということなら見た目通りの年齢ではないのか?」


それまでの静かな空気を変えるように、一段階明るい声でミリアさんが別の話題をふってくる。


「あ、えっと、僕は十五歳です。前の世界で十五で死んで、そのままこっちに来ているので。見た目通りの年齢で間違いないです」

「ちょっと待ってくれ、十五歳だって!? 私はてっきり十歳くらいだと思っていたよ」

「じゅっさ…… 僕は同世代の中でも小柄な方でしたし、僕の世界でも若く見られがちでしたけど。一度死んだ時と同じまま姿なので十五歳で間違いないですよ」


十歳くらいに見られていたのか、僕。あー、だからミーナさんの年齢を聞いたときに結婚相手として考えている風に見られたのかな。それにしても八歳と十歳じゃ若すぎ、ていうか幼すぎるよね。


「十五歳としても私の半分…… 十歳なら三分の一、か…… よくもまぁ、そんな相手におかしな提案をしたものだな、私も」


一度、深く息を吐く。


「混乱していた。そういうことにして、どうか見逃してくれ」


恥ずかしそうに頬を染めながらそんなセリフは反則ですよ、ミリアさん。

かわいい、なんて思ってしまう自分に、内心で小さくため息をついた。

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