第十三話 命の恩人にはなんでもする
それからいくらはしゃいでも息が切れない、疲れないということに気づいたミーナさんがさらに大はしゃぎしだして、しばらく大変だった。
僕としては心ゆくまで元気な身体を満喫してもらいたいところだったが、ミリアさんが制止してしまった。
「ミーナ、母さんはナオさんと大事なお話があるから向こうで夕食の準備をして来て頂戴」
「はーい、お母さん。ナオさん、気持ちよくしてくれてありがとうございました」
ピョコンと頭を下げて僕にお礼を言って、奥の台所と思しき場所に去っていくミーナさん。可愛い。天使か。
「ナオ君、本当にありがとう。君は私だけでなくミーナまで救ってもらった。この恩は生涯忘れない」
「やめてください、そんな改まって。僕は頂き物の力を使っただけです。恩を感じてもらえるような大した人間じゃありません」
「与えられしものの力は確かに与えられただけの力かもしれない。だが、それを得ることが出来たのは君だし、その力を活かして私たちを救ってくれたのもナオ君だ。君は間違いなく私たちの恩人だよ」
「そういって頂けるのであれば、そのお礼のお言葉は頂いておきます。ありがとうございます」
僕がそう返すと、ミリアさんはあの困ったような眉尻をさげた笑顔で
「お礼を言っているのはこちらの方だというのに、どうも君は妙な男だな」
そう言った。可愛い。ミリアさんは普段は美人なのにこうしてちょっと砕けた表情をするととても可愛くて一粒で二度美味しい。
「しかし、流石にこれだけの恩を受けたんだ。言葉だけで済ませるわけにはいかない。お礼をしたいんだが、ご覧の通り親娘二人、その日暮らしの有様でね。近くの街との交流も多少はあるがそれもほぼ物々交換ですませているような状態なんだ。金銭的なものを見合うだけの量は用意できそうにない。だが私に出来ることならなんでもする。何か希望はないだろうか。なんとか私に少しでも恩返しをさせてくれ」
ん? いまなんでもするって言った!? と思わず反応してしまった僕は悪くない。悪くないはずだ。色々と想像してしまいそうにもなるが、それはグッと堪えて真面目に考えないと。真剣にお話ししてくれているミリアさんに失礼だ。
「その…… ナオ君のような子供に言うべきようなことではないが、いや、別の世界で一度人生を終えているということなら見た目通りの年齢ではないのか? とにかく、もしナオ君が望むのなら私の身体を好きにしてくれてもいい。子持ちの薹が立った女では大した価値もないのは承知だが、君に渡せるようなものが他には無いんだ……」
まさかのご本人からの提案!? しかも真剣な顔をしつつもちょっと頬を赤らめてモジモジとこちらを窺いながら…… だと……!? 可愛らしいにも程があるだろう、いい加減にしろ。
「あ、えっと、僕は15歳です。前の世界で15で死んで、そのままこっちに来ているので。見た目通りの年齢で間違いないです」
「ちょっと待ってくれ、15歳だって!? 私はてっきり10歳から12歳くらいだと思っていたよ。見た目よりしっかりしているなとは思ってはいたが」
「じゅっさ…… まぁ確かに僕は同世代の中でも小柄な方でしたし、僕の世界でも僕の国の人種は他の国から見ても若く見られがちでしたけど。一度死んだ時とそのままの姿なので15歳で間違いないですよ」
10歳くらいに見られていたのか、僕。あー、だから8歳のミーナさんの年齢を聞いたときに結婚相手として考えている風に見られたのかな。8歳と10歳なら、まぁ、年齢差的にはそう問題ない気もするし。ちょっと若すぎるけど。
でもこの提案はどうする。嬉しいかどうかで言えば間違いなく嬉しい。ミリアさんのような美人で可愛らしい人と…… なんて僕にはハードルが高すぎるけど、とても興味はあるし優しく手ほどきして貰いたい。
「15歳と言うことであれば、ナオ君はもう成人しているのだな。であれば女の身体にも興味がないわけでもないんじゃないか? 不釣り合いだろうが、私には君に差し出せるものはそれぐらいしか無いんだ。なんとか承諾してもらえないだろうか…… 命を救って貰ったんだ、本来なら残りの人生全てを掛けて君の従者なり奴隷なりになって尽くすべきだろう。だが、私にはミーナがいる。あの娘を置いてはいけないのだ」
「待って下さい、それは駄目です」
「そうか、確かに私のような年増の身体一つで贖えるような恩では無いな。だが、他にどうすれば……」
「いえ、ミリアさんは美人だし笑顔は可愛らしいしミーナさんをみて穏やかに微笑まれてるときなんか女神様かと思うくらいお綺麗だったし、興味も滅茶苦茶ありますけど! それでも駄目です」
「そうか、そんなに褒めて貰えると気恥ずかしいな。ではナオ君は多少なりとも私の身体に価値を感じてくれているのだろう。なぜ駄目なんだい。その、一度だけとかではなく君が満足するまで精一杯勤めさせてもらうが」
だから、恥ずかしそうに頬を染めながらそんなセリフは反則でしょ。クリティカルヒットしまくってます。僕のライフはもうとっくにゼロなんですよ。




