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第十一話 試練ていうか、悪ふざけ?

転生したら歩くセクハラマシンになっていた件について。

痴漢冤罪で死んだから今度はちゃんと痴漢してから死刑になるようにしてくれたのかな。流石、上位存在さんは気が利いている。…… マジでどうしよう。


「与えられしものはその与えられた力が人の身には大きすぎて予期せぬ反作用を起こすことがある、と言われているんだ。それを神が人間に与えた試練だという考え方さ」

「それが与えられしものの試練……?」

「さっきも言ったおとぎ話で言えば、男に変わった女王様は幼い頃からの思い人と結婚し子供も出来てめでたしめでたし、というお話なんだが、このお話には続きがあってね。実際に300年くらい前にあった出来事で当時の記録なんかも残っているんだが、男になった女王様はその後『男のサガ』に振り回されて公式に記録されているだけでも200人の子供を成している。公務も滞り、後宮には多くの金が費やされ税金は上がり続ける。更に後継者争いが熾烈を極め、結局その国は程なくして滅んでしまった」


うわぁ……

『男のサガ』ってやっぱりハーレムとかそういうことなんだろうなぁ。女性だった人が男性に変わった事によってそれまで持っていなかったモノに振り回されてしまったってことか。


「与えられしものとは望みに添う力を与えられる奇跡ではあるが同時に破滅の可能性も秘めている。それを乗り越えることこそが本来神が与えたもうた真の贈り物なのだ…… なんて信心深い連中は言ってる」


ミリアさんのその説明を聞いて僕はなんとも言えない気持ちになる。

神が与えた試練、ね。うーん。


「ナオ君、君は実際に創造神と話をしたのだろう。試練についてはどう思う」

「えっと、僕が会ったあの上位存在さんがこの世界の創造神様と同一の存在かどうかはわかりません」

「確かにそうだな。超常の存在が一つだけとは限らない。考えてみればこの世界の創造神が違う世界に居たはずのナオ君の事を知っているというのも疑問が残る」

「えぇ。ですが、仮に同じ存在だったとしたらソレは試練っていうか、悪ふざけ? ですね」

「はぁ?」

「或いは手抜き、とかですかね。あの存在は人間に試練を課す程の興味は持ってないと思います。『このまま力を授けちゃったら暴走しそうだけど、まぁいっか』とか『大きな力渡したらなんか面白いことしでかさないかなぁ』とかそんな感じだと思います」

「君が出会った神はそんな感じだった、と……?」

「そんな感じでしたね。僕の場合も『治すついでに気持ちよくしてあげられるなんて最高じゃない? ガンガン触りまくっちゃえば良いよ!』ってセリフが聞こえてきそうです」


うん、確実に似たような事は言うな、あの上位存在さんなら。そういうノリの人(?)だった。

ミリアさんは呆れたような顔でぽかんとしている。美人はそんな顔をしていても綺麗だな。卑怯だぞ。


しばらくミリアさんの珍しい表情を観察していると目が合った。パチパチと瞬きを繰り返してから気を取り直してミリアさんがしゃべり出す。


「実際に会った君がそういうのならそうなのかもしれないな。それはそれで恐ろしい話でもあるが」

「あの、恥ずかしいから黙ってようと思っていたんですが、僕前世では全然女性に縁が無かったんです。それを上位存在さんも把握していて、転生するときに『次の人生では思う存分女性に触れるようにしてあげる』って言われちゃってて…… すみません」


ああ、ついに隠していた秘密を言ってしまった。これでセクハラ男の誹りは免れないな。

でも、変な隠し事をしては駄目だと思う。ミリアさんは大切な娘さんの命について僕の能力に希望を見いだしているんだ。そんなときには出来るだけ全ての情報を差し出すべきだ。それで判断してもらうほうが絶対に正しい。ミリアさんに嫌われてしまうのがとても怖いけれど。


「……」


黙り込んでしまったミリアさんの様子を恐る恐る観察してみる。

少し震えている、気がする。


「プッ」


あ、吹き出した。


「ア、アハハハハハハ…… 女性に触れるようにするってなんだいそれは。アハハハハ、確かにそれは試練なんてものじゃないね、アハハハハハハ」

「いや、はい。なんとも申し訳ないです」


こらえきれないといった感じで大笑いし始めたミリアさんに僕はどうしていいのかわからない。


「いや、ごめんよ。ナオ君を馬鹿にしているとかそんなつもりは全くないんだ。ただ余りに予想外なことをいわれたもんだから、ついね。申し訳ないのはこちらの方だよ。すまなかった」

「いえ、変な事を言っている自覚はありますから。こちらこそすいません」


僕らはしばらくお互いに謝り頭を下げあう。それがなんとも可笑しくて自然と笑いがこみ上げてきた。


「フフッ」


ミリアさんも眉尻を下げて困ったような顔で笑う。一々可愛いなこの人。好き。


「それで、どうだろうナオ君。ミーナを看てはもらえるだろうか」

「えっ、良いんですか!? 僕、セクハラ男ですよ!?」

「セクハラ?」

「あ、えっと性的な嫌がらせとか悪戯みたいな意味です。スケベ親父が女の子のお尻を触る、みたいな」

「あぁ、そういう…… ナオ君のソレはそういうものとは全然違うだろう。激痛が走る、とかなら多少躊躇するかもしれないがそれでも命には代えられない。傷の痛みや病気の苦しみを忘れさせるために必要なことだ、と言われれば普通に納得出来るどころかありがたがるべきことだよ」

「そう思っていただけるのなら嬉しいです。ミーナさんを僕に看させていただけますか」

「こちらからお願いしていることだよ。ありがとう」

「お礼を言われるようなことは何もないです。まだ出来るかわかりませんが全力を尽くさせてもらいます」

「君という子は……」


そうだ、僕は僕みたいな子を治せるお医者さんになりたかったんだ。それならミーナさんは絶対に治せるはずだ。あの上位存在さんはその願いを叶える力としてチートをくれたんだから。


色々不安もあるけど、絶対に治してみせるからね、ミーナさん。

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