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2 突然の転校

 高校二年生になって、転校したのは名前も聞いたことのない小さな村だった。

 村に今年できたばかりの工場に、父が配属された。専業主婦の母は、父についていく一択で、単身赴任は考えられなかった。

「私、こっちの学校に残りたい」

 私が言うと、両親は困ったように眉を寄せた。

 父が小さな子どもを宥めるように言った。

「でも、パパは村の工場に赴任になったんだ。仕方ないだろう?」

「私だけ、こっちに残るっていうのはダメなの?」

「そんなのダメよ、あすかだけ残るなんて」

 今度は母が言った。

「せっかくの家族なのに、バラバラに暮らすなんて寂しいじゃない」

「それは、そうだけど」

「それだけじゃないわ。別々に暮らすのもお金がかかるの。家を借りるお金だってかかるし、光熱費も二倍でしょう。これだけじゃない、他にもかかる費用はたくさんあるの。今からあなたを一人暮らしさせるほど、我が家に余裕があるわけじゃないの」

 現実的な問題を突きつけられると、黙るしかなかった。

 中途半端な時期の転校を、私はしぶしぶ受け入れた。慣れ親しんだ地元の生活や仲の良かった友達と離れるのは苦しかったが、仕方ない。淡々と荷物を整理して、引っ越し用の段ボール箱に詰め込んだ。

 引っ越した先の村は、人と人とのつながりが濃かった。よそ者の私が買い物に行くだけで好奇の目でジロジロと見られる。転校先の学校だって同じだ。自分を見ながらクラスメイトがヒソヒソと話をしている。

 ――控えめに言って耐え難かった。

 同じ目にあっている両親に当たり散らすこともできず、私は鬱々と毎日を過ごした。夏休みになった日には、ほっとしたものだ。

 そんなある日、一匹の白猫に出会った。川の近くで鳴いている、小さな白猫だった。


よろしくお願いします。

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