顔よし、頭よし、お金持ち、王太子という身分がそろった僕よりどうしてあいつのほうがいいといわれても…あなたは私の趣味じゃないのです。だからいまの婚約者と婚約破棄して、あなたと婚約できません。
「どうして、あいつとの婚約を破棄して、僕と婚約してくれないんだ、イリシャ」
「だから何度言われても、私は婚約者の子爵、エリクスに満足しておりますの。婚約は破棄できません」
私は王太子殿下に向かってため息交じりにこたえました。
舞踏会で落としたハンカチを拾っていただいたことには感謝しますが、それ以来、どうして僕のことを無視するんだ! とついて回るようになってしまったのです。
いえ、ありがとうございますとそのままハンカチを受け取って婚約者のもとにいったら、すごく嫌そうな顔をしていたのはみましたけどお。
「あんな、デブ、眼鏡、丸い鼻にそばかすの不細工、君にはふさわしくない!」
「彼にはそれ以上の美徳がありますの、あなた様にない」
エリクスは見かけはいまいちですが、王太子殿下みたいに強引ではありません。今日も無理やり殿下の名前で呼び出されて、こうして食事会に付き合わされています。
今日はエリクスと町でお買い物の予定でしたのに。
「僕は顔よし、頭よし、身分もある!」
「だからエリクスにはあなた様にはない美徳がありますの」
どこまで行っても平行線でした。
エリクスは優しいです。今日だって仕方ないよ行ってきてと快く送り出してくれました。
それに落とし物をしたお嬢さんのために一生懸命さがしてあげたり、迷子のお母さんを探してあげたり、お年寄りの荷物を持ってあげたり、優しく思いやりがあります。
それに私を真実愛してくれています。
「私、これで失礼します」
「僕はあきらめない!」
「婚約者がいる相手と無理やり婚約はあなた様といえども無理ですわ」
私がいくら言っても聞かない殿下、私は贈り物や、こうしたデートのお誘いとやらに疲れ果てていました。
そしてエリクスとともに陛下に相談をしてみたのです。
「レオンハルト、婚約者がいる相手に婚約を申し込むなんて非常識だ」
さすがに殿下に向かって陛下は渋い顔で怒られました。でもどうして、僕の愛をわからないと何度も繰り返す彼は言うのです。
エリクスは上にたつものが、下のものに無体をいうのは法に照らし合わせてもだめですと反論すると、お前みたいな不細工が! と殿下がどなりました。
「馬鹿者!」
陛下がなぜ怒るのか理解できないという殿下、お前は謹慎だと陛下に言われてもいまだに理解できないようでした。
古来から権力をもつものは下のものに無体を強いることをしたら人の心は離れていくものなのですわ。
しかし私がほかのお嬢様たちにみたいにきゃあきゃあ言わないのが腹が立つようですが。私は殿下みたいな傍若無人な人は大嫌いですの。
顔がいくらよくても。身分があっても人の心を思いやれないような人はだめだと思うのです。
「エリクス、今日はどうしましょう?」
「そうだね、イリシャは何をしたい?」
「図書室の本で興味深いものがありましたの、一緒に読んで、そのあとお茶しません?」
「ああ、それは楽しみだ!」
私はエリクスの手を握りしめ、千年前の魔法が書いてあってといつものようにお話をすると、うんうんと優しく笑いながら話を聞いてくれます。
魔法に関する趣味は同じで、これほど話が合う人はいません。
殿下なんてこの話を少しでもすると嫌そうにやめてくれっていいましたしねえ。
趣味が合わない人、わがままな人、自分の意見を通そうとしすぎる人って嫌われますわよ。
まあ一部の女性には好かれていたようですが。
私は嫌いですわ。
殿下は軟禁の上、しばらく修道院にお預かりとなりました。
下のものを気持ちがわかるまでは政務もでなくていいということです。
いい気味ですわ。下手をしたら廃嫡らしく、きゃあきゃあのお嬢さんたちも離れて行って本当いい気味でした。
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