2 シラネ①
「お待ちしておりました、魔王さま」
突然の少女の声に、宝来尊は閉じてた両目を見開いた。
目の前には、真っ黒なフリルのドレスを着た、小学生くらいの美少女が立っている。
艶のある長い黒髪はツインテールにしていても地面に届かんばかりであり、自身の身長を超える程の漆黒の大鎌を右手に携えていた。
「えっ…と?」
あまりの現実離れした状況に、宝来尊は逆に冷静さを取り戻す。
「申し遅れました。わたくしシラネと申します」
「これはこれはご丁寧に、自分は宝来尊です」
「ミコトさま、それでは本日より、宜しくお願い致します」
そう言ってシラネは、片膝をついて深々と頭を下げた。
「えーと、ちょっと待ってね。もしかして俺は、魔王になったのかな?」
「はい、勿論。その条件で了承頂けたと認識しております」
了承した覚えがないんだよなー…
宝来尊は小首を捻って両腕を組む。しかし迂闊な事を口走る事は出来ない。あの黒い大鎌は、本当に鋭そうだ。
「ちなみに魔王って、何するの?」
「その事も条件として、事前に提示していたと思いますが?」
そのときシラネが、右手の大鎌をコツンと床に突いて、不思議そうな顔をする。
「え⁉︎ あー…世界征服だ。そーだったそーだった」
「はい、その通りでございます」
慌てた宝来尊の返答に、シラネは満足そうな笑顔を見せた。
「ですが、少々問題がございまして…ミコトさまには、お詫び申し上げないといけません」
そんなシラネの表情に、みるみると暗い陰が落ちていく。それからツカツカと窓際まで歩くと、クルリとこちらに振り返った。
「ミコトさま、ここから外をご覧ください」
「あ、はい」
言われるがままに、宝来尊はシラネの横に立って外を覗く。
そこには、暗雲立ち込める、巨大な暗黒城が建っていた。
「最近向いに、巨大な『複合魔王城施設』が移転してきまして、この城の殆どの配下が引き抜かれてしまったのです」
「あーそーなんだー」
宝来尊は巨大な暗黒城を見上げながら、ただそれだけ呟いた。




