表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
18/31

18 魔王の資格③

「準備はいいか、小僧?」


 宝来尊ほうらいみことが部屋の真ん中まで進み出ると、赤鬼が両腕を組んだままギロリと見上げた。


「いつでも良いですよ」


「…はん、風格だけは一人前だな」


 宝来尊の返答に薄く笑うと、赤鬼は両腕を解いてギュッと拳を握りしめる。


「では、ゆくぞ」


 そのとき赤鬼がゆらりと間合いを詰め、半ば突き上げるように、宝来尊のボディに向けて右正拳突きを放った。


 ドオンと凄まじい轟音が響き、貫いた衝撃が旋風となって演習場に吹き荒れる。


「きゃあ!」


 風に煽られたシラネが短い悲鳴をあげながら、舞い上がるスカートを必死に押さえた。


 更に続けて何度も轟音が鳴り響き、その度にシラネのツインテールが前後左右に暴れまくる。


「ミ、ミコトさま…っ⁉︎」


 目も開けていられない程の暴風の中、それでもシラネの視線の先には、宝来尊の背中が直立不動で立っていた。


 〜〜〜


(いや、スゲーな、この絶対防御って)


 周りの凄まじい状況に反して、宝来尊の感想は呑気な物であった。


 床は剥がれ舞い上がり、壁や天井には亀裂が入っている。目に映る衝撃的な状況の中に居て、自分の周りに漂うこの空気はどうだ。まるで凪の中に立っているようだ。


「流石だな小僧、魔王を名乗るだけはある。そろそろ儂の身体も温まってきた頃だ。次の一撃は本気でいくぞ」


 そう言って赤鬼が身体に力を込めた瞬間、全身の筋肉が膨れ上がり、三メートルを超える程の大鬼に変貌する。


「へ⁉︎」


 驚いた表情で、宝来尊は赤鬼を仰ぎ見た。


 赤鬼は頭上で両指を組み合わせると、同時にその間抜け面に向けて打ち下ろす。


 次の瞬間、まるで落雷のような轟音を轟かせ、土煙りを伴った衝撃波がシラネに襲い掛かった。


「ミ、ミコトさまーーっ!」


 逆風に逆らいながら、シラネの声が木霊する。


 モウモウと舞い上がる土煙りの中、演習場の床がクレーター状に陥没してしまっていた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ