お説教
「どうだい坊主、ラビットの串焼きだよ!」
「こっちはボアの串焼きだ!」
「何言ってんだい、串焼きならコッコにきまってるだろ!」
露店では定番?の串焼きを売ってるけど、ラビット・・・ボア・・・コッコ・・・どれもうまそうだけど、味付けがなぁ・・・
基本的に塩味オンリーなこの世界、胡椒なんて高級品・・・ましてやタレ漬けなんて皆無!自分のスキルで食べ始めると、どうやっても味に・・・ねぇ・・・?そして、無限収納の中には当然塩や白&黒胡椒も大量に入ってるわけで、その味を知ると・・・それでも空腹時にこの肉の焼けるにおいと音を聞くと・・・
「すみません、1本ずつください!」
各種買って食べ比べることにした。結果、塩味だけとは思えないほどのおいしさだった。
「さて、武器屋は・・・っとここかな?」
串焼きを買った時に教えてもらった武器と防具のお店のうち、最初に見つけたのは武器屋。さてどんな武器があるかな?
「すみませーん。武器見させてもらってもいいですか~?」
「おう、いらしゃい。ってガキか」
「はい、11歳のガキです。数日後に冒険者に登録しようと思って王都に来ました。武器は一応あるのですが、男の子としては武器はロマンで、命を預ける大事な相棒なので、見学に来ました。ダメでしょうか?」
出鼻をくじかれた感じだ。たしかにガキだけど、もしかしたら武器を買うお客かもしれないのに『ガキ』呼ばわりは酷い。
「おう、すまんね。つい冒険者なり立てのガキどもとおもってな、許してくれ。
さっきみたいに武器の事を相棒と呼び、命を預けるなんて奴は滅法見かけなくなってたもんでな。最近の奴らは武器なんて買い替えればいい程度にしか思ってなくて、手入れすらまともにしやしねぇ・・・って、坊主に愚痴ってもしゃぁねぇな」
「いえ、長く使えば手にもなじんで、威力も上がります。そんなに何度も武器を買い替えてたら、自己の能力もあがりませんよ。それこそ親方さんが武器を鍛える鎚を買い替えて生じる細かな歪みたいなもんじゃないですか」
オーダーメイドなら使い手の形などによって柄の太さや形状が全く異なってくる。
大量生産だと柄の形も均一されているだろうが、微妙なすり減りなどで形状が変わっても、それは使い手に最適化されつつあるものだ。そこまで使い込んでも、刃の手入れ不足で買い替えてしまっては、最適化をリセットするようなものだ。
そうなれば微々たるものかもしれないが、攻撃力の減少につながりかねない。
「・・・」
「親方どうしました?」
◇◆◇
「いやぁ~たまげた。坊主・・・いや少年の名前は?」
「はい、ボクの名前はショウといいます。まだ登録してない若輩者ですが」
「いやいや、自分の事を若輩者なんて言うような若輩者はいないよ・・・」
自分の事をバカというバカは・・・
「それでも、ボクは武器を見に来ただけなのに、長々喋ってしまって・・・」
「気にするなよ。久しぶりに武器の事を想ってくれてるやつに会えて俺も気持ちがいいんだ。それでショウ?武器を見に来たとは言ってたが、その腰の装備はどうなんだい?かなり訳ありな雰囲気が漂ってるんだが」
え?ばれてる?
「さすが武器屋の親方さんにはバレますか?」
「いや?カマかけてみただけなんだが・・・そっか~訳ありなのか」
やられた!
「というのは冗談だ。見るやつが見ればわかるくらいにはな。俺も武器屋であり鍛冶屋だ。それくらいの目利きができなきゃ商売なんざできねぇからな」
「・・・」
「そんな目で見るなよ・・・悪かったって・・・王都にいる間の武器のメンテナンスは無料でやってやるから」
「・・・」
「え~いわかった、防具の面倒も見てやるよ!店の向かいにある防具屋は俺の娘婿がやってるから、そこを紹介してやる!これで満足か?」
なんだか、追加のおまけを要求してるように見えたらしい・・・防具屋さんの話も聞けてラッキーだったが、誤解は解いておいた方がいいよね?
「親方さん。べつにそんなおまけを期待して黙ってたわけじゃないんですよ。この武器が訳ありなのは本当ですが、完全なワンオフ物で、手入れの必要は最低限で済みますし、なにより・・・あまり口外できない品なので・・・」
「・・・そうか、へんな気を使って悪かったな。でもいいのか?今その武器の事べらべらしゃべってたが」
「親方さんは今の話を聞いて、この武器に何かするつもりがあるんですか?」
「いや、ないな。そんなことすれば俺は二度と武器を売ることも作ることもできなくなる」
「なら安心ですね。それじゃぁ、その気持ちをありがたく思い、親方さんならこの武器のメンテナンスはどのようになさいますか?」
と、腰に下げてた武器を外して、親方さんに差し出す
「・・・いいのか?」
「きちんとした手入れの方法を教えてもらえればそれで充分です。それに、親方さんも興味が止まらなさそうでしたから」
「・・・バレてたか」
「はい。親方さんも#男の子__・__#ですから」
その後、武器の手入れを普段どのようにしてるか聞かれ、その際の手入れ方法を伝えると感心され、追加でいろいろと教えてもらえた。そのお礼にと武器の本当の使い方を披露すると、目を見開き、あごは外れんばかりに開かれていた。そして再起動するまでに数分の時間を要した。
◇◆◇
「・・・なんじゃそりゃあああああああああ!!!」
先ほど僕の武器の真の能力を披露したところ、親方さんがフリーズし、数分後大絶叫しだした。
「これがボクの隠し手です。誰しも内緒の秘密技ってもってますよね?」
「ねぇよ!そんなのねぇよぉ!」
あれ?
「それ以前にその武器!最初の状態でもこの王都で入手不可能なくらいの業物だったってぇのに、なんだよその隠し機能!そこまで行ったら間違いなく国宝級だよ!王様に献上しなきゃいけないほどに!」
「えー?ただの震える剣ですよ?」
「その震える機能も不思議だが、それが生み出す相乗効果がすげーんだよ!なんで鉄の鎧を紙みたいに切り裂けるんだよ!しかもこの断面!バターを切ったみたいに滑らかじゃねぇか!」
「え?王都にはバターあるんですか?」
「そこじゃねぇよ!食いつくの!」
「親方さん、落ち着きましょう。これ良く冷えた飲み物です」
ポーチからキンキンに冷えたビールとグラスを出し、注いで親方さんに渡すと
「???」
どなりつつもグラスを手に取り「冷たっ!」といいつつ一気に飲み・・・ほ・・・した
「ッカーー!うめえええええ!なんだこの飲み物は!」
「親方さん落ち着きましたか?」
「ってそうじゃねぇぇぇぇぇぇ!」
「もう一杯ですか?」
「おう、たのまぁ・・・・・・・じゃねぇぇぇぇ!」
この親方さんノリがいいなぁ
「まぁまぁ、親方さんだから話したんですよ?」
「そういわれると弱いな・・・でも他で言うんじゃねえぞ?間違いなく厄介事に発展するから」
「もちろんです。秘密の共有をしたからには、ほかの相談も親方さんにお願いしますね」
「・・・」
「・・・」
「「ハハハハハ」」
「「・・・」」
「まぁ、武器の話は置いておいて、さっきの飲み物は何だよ!しかも、どこから出した!」
「あ、これも内緒でお願いしますね。親方さんが内緒にしてくれてたら、また気が向いたときにだしますから」
「仕方ねぇな、またの機会を心待ちにしておくよ」
「それじゃぁ、武器の手入れ方法のご教授ありがとうございました。冒険者登録が終わったらまた来ますね」
「おう、またな。それと、防具屋の方にも顔出してくれよ」
「はい、今から行ってみます」
そして武器屋を後にしたボクは、防具屋の中へ入り
「すみませーん。防具見させてもらってもいいですか?」
「はーい、いらっしゃーい。かわいい子が来たわね。でもボクにはまだ早いんじゃないかな?」
お店の中でスラっとした女性が対応してくれたが・・・
◇◆◇
「そうですね、まだ冒険者登録もしてないですが、登録前に見ても問題はないですよね?」
もしそうなら入り口に『十二歳未満入店禁止』とでも書いておいてほしいものだが。
「そういえばそうね、失礼しました」
「いえ。ボクはショウといいます。向いの武器屋の親方さんの紹介で覗いてみました」
「あら、お父さんの紹介!?あの気難しいお父さんがねぇ・・・なら将来有望ってことかしら」
「そうなんですか?」
「そうね、私が生まれる前に一度、王様に剣を献上するぐらいの腕前はあったし、懇意にしてくれた冒険者の方は大抵有名になっていったはずよ?」
「それはすごいですね!・・・あれ?」
「どうしたの?」
「それじゃぁ、親方さん・・・けっこんできてたんですかぁぁぁぁ?」
「は?はぁぁぁ?当り前じゃないの!結婚してないんなら私はどこから来たのよ!」
「だって、親方さんにあまりにも似てないこんなスラっとしたきれいな人だから・・・」
実際親方さんはザ・ファンタジーといったドワーフのような感じなのだ(普通の人間です)
「あらやだ、きれいだなんて・・・って、確かに昔から似てない似てないとは周りから言われてたけど」
「ぁ、冗談ですから」
「・・・」
「・・・」
「えっと、頭部を護るのに何かいいものないですか?フルヘルムだと重いけど、何か防具的なものはないかな?とおもって・・・鉢金とか・・・」
「スルーしたわね・・・まぁいいわ。で、はちがね?ってなに?」
・・・なかったのか・・・やべ
「え~っと、鉢金というのはですね・・・(説明中)」
◇◆◇
「へ~、それ面白いわね」
「それで、その見える部分にパーティーなりギルドのマークを刻印すれば、色々わかりやすいかな~とか、冒険者ランクで色を変えたり・・・もちろん偽造は罪と徹底しての事ですが、そうすれば見るだけで相手の力量がわかるので、無用な面倒事もへるんじゃないですかね?」
その場で思いついたことをいろいろ話していると
「・・・」
やべ、調子に乗ってた?
「・・・お」
「お?」
「おもしろいよそれ!しかも有用な案件じゃない!そのシステムを広めて浸透させれば、ランク詐称も減るわ!もちろん隠したい人や装備できないひとは考えるにしても」
「あぁ、ほかの方法で頭部を護ってる・・・ヘルム系ですね?その場合は腕・・・上腕に巻くとか、直接鎧(見える箇所)に張り付けるとかすれば・・・」
「なにそれ、どんどん案が出てくるって天才ですか?」
「いえいえ、あるといいな~位にしか思ってないことですから、実現するかどうかは・・・それに、鎧に直接~の場合は、ランクが上がる時や鎧の新調の際に防具屋で張替えや付け替えが発生するから、顧客も増えるんじゃないですか?」
「・・・お姉さんもう何も言えないわ」
「え?」
「頭部を護る・・・か。それね?結構上のランクの子でも考え付かないのよ。現に私たちも気になってなかったし」
「そうですね。前面の一部ですが、注文で邪魔にならない程度に大きさも変更できるし、いざという時の隠し武器にもなりますからね」
「どういうこと?」
「近接戦闘で両手を封じ(封じられ)た時に、頭突きができるじゃないですか。相手の額にこちらの額を・・・鉢金でやれば、どちらにダメージが入るかはわかりますよね?まぁ、そのためには装備する側、内側には若干の衝撃吸収素材などを仕込む必要がありますけど」
「・・・」
「次から次へとポンポンポンポン・・・」
「お、お姉さん?」
「防具の新案なんて年に数回閃いても、モノになるものなんて殆ど無いし、なったとしても売れるかどうかは別の話だってのに、今聞いた話は確実に利益に繋がるし、新人の生存率も跳ね上がるわ!」
やっぱり、武器防具のアイデアは停滞してるようだね
「それはよかったです。それに、装備してないときでもこぉ、手に巻きつければ簡易的なナックルガードにもなりますしね?」
「ストップ!それ以上詰め込まれたら、最初の案が出てっちゃうよ!とりあえずの原型は作っておくから、その先の話は冒険者登録が終わってからにしようじゃないか」
「ボクもつい熱くなってすみませんでした」(案だけならまだまだあるケd・・・)
「今なんか言ったかい?」
「いえいえ、登録が終わったらまた顔出します!失礼しましたー」
逃げるように防具屋を後にした
「つい熱くなって余計なこと言っちゃったな・・・」
作ろうと思えば自分でも作れるんだけど、それの出所を聞かれたときに困るし、特許だなんだと目をつけられるのも面倒だし、そうなったときも防具屋で製造販売してれば問題点を丸投げできるしね。お店の宣伝もできる。
「あとは、市場でも見て香辛料とか食べ物の確認かな?」
今日まで他の人から離れて生活していたため、野草などは見てきたが、栽培されてる野菜や売り物を確認していない。テンプレだとじゃがいもとか・・・ね?『悪魔の実』って言われてる世界もあるらしいから・・・デビルフィッシュとか・・・一応鑑定すればわかるけど、希少植物なのか未発見植物なのかでも、買い取りの時に大騒ぎになりかねないからね・・・
「へー、市場はやっぱりにぎわってるね。宿も仕込みの時間って言ってたから、夕食の買い物とかもこれくらいの時間からなのかな?・・・これは・・・」
まず最初に目に入ったのは天婦羅・・・でなく、テンプレのじゃがいもっぽい物だった
「こんにちわ、これはなんですか?」
店のおばちゃんに聞くと
「それはじゃがいもっていうんだけど、食べた人の何割かが体調を崩すってんで、罰ゲームの素材にされてるんだよ。おかげで安く買いたたかれててねぇ」
テンプレでした・・・隣で串焼きをやってたので
「それなら大丈夫ですよ。ジャガイモ何個かもらいますね?・・・と、おじさん、ちょっと面白い物見せるので、焼き場一部貸してもらえますか?もちろん、使用料払いますから」
となりのおじさんは面食らってたが
「内容次第じゃが、面白ければ使用料はいらんよ」
快く了承してくれたので、準備することにした。
武器-高周波ブレード-オルフィーナ