登録
「次の者!」
ここは王都入り口。門番に呼ばれてボクは歩を進め・・・
「坊主、身分証はあるか?」
「いえ、持ってないです。もうすぐ十二歳になるので、冒険者になろうと思って田舎から出てきました」
「そうか、ならまずはこの水晶に手をのせて・・・うん、犯罪歴はないな。入場税で銀貨一枚必要だがあるか?」
「あります」
「ならこの仮の身分証を渡すから一週間以内に登録してここに持ってくれば、先ほどの銀貨は返すからな?その仮の身分証は一週間しか効力を持たないから、それ以降は不法侵入とみなし、捕縛の後犯罪奴隷落ちもあるから、注意するように」
「わかりました。後二日で十二歳になるので、必ず来ます」
「おう、がんばれよ坊主。冒険者ギルドはここからまっすぐ行ったところにあるぞ」
さて、登録はまだできないけど、ギルドの場所を確認して、おすすめの宿とかあればきいておきたいな。
登録前だと素材の買取とか買い叩かれそうだけど、それでも路銀は稼いでおかないと・・・宿にも泊まれないしね。
「ここが冒険者ギルド・・・テンプレとかあるのかな?いや・・・まずは入ってみないと・・・」
中に入ると危惧していたテンプレは発生しなかった。それはなぜか?
「受付のお姉さん以外人がいない・・・これは助かったのか?
すみません、ちょっと聞きたいことがあるんですけど大丈夫でしょうか?」
「うん?どうしたのかな?少年。登録にはまだ早いと思うんだが・・・ハッ!まさかお姉さんをナンパに来たのかな???」
なんだろうこの人・・・こんな人がギルドの受付で大丈夫なんだろうか・・・
「えっと、まだ十二歳にはなってないんですけど、登録の方法とか教えてほしいんですけど。それと、おすすめの宿があれば紹介してほしいのですが」
「え!?いきなり宿に招待??お姉さん困っちゃうな~」
いやいや、本気でこの人大丈夫か?
「あの~お姉さん?」
「何かな?少年」
「チェンジで」
「なっ!」
「話が通じないようなので、出直します。二日後には十二歳になるので、その時に改めて」
「改めてお姉さんを誘ってk「ドゴッ!」れy・・・キュウ」
「!」
「何やってんのよあなたは!」
カウンターの奥から現れた女性が鈍器のようなもので、対応?してくれてた受付嬢を黙らせ、交代してくれた
「申し訳ありませんでした。私は受付のアイシャといいます。先ほどまでここにいた受付は後日謝罪とあいさつをさせますので、ひとまずはお許しください」
「大丈夫です。謝罪の言葉は必要ありません。実害もなかったことですし。それでは、アイシャさんに質問してもよろしいでしょうか?
申し遅れました、ボクはショウといいます。よろしくお願いします」
たぶんだが、この人は怒らせたらいけない人だ。
「はい、私が承ります。何でも聞いてください」
◇◆◇
「ありがとうございます。
では最初から、ボクは後二日で十二歳になるので、そうなったあ冒険者に登録したいのですが、その際に必要なものや試験などあれば教えていただきたく思ってたのと、それまでの間泊まる場所のおススメがあれば知りたかったのです。
あとは、宿代ということで、王都に来るまでに狩った素材の買取をお願いできればと思って」
「はい。登録方法、おススメの宿、素材の買取の三点ですね。それでは順を追って説明させていただきます」
うわーまともに聞いてくれた。というか、これが普通なんだよね。
「それでは最初に登録方法ですが、これは登録年齢十二歳~を満たし、必要事項の記入と簡単な試験を受けていただくこととなります。
試験合格後登録料として銀貨一枚が必要となりますが、これは登録完了後から受注できる依頼の報酬と相殺することもできます。
次におススメの宿ですが、ギルドを出て左手に行くと『雀の穂亭』という宿があり、ギルドの紹介とおっしゃっていただければ割引が可能です。
最後に素材の買取ですが、この後でお見せいただけますか?ただ、申し訳ありませんが登録までは多少の手数料がかかってしまい、登録後よりもお安くなってしまいますが、よろしいでしょうか?」
やっぱり査定価格は落ちるのか・・・
「大丈夫です。登録することで信頼と信用が発生するから、登録前の素材にはその信用と信頼分がマイナス査定されるんですよね?」
「そこまで考えておいででしたか。しかし、そうなるとショウく・・様は貴族の御子息様でしょうか?」
「いえ、元は冒険者一家の次男でしたが、戦闘用スキルでないとの理由で捨てられ、いまはタダの子供ですから、普通にお願いします」
やべ、思わず身の上カミングアウトしちゃった・・・でもアイシャさん話しやすくて何でも話しちゃいそうなんだよね。
「捨て・・・受付が詮索してはならないことを、申し訳ありませんでした」
アイシャさんは立ち上がり、丁寧な腰折り、謝罪をしてきた。
「あわわわ、大丈夫ですから、頭を上げてください。謝罪も受け取りますから、これからは普通に接しいただければそれで大丈夫なので」
なんかいろいろ勘違いさせちゃったな
「それでは、買い取り希望の素材をお願いできますか?荷物は・・・」
「ここで出すんですか?それとも奥に買い取り所とか解体場とかありますか?」
「解体場は奥にございますが・・・ショウ君そんなに大きな荷物持ってませんよね?」
しまったぁぁぁ!ついあそこから出すつもりで話してた・・・これはごまかせないかもしれない…
「これは、アイテムボックス系の・・・なので、身軽に動けるんでしゅ・・・」
(噛んだ!)(噛みましたね!)
「冒険者個々の詳しいスキルは詮索しないのが暗黙のルールですから、それで大丈夫です。ただ、あまり秘密すぎると先ほどの信頼と信用にも弊害が生じる場合があるので、お気を付けください。それでは解体場へご案内しますね」
アイシャさんは近くにいたオッサンにカウンターをお願いして、奥の部屋へボクを案内してくれた。
「それではこちらに出していただけますか?」
◇◆◇
「それと、この方が解体と買い取り査定をして下さる」
「ハッサンだ。よろしくな坊主」
「ショウといいます。冒険者登録はまだですが、登録後はよろしくお願いします」
熊みたいなごつい人だな・・・
「なに?まだ冒険者に登録してないだと?アイシャ嬢、どういうことだ?」
「ハッサンさん、彼は二日後に十二歳になるので、事前に登録方法を聞きに来られただけです。それと、登録日までの宿代を捻出するために買い取り希望とのことなんです。勿論登録前で査定額が下がることは了承済みです」
「そうか、それなら・・・って、手ぶらじゃねぇか?」
「あまり吹聴されたくないので、できれば流してもらえると助かるのですが・・・解体と買い取り希望はこれらです」
腰のポーチから出すふりして無限収納から素材や解体前の魔物等を出していく
「「なななな・・・」」
先ほどまで冷静沈着だったアイシャさんとハッサンさん(言いにくいな・・・)が目を見開き驚いてる。ちょっと多かったかな?
「とりあえずこれらをお願いできますか?」
ホブゴブリン×5 ゴブリンソルジャー×5 ゴブリンメイジ×1 ゴブリンアーチャー×2 ゴブリンジェネラル×2 ゴブリンキング×1 ゴブリンエンペラー×1
ボア×10 ジャイアントボア×1 ディア×3 ジャイアントディア×1
薬草は10本一束で50束 魔草も10本一束で10束 キノコを籠いっぱい×2
「ひとまずはこれでお願いできますか?ゴブリンは100までは数えたんですが途中から数えるのも嫌になるくらいいたので、その場で火葬しておきましたので、病気やゾンビになることもないと思います」
倉庫いっぱいになっちゃったな・・・この広さだと地竜とか空竜とか出さなくてよかったよ・・・あふれちゃう
それにしても二人とも静かだな・・・査定が忙しいんだろう、邪魔しちゃ悪いから宿に行こうか・・・いや、簡単なものだけでも買い取りしてもらわなきゃ宿代が・・・
「あの~アイシャさん?時間かかるようでしたら、当面の宿代分だけでも査定してもらって、残りは後日でも大丈夫ですが・・・アイシャさ~~ん?」
「ショウ君!あなたは一体??」「・・・」
アイシャさんは無事帰還したようだけど、ハッサンさんはまだ遠いところに旅立ったままのようだ
「アイシャさん、査定に時間がかかるようなので、当面の宿代分だけでも査定していただけませんか?それに、ホールの方も人が多くなってきたみたいですし」
そう、このやり取りの間に、静かだったギルドホールに冒険者が戻り始めたようで騒がしくなってきていた。
「アイシャさんが気絶させた受付の方も復活していればいいんですが」
そういうとアイシャさんは再度目を見開き
「そうだった!急いで戻らなきゃ・・・とりあえず薬草の査定だけするので、ショウ君もホールに戻ってもらえますか?」
「わかりました。よろしくお願いします」
◇◆◇
「先ほどは失礼いしました。薬草の査定結果、とても上質なものでしたので、これは登録後の買取の方がよろしいかと判断し、今回は特例で買い取りの手付金として金貨2枚をお渡しすることとなりました。これはあくまで手付金なので、買い取りの報酬とは別となりますので、ご了承ください」
ん?
「買取は不可でしたか?」
「いえ、逆に薬草類の状態もとてもよく、通常査定金額からマイナスするのも申し訳なくなるほどです。現状の冒険者に採取依頼を出しても、あそこまで採取状態の良いものは見たことがありません。それに、ほかの買取品も解体してみなければわかりませんが、とてもいい状態とお見受けします。なので、お時間がかかるのと、それ以上の見込み価格としてこちらでと」
なるほど、そういうことね
「わかりました。それではまた二日後に。ありがとうございました」
「はい、お待ちしております」
出て左手に向かって・・・あったこれか
「雀の穂亭・・・っと、いい匂いがしてくるな」
どうやら一階左手が飯屋&飲み屋で、二階と三階が宿屋のようだ。なかにはいるとカウンターにいた女の子が
「いらっしゃいませ。宿泊ですか?お食事は現在休憩と仕込み中なので、十七時からの営業となります」
同い年くらいの女の子がそう営業トークを繰り出し、とても気持ちのいい笑顔で迎えてくれた
「宿泊でおねがいします」
「はい、宿泊ですね。宿泊ですと一泊銀貨二枚となります。食事をご希望でしたら朝夕それぞれ銅貨五枚となります。また、お風呂は別途かかります。何泊なさいますか?」
「とりあえず三泊お願いします。食事付きで」
「ありがとうございます。では三泊で銀貨九枚になります。お風呂代はその都度お声をかけてください」
「はい、それじゃぁ・・・金貨しかないけど大丈夫ですか?」
「大丈夫です。それでは銀貨一枚のお返しになります。食事はまだ仕込み中なので十七時からとなりますがよろしいですか?」
「大丈夫です」
「それではお部屋に案内します。こちらへどうぞ」
部屋は2階の奥だった
「部屋の鍵をなくされますと、金貨一枚の追加が発生するのでご注意ください。それと申し遅れました、わたしはミリスといいます。よろしくお願いします」
「こちらこそ名乗り忘れてました。ショウといいます。とりあえず三日間よろしくお願いします」
部屋に入ると簡素なベッドと机と椅子、窓はあるがハメ殺しで風取り込み用の格子が横に空いてるだけだが、よく掃除された清潔な部屋で安心した。まぁ、ギルドがおススメするくらいだから、変な宿なわけはないだろうけどね。
「さて、夕食まで時間もあるし、王都の中を見て回ろうかな」
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