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むむむ、暑くて死にそう
かなりのスピードで走り続けて3日が過ぎようとしていた。俺一人で有ればもっと早くに着くことが出来たであろうがまぁ仕方がない。
それでも3日、その日にちでようやく陸地が見える位置までやって来ることができた。
ここまでの間に2度ビュランの襲撃は受けたがなんとか対処することが出来た。やはり凍らせるという行為自体がかなり強いのでお気に入りだ。
俺はそのままスピードを緩めずに陸地に突入する。
そこは市街地であり、今は使われていないようでそこらかしこが廃墟となっていた。
愛華を下ろしてヴァロンドを解除する。長らく巨人になっていたので少々疲れ気味だ。
「ここが日本であってるのか?」
「ええあってるわ。けどここは生存圏外だけれどね。ほらあそこ」
愛華が指差す先には石巻市と書かれた看板がある。つまりはここは東北、宮城県石巻市ということなのだろう。
「確かに日本らしいな」
ウィーーン
その時数にして複数の音が市街地を駆け巡る。
その巨体が目の前に来るのにそう時間はかからなかった。
目の前に来たグランツェルの一機から声がかかる。
「お前たち何者だ! 所属を言え!」
高圧的な声にゆあは少し後ろに下がるが逆に愛華は一歩踏み出して答えた。
「対策都市、第3区桜ヶ丘学院所属の星乃愛華です!」
「学生か。なぜこんなところにいる?」
「演習訓練中にビュランと遭遇、部隊と逸れてしまい、その後この者と歩いてこちらまで帰還しました」
「そうかわかった。私は飯田2尉だ。今から私の指示に従え、送り届けてやる」
「はい」
二機のグランツェルが俺たちに近づいて来る。
「そこの少女は私の機体に、少年は佐藤2曹の機体に乗り込め」
そういうと、グランツェルの後方のハッチが開き、そこから梯子が降りてきた。それを使い機体に乗り込む。
機体の中は座席の後ろに一人分のスペースが空いていてそこに収まる形で中に入ることができた。
「えーとお邪魔します」
「んーよろしくね」
そう佐藤2曹と呼ばれた女性はハッチを閉じて再び立ち上がり、「それでは帰還する」と隊長と思われる女性の声に続き帰還を開始した。
グランツェルに乗った一行は最前線基地である、霞目基地へと到着する。
到着早々、基地病院にて精密検査を受け、翌日には迎えが来る手筈になっていた。
話を聞くとどうやら愛華が既に学院の教師に連絡をつけ、迎えを呼んだそうだ。
「そういう訳だからあんたも私と来るのよ?」
「え? まぁ行くところなんてないし別にいいけど」
「そうならいいわ。しっかり休んで明日に備えるのよ。多分明日は私機能しないから」
「それはどういう・・・」
愛華は問いには答えずどこか恐怖を感じながら与えられた部屋へ入っていった。
俺も愛華に続き自分の部屋へと入り睡眠を取った。
次の日、愛華の「おきなさい!」の拳で起きることとなった。理解が追いつかず眠った頭を起こそうとしてると彼女は「迎えが来たわよ」とそれだけ告げて部屋を出て行く。
時計を見ると既に1500を回っている。どんだけ寝ているんだよ。いやまじで。
そりゃ愛華も叩き起こしに来るよな。
すぐに着替えて彼女を追いかけるように部屋を出て行き、彼女の横に並んだ。
そこにはUH-60JA、多目的ヘリコプターが目の前に止まっており、その前に愛華と一人の少女が立っていた。
ゆあがその場に着くと少女がこちらを見て口を開く。
「お前が謎の少年か、この小娘が私に連絡するほどだから、訳ありなのだろうな」
なんだこの少女は、明らかに高校生ほどの俺たちより小さいまさに小学生、よくて中学生と言われるくらいのちんちくりんではないか。
「なぁ、愛華このちっこいのなに?」
「お、おい! あんたそれは!」
その一言で愛華の表情は曇り、そしてその前にいた少女は完全に怒りをあらわにしている。
「おい、小僧。死ぬ準備は出来ているんだろうな?」
「え?」
俺はいつの間にか距離を詰められて、顎に小さな拳が突き刺さり、おれは天を仰いでいた。
そのまま少女は元の位置まで戻りヘリに乗り込む。愛華もそれに続き、俺もクラクラしながらもヘリに乗り込んだ。
専用のヘルメットを被り、後ろにあるコネクターを差し込むことで会話が出来るようになる。
それを使って会話を始めた。
「あ、あ、聞こえるか少年」
「はーーきーーす」
「聞き取りづらいな。少年あーんだ」
少女に言われるがままあーんと口を開ける。
少女が近寄ってきてヘルメットに付属しているマイクを追って口の中に入れるように近づけた。
「これで聞こえるようになるだろう。どうだ? 何か喋ってみろ」
「えーと。ちっこくて可愛いですね」
「貴様……まぁいい。とりあえず自己紹介をせんと始まらんだろう。私はこいつの担任である小里晴美だ」
「え? 先生?マジで?」
俺は疑いの目で愛華を見るが、
「本当のことよ」
そう彼女は告げる。つまりなんだこの少女の格好してるけど実は大人ってやつか?これが見た目は子供頭脳は大人というやつか。
一人で納得していると晴美の方から話を振って来る。
「何を納得したかわ知らんが次に私をバカにしてみろ、貴様の命は無いと思えよ」
その顔は自信に満ち、そして逆らう気すら起こさせない姿をしていた。
そしてヘリはようやく対策都市へと帰還した。
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