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ストックなんてないけど頑張るんば
「班長応答してください!班長! 有紗?みんな・・・」
通信機から帰ってくる返答は虚しい砂嵐だけ、その音に心が折れそうになりながら少女はその機体を操縦する。
「ナビシステムも使えない、使えるのは操縦系統だけかそれも出力が足りてない。本当に移動しか出来ない」
唇を噛みしめながら水上を進む。
水上を走ることのできる対ビュラン対抗兵器グランツェル。
それは3年前ビュランが現れるまで災害救助ロボとして開発されたビュラン発生後対ビュラン兵器として改修されそして改良され今のグランツェルがある。
ただし現在ビュランとの戦いは極めて劣勢に強いられており、ビュラン1体に対して6体のグランツェルまたはA級能力者10名が必要と言われている。
能力者とはビュラン出現後から世界中に現れた者たちで人類が滅んでいないのも能力者の影響が強い。あるものは火を吹き、あるものは水を操るそんな人々によってビュランと対抗できていた。
日本は能力とグランツェルにより他の国よりも硬く生存領域の防衛が出来ていた。
「今ビュランに来られたらひとたまりもないわ」
6体は必要とされるグランツェル。しかし今は少女の乗る機体のみ、機能も制限され戦える状態ではない。そんなところにビュランが現れたら死を覚悟する他ないだろう。
「でも日本ってどっちなんだろう?」
ナビ機能も失われて広い海方角もわからず帰る方向を見失っていた。
「でもこんなことになるなんて」
本来こんなことになるはずではなかった。少女はまだ正式な軍人ではなく学生である。今回は正規部隊と合同での演習で1体のビュラン討伐する予定でバックアップ体制も万全のはずだったのだ。
それが突如戦闘中に現れた海洋型ビュランの出現により、グランツェルごと流されて部隊から離されていまった。その際に通信機能等が故障し今に至る。
食料も3日分の携行食があるのみそれまでには日本に帰らなければならないだろう。
その時海に大きな波が立つ。
「な、なに!?」
びービービー警告、警告、警告
突如ディスプレイに警告の文字つまりは近くにビュランがいることを指している。
「嘘、まさかこんな時にビュランが来るなんて、グランツェル1体じゃ勝てっこない。逃げなきゃ」
すぐさま今出せる速度でその場を離れる。カメラに映ったのは先ほども現れたら海洋型のビュランだ。
その巨体は真っ直ぐこちらに向かってきている。速度は早くはないがそれでも今のグランツェルよりは早く徐々に近づいて来ていた。
「このままじゃ追いつかれる。もうダメなの?」
距離にして30m、ものの数十秒で追いつかれる距離にまで迫っていた。
少女が死を覚悟したその時だった、それが現れたのは、グランツェルのような体をした巨人。しかしグランツェルとは違った。
「専用機? でもそれにしては・・」
グランツェルには専用機も存在しているがそれは見た目が違ったり装備が違うだけで性能ではどの機体も大差ない。
巨人はそのまま海洋型ビュランに近づき拳を振るう。
「きゃぁーー」
その衝撃は凄まじく少し離れたグランツェルにもやってくる。
「う、うそやめてよ! こんな時に」
突如としてグランツェルの電源が落ちる。先ほどの衝撃で電気系統が壊れたのだろう。
少女はハッチを開けて外に出る。そして見たのは衝撃的な瞬間だった。
「ビュランを食べてる? あの巨人もビュランなの?」
巨人は海洋型のビュランの肉を頬張るとこっちを向いて近づいてきた。そばに来てゆっくりとその手が少女の元に向かって伸びていく。
少女は死の覚悟を決めてその場目を閉じた。
「え?」
握り潰されると思いきやそうではなく手と手の間には空洞が出来ていてそれは少女を外敵から守るかのようであった。
そして巨人は少女を手の中に入れたまま走り出した。
手の中に入れられてから続いていた揺れがようやくおさまった。
シートベルトもなく揺れないように少し押さえつけられて苦しかったのだけれどようやく解放される。
開けられた手から外を見るとどこかの陸地だということがわかったし、日本ではないことも理解できた。
そこは多少の畑と草原そして一軒の家だけが見える範囲では確認ができた。
巨人は手を下ろして手から降りるのを促してくる。
少女はゆっくりと手から降り、巨人の手が指差す家を見る。
「あの中に入ればいいのかしら?」
そう巨人に問うと言葉がわかっているのだろう。顔を上下に動かした。
中に入った少女はその家が普通の一軒家であると認識する。電気がつき、水を使っている形跡がある。至って普通の家だ。
少女が部屋を見渡していると玄関の扉が開かれる。そこには日本人と思われる少年が立っていた。
★
いつも通り食料が尽きかけたのでビュラン狩りに行っていたけれど、今日はそれどころでは無かった。
海の上で戦う二つの影が見えた時にはビュラン同士が戦ってるのかと思ったけれども、はっきり見える場所まで近づいた時、その片方の姿は時代が時代の男の子なら憧れるスーパーロボットの姿をしてきた。片方は明らかに怪物。今まさに襲いかかるところだった故に咄嗟に助けていた。
化物を相手にして倒した時にいつの間にか機体からは少女が出てきていた。やはりこれはロボットであったのだろう。
俺は少女を保護するため手の中に入れて連れ帰って来た。
その少女は今目の前にいる。家の中にたち開いた扉を見つめていた。
「こんにちは日本語分かるかな?」
見た目は日本人、けれどアジア系で日本語がわからないかもしれない。故の確認を取ってみた。
「えっ、ちょとまって」
少女は何も言わずに足元に隠していたナイフを片手に突っ込んでいる。
その突撃は素人のそれではなく軽やかなまさに訓練を受けているようだ。
「うっ!」
「えっとごめんね。あ、日本語わからないのか。ソーリー」
俺は咄嗟に能力を使う。俺の持つ能力の一つで氷を操る。それを使って彼女の足元を凍らせて動きを止めた。
痛いだろうが仕方がない。わざわざ刺されてやる必要はないからな。
「日本語わかるわ」
彼女はそう一言呟いた。
「そっかそっかならよかったよ。俺は瀬良ゆあよろしくな」
少女は黙ったままこちらをじっと睨みつける。
「おっとそうだよね。待ってね」
俺は自分で出した能力を時彼女の拘束を解く。
「なんで?」
彼女はどこか不思議そうにそう呟く。
「なんでって言われても拘束しててもちゃんとお話はしてくれないでしょ?」
彼女は唖然として再び固まった。
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