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転生の糸使い [830万PV突破・400万字、900話以上の大ボリューム!]  作者: 青浦鋭二
第1部 教会の孤児編 (襲撃・修行・エルフの里・黒骸王・巡回の旅・王都攻防戦)

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★第95話 巡回の旅路 その13 新たな防具と荷馬車の旅

2024年3月6日追記↓


2024年3月より、作品にいただいたファンアートの中でも、ご本人様からご許可をいただけたものを作品冒頭や本編に順次載せております。


今回は『W×Ⅱorld gate ~ダブルワールドゲート~』作者の白鷺様(TwitterID=@sirasagiekaki)より、アマリアのイラストを載せさせていただきました。本当にありがとうございます!

 翌日、僕たちは目覚めてから鍛冶工房へ行くと、早朝にも拘わらず各種装備品は完成していた。

 工房長の後ろには、昨日からずっと作業にあたっていたらしい弟子や職人たちが、疲弊しきった顔をして座り込んでいた。

 ラジクに応対した工房長も、にこやかではあるが徹夜明けのようだ。


「皆には無理をさせてしまったみたいだな。でもお陰で早く出立できる。礼を言う」


「いえいえ、以前盗賊団からダリブバールを救ってくださったお礼の気持ちも込めて、精一杯やらせていただきました。

 ええと…修理依頼は騎士鎧が2つに軽鎧が1つ、新規作成でサラマンダーの鱗を使った胸当てと、同じくサラマンダーの軽鎧が2つですね」


「素晴らしい出来ね。まるで新品のようだわ」


「うんうん、破損する前より良くなってる気がするね」


 工房長から装備品を受け取ったアルテミアとレストミリアも、出来の良さを見て嬉しそうにしている。


「支払い代わりにサラマンダーの鱗をいただくので、修理に使う金属も良いものを使うことが出来ました」


 火山に生息するうえ火竜の眷族であるサラマンダーの素材は、この辺では滅多に手に入れられないらしく、工房長は高価な金属を使ったにも拘わらずホクホク顔だった。


「僕たちの新しい防具ですけど、これって本当に貰っちゃって良いんですかね…?」


 僕は目の前の全体的に赤や(だいだい)色をして、金属の縁取(ふちど)りの中に鱗がびっしりと付いている防具を見ながら呟く。

 見るからに高そうだし立派なので、自分で身に着けるとなると何だか気が引けた。


「気にしなくて良いのよ。あなた方は黒骸王との戦いでもたくさん貢献していて、本来なら国から多額の報酬を貰っても良かったくらいなんだから。

 その代わりとは言わないけど、これから先も何かあるたびに戦うことになるのなら、良い防具は持っていて損はないわ」


「僕たちは報酬が欲しくて参加したわけでもないですから、それは別に気にしてないんですけどね。まぁでもお言葉に甘えて、ありがたくいただきます」


 僕たちは新しい防具を身に着けると、今までのものよりも丈夫とは聞いていたけれど、それ以上に軽さに驚いた。

 アマリアも胸当てを着けているけど、初めてにも拘わらず違和感が無いようだ。


挿絵(By みてみん)


「ほう…。これほど馴染む装備は今まで無かったな」


 モルド神父も嬉しそうにそう言いながら、手足を動かしている。満足そうで何よりだ。


 そうして皆で新しい防具を身に着けると支払いを済ませ、僕たちは荷馬車に乗り込んでダリブバールを出発した。

 外の景色を見たそうなアマリアは、御者をしているレストミリアの隣に座って、相変わらず首の関節をフル稼働している。

 この旅が始まってからと言うもの、アマリアは首を酷使しすぎている気がするが、大丈夫なのだろうか…ちょっと心配になるレベルだ。


 今回は大きめの荷馬車なので、荷物を積んでも全員が荷台に乗れた。僕としては歩かなくていいのは楽だし、荷台で寝転がり揺られながら、のんびりと空を眺めていられるのは、船旅と同じくらい好きだった。

 僕はふと思い出して、エルヴィレで結界を張り忘れた事を伝えると、途中でモルド神父が降りて単身エルヴィレに向かい、結界を張ってまた戻ってきた。


 結界を忘れてはお前がついて行った意味が無いだろう…などと言いつつも、大人しく荷台で揺られているよりは良い運動になったらしく、モルド神父は別に不機嫌では無かったので良しとしよう。


 その後は特に問題なく進み、僕たちはエルフの大森林に入った。

 以前は割と排他的だった大森林もザクエルや、岳竜の一件で交流が増えたこともあって、エルフの里を目指すのも、昔ほどは気を張らなくて良くなっているとラジクが教えてくれたが、一応用心のために進行方向の安全を確認しておくことになり、アルテミアが荷馬車を降りて一旦離れた。


「今回はお前がいるからな。エルフ側にその指輪の反応が伝われば、森に入った者が誰かはすぐにわかるはずだ」


「もしかするとイリトゥエル様が、わざわざ迎えに来るかもしれないね?」


 ラジクが指輪を見ながら話していると、レストミリアがニヤけながら僕に言う。

 現在御者はモルド神父に交代している。相変わらずアマリアも前にいてキョロキョロしてはいるが、今嬉しそうなのは景色だけが原因ではないだろう。


「ミリアさん、普通に考えて里長の娘が孤児の僕を相手に、出迎えなんてするわけがないでしょう?

 もし師匠やアルテミア様の来訪が伝われば、騎士が相手ですし迎えが来るかも知れませんが、それでもイリトゥエル様ではなく、エルフの戦士や伝令あたりを使いに出す程度なんじゃないですか?」


「まぁレストミリア殿の予想はともかく、現実的な考え方をするならジグの言う通りだが、さてどうなるか…」


「ラジク殿、なんなら賭けるかい?私はイリトゥエル様が来る方に10万ゴル賭けるよ」


「レストミリア殿、それでは賭けにならん。何故なら俺もイリトゥエル殿が来る方に賭けるからな」


 二人がそんなやり取りをしていると、ちょうど周辺確認を終えたアルテミアが戻ってきた。


「もしかしてそれって、ジグの指輪や回復薬の元になった霊樹の葉をくれた子の話?

 私はあまりよく知らないから、詳しく聞かせて欲しいわ。あ、ちなみに周りは特に異常無しよ」


 これ以上からかわれるのも困るし、イリトゥエル様にも失礼になるからと僕は止めたが、悪そうにニヤッと笑った二人は気にも留めず、以前あったことと勝手な想像をアルテミアに吹き込んだ。


「あらまぁ、ハイワーシズの姫君だけでなく、エルフ族の姫にまで…私たちの教え子はなかなかモテるのね?

 聞いた話が完全に事実なら、確かに賭けにはならないかもね…ふふふ」


 まさかイリトゥエル様のことだけでなく、カナレア様のことまで触れるとは思わなかったよ…。

 二人はそろそろ、誰か偉い人から叱られると良いよ!

 アルテミア様も、ニヤニヤしながらこっちを見ないでください!


「皆さん、あまり勝手な想像で失礼な話をしていると、そのうち怒られますよ…」


「お前は時折鈍いと言うより、なんかこう…自己評価が低いように思えるな。何か理由でもあるのか?」


 師匠、僕は見た目通りの中身じゃないから、理由があってもそれは言えないんだよ…。

 異世界からの生まれ変わりを信じてくれるかは別として、僕は今の状態を壊したくないから、とてもじゃないけど本当のことは話せないし、話したくない。


「理由と言われても…まぁ僕の場合は産まれた直後に、親から必要とされず捨てられて孤児になりましたからね。それが原因かもしれません」


 なんとなくそれっぽい理由をつけて、僕は誤魔化すことにした。


「無神経な質問だった。すまん…」


 あっ、適当に考えた理由なのに、師匠が明らかに凹んで、他の二人も気まずそうになっちゃった。

 捨てられたことに関しては全く気にしてないんだよ、みんなごめんなさいっ!


「あ、いや、そんなに気にしないでください。

 僕としては捨てられて良かったと思える程度に、今は幸せに暮らしています。

 それはモルド神父やアマリア、教会や孤児院の皆はもちろん、3人が色々教えてくれたり、こうして一緒にいて心配してくれるからですよ」


「おや、嬉しいことを言ってくれるね。私もこうして旅をしたり、アマリア様やジグに教えられるのが楽しいよ」


「そうね…私としても今までの任務より、こういう任務の方が良いわ。弟子がいることによって張り合いも出来たし、何より皆でいるのは楽しいわね」


「うむ、それは俺も同感だ。教会に通うようになり、弟子が出来てから毎日が充実しているぞ」


「皆さんにそう言ってもらえるなら僕も嬉しいです。今後もご指導を宜しくお願いしますね」


 ふぅ、どうにか切り抜けたよ。我ながら良くやったと褒めてあげたいね!

 僕たちがそんなやり取りをしているあいだにも、荷馬車はどんどんと進んでいく。

 時折休憩を挟みつつ順調にエルフの里へと向かっていると、やがて日が傾いてきて辺りが暗くなってきた。


「森の中は暗くなるのが早いから、今日はこの辺りで進むのを止めて、野営してはどうだろう?」


「ええと今は…あぁ、この辺りなのね。なら明日には里に着けそうだし、今日はここまでにしましょう」


 モルド神父と交代して御者をしていたラジクの提案に、アルテミアが地図を確認しながら頷いた。

 街道から少し外れたところに荷馬車を止め、僕たちはテントを張り食事の準備を始めた。


 相変わらず火属性や水属性の魔法は便利で、本当に羨ましい。

 火に加えてモルド神父は土属性まで持っているので、周りを囲う土の壁を作り出して敵襲に備え、おまけに森の中の冷たい夜風まで防ぐ始末だった。最終的には祈りの結界まで張って、もうアウトドアの達人か何かなのかな?と思った。


 食事を終えて後片付けをすると、女性3人は荷馬車で、男3人はテントでそれぞれ寝ることにした。

 結界や壁によってモンスターに対する守りも堅く、特に大森林は盗賊などの心配をしなくて良いから、他の土地で野営するより安心して眠ることが出来た。

新たにサラマンダーの防具が完成しましたが、今回は穏やかな道程になったので、真価を発揮するのはまだ先ですね。


書いているとジグだけでなく作者自身も、そろそろアマリアの首が心配になってきました。


それと戦闘シーンを書くのは好きなのですが、盛り上がるかは別として、今回のような話も書いていてなかなか楽しいです。


次回はエルフの里に着くはずです(笑)

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