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転生の糸使い [830万PV突破・400万字、900話以上の大ボリューム!]  作者: 青浦鋭二
第1部 教会の孤児編 (襲撃・修行・エルフの里・黒骸王・巡回の旅・王都攻防戦)

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第91話 巡回の旅路 その9 黒真珠と声

申し訳ございません。

文量が少なかったのと、もう一区切り分を入れたかったので、前回のお話を加筆・修正してあります。

ちょうどリザードマンを送り出した辺りから手を加えてますので、まだ読んでいない方は、そちらを先に読んでから、こちらをお読みください。

 サードアイズ・ジャイアントを倒した僕たちは、グレイジーナと戦っているモルド神父たちに合流するべく、炎や光が見える方向に向かって林の中を進んでいく。

 まだ集落のあちこちに残っていた他の小型モンスターに関しては、リザードマンの戦士達だけで大丈夫そうだったので彼らに任せてきた。


「あぁ、皆無事で良かった…早く2人に合流してあげてください。神父様とミリアの二人がかりでも、あの魔族はなかなか倒せないのです。

 私も分身を作り出して援護しているのですが、すぐに消されてしまって…」


 少し拓けた所に行くと、不安そうな表情をしたアマリアが、幻影魔法を唱えながらそう言って二人の方を指差した。

 その方向には鞭を振るっては分身を消し、二人の攻撃魔法を盾魔法で防ぎ、ならばと接近していくたびに範囲魔法で遠ざけ、少しずつではあるが負傷を重ねさせているグレイジーナの姿があった。


「モルド神父が片腕とは言っても、あの二人を相手にこれほど戦えるなんて凄いですね…」


「うむ、魔族はただでさえ戦闘力が高いが、四天王直属の部下となるとあの通り、かなり強いはずだ。油断するなよ」


「私はアマリアのガードをしつつ支援するわ。2人はミリアたちに合流してあげて」


 僕とラジクは苦戦する2人の元へと走り出し、後方からはアルテミアの放つ光の矢が、グレイジーナへと向かっていった。

 僕たちの接近に気づいたグレイジーナは、鞭を振るうと地面を横一文字に削った。

 するとそこには赤々とした一筋の線が引かれ、そこから炎を噴き出してアルテミアの矢を打ち消し、炎の壁となって僕たちの接近を阻んだ。


 その隙を突いたモルド神父が爆拳を叩き込むが、グレイジーナの体に直撃したかと思った瞬間、パキンッ!と何かが割れるような音がして、モルド神父が渦巻く風に切り裂かれながら、こちらに吹っ飛んできた。


「ぐぅっ、まさか守りの魔道具まで持っているとは…」


 全身から出血しながらも、どうにか立ち上がろうとするモルド神父だったが、流石にすぐには無理なようだったので、ラジクが抱えてアマリアの元へと連れて行った。


「危なかったわぁ。流石に爆拳なんてもの、まともに受けられるわけが無いものね?」


 グレイジーナが妖艶な微笑みを浮かべていたが、

 モルド神父を引かせてこちらの態勢が整うまでは、アルテミアが牽制を続けてどうにか足止めをしている。


「はぁ…はぁ…。あの巨人がこんなに早く片付いたのは予想外だったけど、お陰で助かったよ。

 どうやら5つも属性を持っているらしくて、モルド殿と私じゃ属性も戦い方も、相性が悪くて苦戦してたんだ…」


「ミリアさんでもそういう風に思う相手がいるんですか?『万能者(ばんのうしゃ)』の二つ名が泣きますよ」


「別に私から名乗ったわけじゃないし、良く言えば『万能者』かも知れないけど、悪く言えば『器用貧乏(きようびんぼう)』ってことだからね…」


「その二つ名は流石に情けないのでやめましょう…。なかなか近づけさせてくれないみたいですけど、何か作戦はあるんですか?」


「そんなもの無いよ。今のところは隙を窺いつつ向こうの消耗を待っているんだけど、それほど大きくないにしても、あんなに範囲魔法を連発しているのにケロッとしてるんだから、こっちが先にバテそうだったところさ」


「じゃあ何か糸口が見つかるまでは、人数の違いで押すしか無いですね…」


 アルテミアの矢を鞭で払い落としていたグレイジーナだったが、右手で鞭を扱いながらも左手に魔力を溜め始めたので、僕たちは会話を止めて身構える。


「しつこい攻撃だこと。いい加減邪魔…ね!」


 グレイジーナが左手から炎の津波を生み出すと、アルテミアの矢はもちろん、僕たちも焼き尽くすほどの火力でこちらに向かってきた。

 僕はレストミリアごと風の盾を張って炎を防ぎ、後方にいたラジクとアルテミアも盾魔法で、治療をしているアマリアと倒れているモルド神父を守った。


 しかしその直後、グレイジーナが地面に鞭を叩きつけると信じられないことに、盾魔法を張っていたラジクとアルテミアの背後の地面から、二体の巨大なモンスターが現れて2人に襲い掛かり、背中に深手を負わせた。

 その光景を見た僕は冷や汗が出てきて、視界が桜色に滲む。


「何てことだ、このタイミングでサンドイーターが、しかも二体も出てくるなんて…!

 ジグ、少しのあいだで良いから魔族の相手をお願い出来るかい?私は負傷した皆を一度引かせなくちゃならない…」


「…やります。時間が無いでしょうから早く行ってください」


 モルド神父が重傷で倒れているのに、騎士二人も深手を負ったとなっては、アマリアが非常に危険な状態になる。

 滅多に見せることのない真面目な表情のレストミリアが、半分暴走しかけた魔力を懸命に抑えながら僕に言うのだから、自分もやれることをやるしかないだろう。


 特にサンドイーターがどのようなモンスターかも、全く知らない僕には任せられない上に、治療を必要としている人間が同時に3人もいたなら、誰よりもレストミリアが適任だ。

 それに師匠3人を負傷させられアマリアも危険な今、僕だって魔力を抑えていられる自信がない。


「あら坊や、もしかして怒っているのかしら?魔力が漏れ出るどころか、目の色まで変わってるわよ」


 耳に膜がかかったようにグレイジーナの声が遠ざかり、全身が熱い。


「そんなことはどうでも良いよ。今はとにかく、これ以上あんたの好き勝手にさせたくないだけさ」


「ふふっ、私の相手が務まると本気で思っているのね?良いわ、遊んであげる」


 僕は低く構えると、両手の指から糸を一直線にグレイジーナへと放ち、それと同時に駆け出す。


「威勢の良いことを言う割に、何なのその攻撃は?」


 糸による攻撃など滅多に無いのか、グレイジーナは一瞬驚いた表情をしたが、すぐにニヤけてそう言い、炎を放って糸を焼き払った。


 僕は風のドリルを放つと、目の前に広がる炎の壁を穿って突き進み、光の魔法剣を構え、属性身体強化で風を纏い、炎を突き破ってニヤけ顔を浮かべたままのグレイジーナへと突進して、剣を突き立てた。


「ひっ!」と声を上げて怯んだグレイジーナだったが、魔法剣による攻撃は体に届かず次の瞬間、モルド神父の時と同じようにパキンッ!と音が鳴って、今度は雷が迸った。


「ぐぅっ…!」


 僕は雷を纏った風で軽減して耐え、そのまま至近距離でグレイジーナに連続で斬りかかる。

 攻撃が当たるたびにパキンッ!パキンッ!と、グレイジーナの全身にジャラジャラと付けられた、お守りの魔道具でもある装飾品が壊れていき、そのたびに反撃の魔法が放たれるが、ハイワーシズの首飾りの守りと回復魔法、属性身体強化と魔法剣でそれらを防ぎ、耐え、斬り伏せて、必死に距離を取ろうとするグレイジーナに張り付き、それを許さなかった。


 お守りの数が激減したことで追い詰められたのか、グレイジーナは鞭を振るって接近戦に応じてきた。

 鞭の速度は目で捉えられるものではないので、僕は纏った風で受けることにしたが、当たった瞬間に魔法を炸裂させる鞭の攻撃によって吹っ飛ばされ、とうとう距離を取られてしまった。


「はぁ、はぁ…こ、こんな無茶苦茶な戦い方をして私のコレクションを減らすなんて、とんでもないガキね!さっさと死になさい!」


 息を切らせながらヒステリックに叫んだグレイジーナは、魔力を溜めると鞭を立て続けに振り回し、こちらへ向かって雷、火球、水弾、竜巻などを次々と、ほぼ同時に放ってきた。


 僕はそれらを、ありったけの魔力を込めた風の盾で弾き返す。1つ跳ね返すたびに魔力がゴッソリと減るが、歯を食いしばり魔力を振り絞って懸命に耐える。

 グレイジーナは魔法の撃ち合いを得意として、豊富な魔力を惜しげもなく使って攻撃してくるタイプだが、まさかそれを自分で受けるとは思っておらず、次々と攻撃をしている様子からも、今なら素早い反撃には無防備なはずだ。


 僕にトドメを刺さんとばかりに魔法を放ち、攻撃に夢中になっていたグレイジーナはこちらの思惑通り、倍速で跳ね返ってきた魔法に驚愕し、対応できずに直撃を受けた。

 着弾の瞬間に残っていた魔道具が発動したらしく、防ぎきれなかった魔法が爆発を起こすなか周囲に魔法を撒き散らしていたが、僕は離れていたため影響は無かった。


 こちらの魔力はもうほとんど残っていなかったので、回復薬を取り出して飲む。

 霊樹の葉から作られた回復薬はもう残り僅かだったが、魔族相手に惜しんではいられないだろう。

 薬を飲み干して剣を構え、爆発によって起こった煙が晴れるのを待っていると、ラジクがやって来た。


「ご無事でしたか師匠。他の4人は大丈夫ですか?それとサンドイーターは?」


「モルド殿は引き続きアマリアが治療している。

 サンドイーターはレストミリア殿が片づけたが、我々を助けるために、かなりの無茶をしたようだ。今は回復薬を飲んでアルテミア殿の治療を受けているが、命に別状はない」


「なら良かったで…す…」


 皆の無事を確認した途端に気が抜けたのか、眩暈がして僕は膝をついた。頭や体がどんどん痛みを訴えてくる。


「おいジグ、大丈夫か?」


「ぐっ…!糸と魔法剣に属性身体強化や風の盾と、立て続けに魔力を使いすぎました…。

 回復薬は飲みましたが、効果が出るまでは少しこのままかもしれません…」


 痛みは激しさを増してく一方だったが、ちょうど煙が晴れてきてグレイジーナが姿を現したため、下がるわけにもいかなかった。


「人間如きがこの私の美しい体に、とんでもないことをしてくれたわね…」


 全身に傷を負っていて、鎧も所々砕けてマントも無くなり、角も損傷しているグレイジーナが、血走った目でこちらを見ていた。


「それにお前のその力、このまま生かしておいては必ずルナメキラ様の邪魔となる。

 何としても今ここで始末するわ…。そう、たとえこの身を滅ぼしてでも…お前も護聖八騎も爆拳も、ルナメキラ様のために全員まとめて消し飛ばしてやる!」


 そう叫んだグレイジーナの全身から黒い炎が燃え上がり、黒い雷がバチバチと火花を出し始め、周りを黒い風が渦巻いていく。


「いかん、奴は自爆する気だ!アルテミア殿!」


 ラジクがそう叫び剣を構えて魔力を溜めると、後方にいたアルテミアがこちらを向き、すぐに状況を理解したらしく弓を構えて、同じように魔力を溜め始めた。


「どうにかして阻止を試みるが、もし止められなければ辺り一帯が吹き飛ぶ。お前は今のうちに糸でも何でも使って、出来るだけここから離れろ!」


「それじゃあ失敗したら師匠も皆も死ぬってことじゃないですか…。皆が無事じゃないなら、僕1人だけ離脱したところで意味がないです。止めるなら手が多い方が良いでしょう。僕もやりますよ…」


「黒骸王の時と言い、今と言い、最近のお前は反抗期なのか?」


 ラジクが僕の参加を認めそうな雰囲気なので、僕は未だ痛みを感じながらも、回復薬の効いてきた体に鞭打って両手に魔力を溜め始める。

 頭の中には初めて糸を使ったときのように、誰かの声が聞こえていた。その声を聞くと、どうすれば良いのかが自然と理解できた。


「ふふっ、そうかもしれません。誰しも一度は通る道ですから諦めてください」


「まるですでに経験済みのような物言いだな?」


「うーん…まぁこれまで年頃になった先輩孤児たちの行動を、自分も見てきてますから」


 自分にしか聞こえない声を聞きつつ、目の前の魔族による自爆攻撃とは別にヒヤヒヤする話の流れになったので、僕は適当に流すことにした。


 そうしているあいだにもグレイジーナは、溢れ出ていた炎や雷や風を、両手のあいだに集めて一点に圧縮し始めた。

 それに伴って彼女の体はどす黒く変色していき、やがて圧縮した魔力は大粒の黒真珠のようになり、とてつもない闇属性の塊になっているようだ。


「ルナメキラ様に…永遠(とわ)の忠誠と愛を…」


風之太刀(かぜのたち)!』

 

嵐穿弓(らんせんきゅう)!』


神縛桜糸(しんばくおうし)!』


 グレイジーナが最期にそう言って両手を掲げようとした瞬間、僕たちは一斉に攻撃を叩き込んだ。

 ラジクの放った風の刃が、すでに真っ黒い人型となったグレイジーナを真っ二つに切り裂き、アルテミアの矢が粉砕して消し飛ばした。


 しかし闇の魔力の塊は宙に浮いたまま残り、黒い光を放ち始めたが、そこへ光り輝く桜色の糸が無数に巻き付いていき、完全に包み込んだ。

 そしてそれは内部で黒真珠が爆発する前に、一瞬で浄化し尽くして消滅させた。


 キラキラと光を散らせて崩れていった糸の後には、もう何も残っていなかった。

なかなか手強い相手でしたが、割と玉砕覚悟で突進し続けたことによって相手のペースを乱し、油断しているところを狙って猛反撃に成功し、最後には大技の同時攻撃でどうにか勝利しました。


通常の盾魔法は防ぐだけなので、弾き返されるなんて普通は予想すらしないのです。


そして危機に際して再び声が聞こえて来ました。それに従うことによってジグは、糸の力を更に引き出すことに成功しました。

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