第90話 巡回の旅路 その8 敵の正体と三眼の巨人
本編とは全然関係ないのですが、他に同じ名前のキャラクターがいたりするのかな?等と考えて、たまにネットで検索してみるのですが、たまたま昨日アルテミアを検索したところ、一番上にエビの一種が出てきて驚きました。
自分としては弓使いから連想して、アルテミスをもじって名付けたのですが、まさかヒットするのがエビだとは思わず、吹き出してしまいました。
いや、ただそれだけです。誰かに聞いて欲しくてここに書いてしまいました。すみません(ーωー;)
日が沈んで暗くなっていく集落を、あちこちで赤々とした炎が照らし出す。先に張っていた結界によって、敵の攻撃はかなり威力を抑えられたようだが、それでも神父の結界を通過したことからも、元はなかなかの高威力の攻撃だったと思われる。
モルド神父の警告で皆は一斉に集落の中心部へと集まっていき、女子供や老人を内側にして、その周りをリザードマンの戦士達が囲んで守りを固めて、周辺を警戒している。
「周りは完全に囲まれているな…しかしこんな数、一体どこから湧いてきたんだ?」
「索敵に引っかかるのは、ほとんどが獣型のモンスターみたいだね。すると北の荒野から来たのかな?」
「私がロックガルウルフを討伐した影響なのかしら?それとも…」
「あの…多分なんですけど、指輪が赤と黒に光ったので、もしかしたらモンスター以外にも魔族がいるかもしれません」
「ぬぅ…モンスターだけならまだしも、魔族がいるとなると厄介だな」
僕とアマリアは、リザードマンの戦士達の少し内側にいて、4人は一番外側の四方を固めている。
すると今まで動かなかった周囲のモンスターが、一斉にこちらへ向かってきた。
しかしキンッと音を立てて、先頭集団は悉く結界に阻まれて弾き飛ばされた。
僕たちや戦士達はすかさずそこに攻撃を加えていき、態勢の崩れたモンスターを狩っていく。
するとモンスターたちは一斉に引き始めた。一瞬諦めたなどと都合の良いことを考えたのも束の間、集落の近くにある林からこちらに、津波のような炎が向かってきた。
「いかん…ジグ、風の盾だ!」
「はいっ!」
モルド神父の言葉に応えて僕は、皆を覆える大きさの風の盾を張った。炎の津波に触れた瞬間、結界はギギギイィィィンッッ!と甲高い音を立てて崩壊し、そのまま風の盾に向かって、少し威力を落とした炎が押し寄せてきた。
ゴオォッ!という音と共に衝突した炎を、風の盾がどうにか防ぐ。しかし、結界によって多少威力が落ちていたにも拘らず、追加で魔力を注ぎ込まなければ耐えられないほどの威力だった。
「今のを連発されたら、何度もこの人数を守り切るのは難しいです」
「そうね、少し人数を減らさないと…。ザドル、リザードマンなら老齢でも子供でも、レクイ湖を泳いで渡れるわね?
私たちで道を切り開くから、誰か非戦闘員を連れてレクイ漁村まで避難してちょうだい。
それと申し訳ないけれど、あれほどの魔法の使い手を相手にして、建物への被害まで気にする余裕は無いかもしれないわ。ごめんなさい、今のうちに謝っておくわ」
「泳ぎなら問題ありません。怪我人や病人も連れて行けます。それに私たちだけでは到底抗えない相手ですから、命があるだけ良いというものです。このうえ建物の被害に文句など言いません」
「ありがとう。ではラジク殿に先頭を、ミリアとモルド殿は左右を、ジグとアマリアはそのまま皆と一緒に移動しつつ必要に応じて盾や治癒を、私が殿を務めます!」
「「「了解!」」」
「「はいっ!」」
僕たちはアルテミアの指示のもと移動を開始した。炎に巻き込まれないために1度引いた、大量のモンスターが再度群がってきたが、数は多くてもほとんどがロックウルフ程度のモンスターだったので、今の僕はもちろんアマリアでもどうにか倒せる強さだった。
しかしそれよりも断然厄介だったのは、林の中からたびたび放たれる高火力の範囲魔法で、それを防ぐために2度、巨大な風の盾を張らなくてはならなかった。
すでに神父の結界もない今、それを2度もまともに防いだことで、僕の魔力はゴッソリと持っていかれた。
どうにかレクイ湖畔まで移動を終えて、リザードマンが一斉に泳いで避難し始める。
「戦士達の半数は、非戦闘員やレクイ漁村を守るために向こうへ渡りなさい。
そして万が一あちらに敵の手が及んでも、漁村にいる衛兵と協力して死守するように」
「し、しかしアルテミア様、我々の集落を守るための戦いなのに、それでは皆さんの負担が…!」
「民を守るのは騎士や治癒術士の勤めです。それに他の者もお人好しなのよ。他人を守るのに躊躇する者は…ふふっ、やっぱりいないのよね」
アルテミアの言葉にモルド神父や僕、そして戦闘は怖いはずのアマリアまでもが、そうだと言わんばかりに頷いた。
「時間がないから早く行きなさい。そして敵の正体が分からない今、万が一に備えてあちらに渡ったらリッツソリスに早馬を出させて、この攻撃のことを連絡するようにと、私の名で伝えなさい。それが今、私がリザードマンに最も望む仕事です」
「わかりました…ご命令の通りにいたします。皆様もどうかお気を付けて!」
そうしてリザードマンの大半を送り出し、僕たちは反撃に出る。
一気にモンスターを蹴散らして押し戻していると、林の中からベキベキと音を立てて、金棒と盾を持った鎧姿の巨大な人間らしいものが現れた。その巨人の額には普通の人間とは違って、第三の目があった。
「あれはジャイアントかしら?北の山脈の向こうにいるはずの巨人族が、なぜこんなところに…」
「いや、違うよアルテミア。あの三つ目は恐らく、火山の近くに棲んでいるサードアイズ・ジャイアントだ」
「いずれにしても、なかなか目にする機会のない相手だな。しかしそれよりも俺が気になるのは…」
「うむ…俺もラジク殿と同様、あの巨人の肩に乗っている者の方が、更に危うい気がする」
現れた巨人の肩には普通の人間サイズで、ローブを纏い深々とフードを被った者が立っている。ザドルの言っていた魔導師だろうか。
「お前は何者だ。そろそろ正体を明かしても良いだろう?」
「いやラジク殿、向こうから明かすまでもない。こいつは魔族だ。それもこのやり口には覚えがある。ルナメキラの配下の者だろう」
「ふふふ、やはり何度もルナメキラ様との戦いを経験していると、流石に愚かな人間でも分かるのかしら」
モルド神父に指摘されると、相手はそう言ってローブを脱ぎ捨てた。
すると妙に露出度の高い鎧と赤いマントを身に着け、頭にはワインレッドの長い髪と、ルナメキラと同じような黒く巻いた山羊のような角をもつ、女の魔族が現れた。
「私は魔王軍四天王である、ルナメキラ様に仕えるグレイジーナ。せっかく進めていた主の計画を邪魔するお前達は、ここで始末してやるわ!」
グレイジーナと名乗った魔族はそう言って、三つ目巨人の肩から飛び降りると炎の魔法を放つ。同時に巨人も金棒を振り上げてこちらに襲い掛かってきた。
『エル・アクアシールド!』
『エル・メニア・ヴォルガノン!』
レストミリアの水の盾が炎を防ぎ蒸気が立ちのぼる。巨人にはモルド神父の溶岩球が複数飛んでいくが、いくつか体に受けつつもそれを巨人は金棒で打ち払い、更に水の盾を破壊した。
鎧を着込んでいるとは言え、ルナメキラでさえダメージを受けていた、モルド神父の溶岩球を受けても平然としている巨人を見て、僕は驚愕した。
「ぬぅ、やはり巨人族には魔法が効きにくいか…」
「巨人族の魔法耐性は、数ある種族の中でもトップクラスだからね。それに加えてあのサードアイズ・ジャイアントは、火山に棲んでいるから火属性には特に強いんだ。
しかも凄まじい力だよ、無理して耐えずに盾を放棄して良かった」
「巨人には私とラジク殿で物理攻撃を主体に当たるわ。ミリアとモルド殿は魔族の相手を、ジグとアマリアは必要に応じて双方の支援をお願い!」
アルテミアの指示のもと、僕たちは本格的に戦闘を開始した。
魔法より物理攻撃が効きやすいらしい巨人族ではあったが、そもそもそれは2つの攻撃方法を比較した時の話であって、物理攻撃が特に有効なわけではない。
そのうえ三つ目巨人は鱗の鎧を纏っているので更に防御が堅く、ラジクの斬撃やアルテミアの矢は、なかなか盾の守りを突破することも、鎧を貫くことも出来ずにいた。
「あの鎧と盾は一体何で出来てるんだ?異常に硬いぞ」
「たしかにそうね…。竜族の鱗でも使っているのかもしれないわ」
「それはかなり厳しいな。竜の種類によっては本当に刃が通らんぞ」
「それでもやるしかないわ。盾で防御した隙に鎧の継ぎ目や、関節部分を狙って攻撃しましょう。ジグは弓で頭を狙って!」
そうしてラジクが斬り込み、それを三つ目巨人に盾で防がせては、その間に僕とアルテミアが矢を放つ。
巨人の持つ2つの目はラジクに向いているが額の目だけはこちらを見ていて、その眼が光ると僕の放った矢は空中でいきなり炎上し、巨人に届く前に燃え尽きた。
しかしラジクの攻撃を盾で防ぎ、僕の矢を第三の目で対処した結果、アルテミアの矢は防げなかったようだ。放たれた矢は次々と巨人の体に突き刺さっていた。
鎧の関節部分などにある、ごく僅かな隙間に見事に命中させる腕前は流石としか言いようがない。現状の僕の腕では、あのような真似は絶対に出来ない。
三つ目巨人の封じ込めに成功し、あとは削っていくだけかと思っていたが、アルテミアの矢を立て続けに受けた三つ目巨人は、属性身体強化によって炎を纏い防御力を上げた。
巨人と斬り結ぶラジクはその炎によってジリジリと焼かれ、僕の矢はもちろんアルテミアの矢でさえ、なかなか巨人にダメージを与えられなくなってきた。
「これじゃ埒があかないわ!どうにかして大きいのを叩き込んであの守りを突破しなくちゃ、ラジク殿も保たないわ」
「ジグ、お前の糸であれを拘束できるか試してみてくれ」
「はい!」
僕はラジクの言葉に従い、糸を放って巨人の拘束を試みる。
糸は巨人の体に巻き付くと、一瞬縛り付けるような手応えを感じたがすぐに燃え尽きた。
「やはり糸では火に弱いのか、燃えちゃいますよ」
「お前の糸は普通の糸では無いだろう!?魔力の糸なんだから込めた魔力量で強度は変わるはずだぞ」
「あ…それもそうでした。やってみます」
今度は風の魔力を思い切り込めた糸を無数に放つ。
すると今度は燃やされることもなく巨人の体に巻き付いて、見事に拘束した。
正確に言うと、縛るどころか鎧の隙間に入り込んで締め上げた糸は、巨人の体に深々と食い込んでいき、切断こそしなかったものの重傷を負わせた。
かなりの斬れ味を誇る風の糸だが、そこは流石と言うべきか魔法耐性の高い巨人族の、頑強な体ならではの耐久力だ。
未だ身体強化で炎を纏っている巨人だが、主に肘や膝、腹部や首から出血したまま糸で拘束されて、その場に膝をついている。
「お、お前の糸は本当に常識から外れたものだな…」
「えぇ、全くその通りだわ…っと、感心している場合じゃないわ!今のうちにトドメを刺しましょう」
ラジクとアルテミアの2人はすぐに魔力を溜め始めた。
それぞれが風属性持ちなので、体の周りに風が渦巻いていく。
「はあぁっっ!『嵐穿弓!』」
『風之太刀!』
アルテミアの放った竜巻のような矢が、腹部にあった鎧の隙間に命中し、そのまま鎧を破壊しつつ巨人の体を直径数十センチにわたって穿った。
クロコサーペントを易々と貫通したどころか、吹き飛ばした威力の嵐穿弓でも、属性身体強化の炎と魔法耐性の高い巨人族の体を貫くのは、至難の業だったようで致命傷には至らなかった。
その直後にラジクは、魔法剣の刀身から更に伸びる風の太刀を横薙ぎに振るうと、アルテミアの攻撃によって纏う炎を弱めていた巨人の首を、炎と共に切り裂いた。
「ふぅ…。このような相手とは1人で戦ってみたいものだが、今はそのような時でもないし、次の機会にするとしよう」
「こんなもの、そうそう1人で戦える相手じゃないわよ。それにしてもこれほど苦戦せずに倒せたのは、かなり嬉しい誤算ね。ありがとうジグ、助かったわ」
「師匠の助言のお陰ですけど、役に立てて良かったです。
そう言えば師匠、新しい技を編み出したんですね?」
「あぁ、黒骸王との戦いの時にな。風之太刀と言う名前にしたのだ。今までよりも存分に敵を斬れる良い技だ」
「そうなんですか。凄い斬れ味でしたし、良かったら今度教えてくださいよ」
「まぁそれは構わんが、まずはモルド殿たちと合流するとしよう。相手が魔族なら、あちらの方が苦戦している可能性が高い」
僕たちは回復薬を飲んでから、林の中に場所を移していたモルド神父達の元へと急ぐことにした。
今回はだいぶ短いですがここまでにします。
後ほど加筆するか、そのまま次話にいくかもしれません。
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9/30に加筆しました。
リザードマンを送り出して、戦闘を開始した辺りから修正・加筆してあります。




