第83話 巡回の旅路 その1 初の遠出と長旅
結局は過去のモルド神父と同じ失敗をして、酷い目に遭ったジグでしたが、薬と回復魔法によってそこまで大事にはなりませんでした。
申し訳ございません!結構悩んだのですが、やはり本編に入れたいと思って、少し長めのお話を書き始めてしまいました…。
それに伴って前話のタイトルも変更します。
本当にこめんなさい…orz
痛みが出てから二日ほどが経って、僕の腕はようやく治った。薬と回復魔法によって騒ぐほどの痛みではなくなったものの、初日の夜は痛みで寝ていられず大変だった。
夜中でもたまに起きてきては、腕に回復魔法をかけてくれたアマリアには、いくら感謝しても足りないくらいだ。
今は痛みも無くなって、やっと自分で食事が出来るようになった。
「はぁ…あの地獄からようやく解放された。本当に助かったよアマリア」
「ふふっ、治って良かったわ。今回の教訓を生かして、次からはもっと人の忠告には耳を傾けることね」
「それは確かにそうなんだけど、前兆が無かったから防ぎようが無かったんだよ…。
まぁ結局のところは、モルド神父の見ているところでやらなかったのが悪いんだけどさ…」
食堂で朝食を食べながら2人で話していると、モルド神父がやって来た。
「もう腕は良いようだな」
「はい、おかげさまでなんとか」
「ならば問題無いか…。アマリアは今日の予定は?」
「ジグの腕が良くなったのなら、私はいつものようにミリアが迎えに来たら、練兵場に行って訓練になると思いますけど…」
「モルド神父、どうかしたんですか?」
「実は2人を連れて、しばらく結界を張りに各地を回ろうかと思っている。
これはお前達の訓練も兼ねたものなので、俺とレストミリア殿、それにアルテミア殿が同行する」
「急な話ですけど、一体どうしたんですか?」
「理由としては、いつも各地を回っているシスター達にも纏まった休みを与えたいこと。
これまで近場の集落しか祈りに行っていないアマリアにも、各地の村のことを知る機会を与えたいこと。
その辺りについて最近考えていたのだが、ちょうど負傷者の治療も片付いて、レストミリア殿も同行可能であることと、折良くアルテミア殿が、首都周辺にある村々の視察の任務を受けたことなどから、3人で話し合って決めたのだ」
モルド神父はこれまで過保護と言えるほどに、教会以外の場所へアマリアが行くのを警戒していたが、黒骸王との戦い以降、僕やアマリアの考えを尊重し、子供を心配する親のような視点から、少し見方が変わってきているようだった。
今回の話は、日頃から自分だけ遠くの村へ祈りに行かないことを気にしていたり、街の外に対して興味があるらしかった、アマリアのことを考えての遠出ということだろう。
しかし、何か忘れているような…。頭の片隅に何かが引っかかっている。このモヤモヤはなんだろうね…?
僕はそんなことを考えているが、隣でモルド神父の提案を聞いたアマリアは、とても喜んでいるので気にしないことにした。
モルド神父は僕たちに準備をするように言うと、自分も部屋へと戻っていった。
「いつも外に行ってみたいと言ってたし、良かったねアマリア」
「えぇ。神父様は私のことを考えて、守るためにそうしていたことは分かっているけれど、それでも興味を持たずにはいられなかったし、いざ行けるとなるとやっぱり嬉しいわ」
満面の笑みでそう話すアマリアを見ていると、自分まで嬉しくなってきた。
準備を終えて待っていると、レストミリアとアルテミアが迎えに来た。僕たちは教会の外に出ると、いつもの定位置にはラジクがいなかった。
「ミリアさん、アルテミア様、おはようございます。あれ、珍しく師匠はお休みですかね?」
「あら、ラジク殿ならさっきすれ違ったわよ?身体強化を全開にして、もの凄く急いでいたわね。団長から呼び出しでもあったのかしら…」
「あぁ、ラジク殿の考えなら大体わかるよ。
そりゃあこんな楽しそうなお出かけなのに、自分は置いてけぼりにされると分かっていて、あの人が大人しくしているとは、私には思えないよ。
ふふふっ、それにしても必死に走っていたね」
真面目に考えるアルテミアとは対照的に、レストミリアはニヤッとしながらそう答える。
あぁ、さっきのモヤモヤの正体が分かった。3人の中に師匠が入っていなかったから、僕たちが遠出するとわかれば、いじけるのではないかと危惧していたのだ。
「さて…では今回はアルテミア殿の任務に同行する形で我々もついていき、各地で祈りの結界を強化しつつ、その土地のモンスターの間引きや、病人や怪我人の治療も行い、日々の訓練の成果を見せてもらうとしよう」
「アルテミア、今回はどういうルートで回るんだい?」
「特に順番は定められていないのだけれど、そうね…まずは西のトスウェの集落と監視塔の確認、そのまま南の大農地沿いに大草原を南下して、南のスウサの集落と砦の様子を見てから、街道を少し北上してトイスを確認。
その後はソリス川まで行ってから船に乗って、レクイ湖の漁村まで行くわ。
この辺りは最近まで、ダリブバールの盗賊団の影響があった場所だし、リザードマンの集落もあるから要注意ね。
ただし、リザードマンの長との話し合いには王からの言伝を受けた、私だけが行くことになっているから、あなた方にはその間、レクイ漁村にいてもらうことになると思う。
それが終われば交易都市ダリブバール、エルヴィレの村、エルフの里、イスフォレの村と狩猟集落を回って、リッツソリスに帰る予定よ。
今回の任務の主な目的は、リザードマンとの話合いと、復興途中のエルフの里や、ダリブバールの視察ってところね」
「じゃあ日程としては、徒歩ならスウサかトイス辺りで一泊、そのあとダリブバールかエルヴィレで一泊、更にエルフの森で野営、里を確認したら帰り道も森で野営、それからイスフォレで一泊して、ようやく街に帰ってくる感じですかね?」
「まぁ普通にいけばそんな感じね。でも私達の場合は合間に祈りや、モンスターの間引きを兼ねた訓練を挟むから、トスウェのあとに草原で狩りをして、スウサで一泊。
翌日はスウサの大草原で狩りをしてから、砦の視察とトイスに行って一泊。
更に翌日は湖に向かうけれど、その前に川沿いの沼地で狩りをしてから、船に乗って漁村で一泊。
翌日、私がリザードマンの集落へ行っている間に、あなた方は漁村周辺で狩りをしてから合流して、ダリブバールか出来ればエルヴィレで一泊。
翌日はダリブバールの森で狩りをしてから、エルフの大森林で野営。
里の視察を終えて、もし里長から許可が下りるか要請があれば、大森林でもモンスターの間引きを行うわ。
それによっては里で一泊、無ければ帰り道の森で野営。あとはイスフォレ方面だからモンスターも弱いし、ジグの言った通りになりそうね」
「ふむ、予定は把握した。準備も出来ていることだし、早速出発しよう。あまり遅れれば夜道を歩くことになりかねないが、出来ればそれは避けたい」
「そうね、じゃあ行きましょうか。
道中でもし何かあればジグは私が、ミリアとモルド殿にはアマリアの守りを任せるわ。
普通に戦う場合は2人に前衛を任せて、ジグは中衛、私とアマリアが後ろで良いかしら?」
「そうだね。私もそれが良いと思うよ」
「うむ、俺も異論はない」
「僕は先生方に任せます」
「わ、私もそれで良いです……あ、ラジク様が戻ってきましたよ?」
話が纏まったところで、ラジクが息を切らせて戻ってきた。案の定、旅支度をしている。
「ぜぇ、ぜえ、はぁ、はぁ…」
「師匠、頑張りすぎですよ。どれだけ急いだんですか…」
「はぁ、はぁ、ふぅ…俺も同行する。代わりの騎士は手配したので、もうすぐ着くはずだ」
「ラジク殿、もしかしてそのためだけに、街の中をあんなに必死で走っていたの!?」
「いつものことさアルテミア。彼はそういう人なんだ。それに人数が増えるなら、それはそれで楽しくて良いじゃないか」
「いつものことって…。まぁ上からの許可が下りてるなら問題は無いし、何かあってもラジク殿がいるなら心強いけど…」
ラジクの行動や、レストミリアの言葉に戸惑いつつ、アルテミアはモルド神父を見る。
「いつものように代役がいるのなら、教会の守りにも問題無いので我々も構わない」
「そうですね、いつものことです。
師匠が走っていったと聞いたときから、こうなるのは分かっていましたし、逆に一人だけ置いていくのも弟子としては気の毒だったところです」
「そんなに口を揃えて言うってことは、本当にいつものことなのね…。
まぁ良いわ。予定は歩きながら説明するから、出発しましょうか」
モルド神父と僕の意見を聞くと、アルテミアは納得したらしい。
こうして僕たちは、訓練を兼ねた各地の巡回をすることになった。
タイトルの初の遠出と長旅は、アマリアにとっての初めてですね。当初は閑話として短めに、近くの村へ行くアマリアの話を考えていました。
しかし他のシスターとは仕事内容が違うことに、ずっと悩んでいたモヤモヤの解消と、いつも街と教会くらいにしかいないアマリアを、なんとか外に連れ出したいと考えた結果、第一部で出てきた各地のまとめとその後の変化に加えて、主人公の成長を描きつつ新しい力を試し経験を重ねる場として、本編と結びついてこんな形をとることになりました。
そして相変わらず、こういう機会を逃さないラジクも同行することに。
ラジクの過去などについても、何処かで挟みたかったのですが、なかなか機会が無くて、そのうち外伝枠を別に用意して書きたいところです。




