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転生の糸使い [830万PV突破・400万字、900話以上の大ボリューム!]  作者: 青浦鋭二
第1部 教会の孤児編 (襲撃・修行・エルフの里・黒骸王・巡回の旅・王都攻防戦)

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第82話 新たな力の使い方

身体を休めたジグは、新しい魔力の使い方を学んでいきます。


第二部に向けて、ここからは冒険者への道と題し、新たな力の使い方を増やしたり、更に力をつけていく様子を描いていく予定です。

途中で何か思いついて、予定が伸びたらごめんなさい…。

早速翌日に予定変更してしまいました!申し訳ございません。

 更に二日ほどが経って身体の痛みもなくなり、僕は訓練を始められるようになり、まずはモルド神父に、新しく得た魔力の扱いについての訓練をしてもらうことになった。


「基本的には普通の魔力と変わらん。気をつけるべき点としては、魔力に余裕があっても疲れや痛み、違和感を覚えたらすぐに止めることだな。

 そうして身体に慣らしていけば、これまでの魔力と併用したり、糸以外の使い方を出来るようになるかもしれん」


「まずは無理せず身体を順応させて、その後にどう使うかは僕次第って事ですね」


「うむ。では初めて身体強化の訓練をしたときのように、新たな魔力で身体強化をして、その辺をしばらく走ってみろ」


「ついこの前は出来なかったのに、そんないきなり身体強化が出来るとは思えないんですけど…」


「今まではまぐれで発現していたから扱い方もよく分からなかっただろうが、あれから一週間近く経って、お前の魔力は変質してきているはずだ。

 慣れていけば完全に一体化して、自在に扱えるだろう。まずは試しにやってみろ。ダメだったなら、基礎からやることにする」


 僕は言われた通りに桜色の魔力で身体強化してみる。すると少し手こずったが、割とすんなり身体強化が出来た。


「あれ、出来ちゃいましたね…」


「少しずつ魔力が混ざり始めているのだろう。出来たなら、予定通り走るように」


 僕は指示の通り、孤児院の丘の下にある畑の周りを、ゆっくりと周回する。魔力の使い方を何も知らなかった時のことを思い出して、なんだか懐かしい感じだ。しばらく走ったが特に痛みなどは無く、そのまま休憩に入る。


「痛みが出たり変な感じもしませんし、思ったよりも順調ですね」


「ふむ、初めて魔力が発現したのがルナメキラの時だからな。もしかするとあれ以降、知らないうちに少しずつ身体が順応し始めていたのかもしれん。しかし油断は禁物だ。休憩後も気をつけて走るように。

 それと、同じところを走っていてもお前は飽きるだろう。次はイスフォレの森まで行き、ついでに少し狩りをして、皆の夕飯の食材調達を手伝うとしよう」


「そんなことを言って、実はモルド神父も身体を動かしたいのでしょう?」


「ぬぅ、バレたか。足の具合も良くなってきたし、少し運動したくてな」


 僕たちはラジクに留守を任せて、森へと向かう。


「師匠もそうですけど、あんなにボロボロだったのに一週間もあれば治るんですから、治癒術士の力はもちろんのこと、2人の身体も凄いですよねホント」


「なに、鍛えていればお前もいずれそうなる。安心しろ」


「いや、僕は人間ですので、それはさすがにちょっと…」


 そう言うと、片眉を上げながらモルド神父がこちらを見る。僕は危険を察知して両腕を十字に構えて頭上に掲げると、ほぼ同時にゲンコツが落ちてきた。


「ほぅ…さすがにカルスト殿が合格を出しただけあるな?」


 ガシィッと防御されたゲンコツを見て、モルド神父はニヤリと笑う。神父のゲンコツを初めて防ぐことの出来たことに、自分でも少し驚きながらニシシと笑い返すと、すかさず足払いをくらって地面に倒れた。


「いたた。モルド神父、そんなのアリですか?」


「ふっ、攻撃は一度とは限らないからな、油断するな」


 ゲンコツを防いだ程度で満足するなということらしい。今度からは防いだら距離をとることにしよう。


 そんなやり取りをしているとイスフォレの森に到着した。モルド神父も少し離れたところで狩りを始めたので、僕も身体強化をして気配を消しながら、森の中をゆっくりと走る。

 身体強化を桜色の魔力で行い、風の刃を自分の魔力で放つのは問題なく出来た。

 しかし攻撃魔法にはなかなか使えない。風の魔力イメージと、桜色の魔力の糸のイメージが、混ざらずに反発しているような感じだ。


「そういえば糸の方には光属性が含まれてたかも…。それなら光属性とは相性がよいのかな?」


 巻き付いた糸が光属性の魔法を当てたときのように、黒骸王の身体を浄化して黒い煙を上げていたのを思い出す。


「でも回復魔法には使えなかったし、意味がわからないよねぇ。うーん…」


 現状、桜色の魔力は糸以外の形状をとれない。でもその糸に光があったということは、元々そういう性質なのか、それとも糸が作られる過程で混ざったのか、はたまた糸は独立していて、更に表面を覆っているのか…。


 僕は麺を作るように頭の中で魔力をこねて、桜色の魔力に光を加えたり、出来た麺に光属性を塗ったりして考える。


「よし、とりあえずは思いつくものを試してみるか!」


 まずは指から出して垂らした糸を覆うように、光属性を重ねてみる。そうするとゆっくりではあるもののジワジワと染みこんでいき、糸に光が付与される。

 しかしこれでは遅すぎる。それに考えなくても出来ていたのだから、これは多分違う。


 次に魔力を練り上げるときに光属性も一緒に混ぜ込む。風属性ほどの反発は無いが、こちらもスムーズにいかない。


「覆ってもダメ、混ぜ込んでもダメか…。

 そもそもまだ魔力に慣れていないから、試すには早いのかなぁ?」


 もっとこう、細いものにスーッと通っていくようなイメージ……例えばホースの中を水が通っていくような感じでやればどうだろう。

 僕は再度糸を垂らして細い糸の中に、更に極細の空洞をイメージして光属性を通すと、今度はすんなりと染まった。


「おお、これなら早い。そうか、練り込んでも僕のイメージだとムラがあるし、表面を染め上げるにしても麺のイメージだと、ゆっくり染みこむ感じだから時間がかかるんだね。

 逆にホースやチューブ、血管みたいなものだと、中身が滞りなく流れるイメージだから、染まるのも早いのかぁ…」


 僕は前方に手を振って糸を放つ。それとほぼ同時に、先端を追いかけるように光属性を込めると、糸は問題なく染まった。

 風属性でも同じように試すと、今度は何の抵抗も無く糸は染まり、しかも魔法剣のように巻き付いた木を一瞬で両断した。


「おおお、これは凄い。魔法剣ほど魔力を使わなくても切れ味抜群だ!」


 次に僕は木に向かって風の糸を放つと、巻き付けるのではなく先端を突き刺すように伸ばした。

 すると糸はそのまま木を貫いて、極小の穴を無数にあけた。


「先端までしっかり染めていれば、剣の役割も果たせそうだね…」


 糸に属性を通せば、攻撃に関しては使えることがわかった。しかし桜色の魔力は量が多いので、何としても回復魔法に使いたい。


「いっそのこと光属性じゃなく、糸の中にそのまま回復魔法を通してみるかな…」


 僕は剣で手の平を少し刺してから、糸に回復魔法を通して傷口に押し当ててみた。

 すると痛みはすぐに収まり、糸を消すと傷は綺麗さっぱり無くなっていた。


「おお、これが出来たって事は魔法を通した糸なら、魔力をこれまでよりも節約したうえで、同じように使えるよ。いやっほう!」


 拳を突き上げて喜んでいると、両腕が急激に痛み始めた。


「痛っ、あれ?なんかどんどん痛みが…いたたた!うわっ、なんか滅茶苦茶痛いっ!モルド神父ーーっ!」


 あまりの痛みにモルド神父を呼んでのたうち回っていると、少ししてから神父がやってきた。


「ああ…注意していたのに、やはりお前もそうなったか。何か思いついて成功したものだから、調子に乗ってあれこれ試したのだろう?」


「うぐぐ…は、はいぃぃっ!面白くなっちゃって、色々と試していたらぁぁ痛ぁっっ!」


「徐々に慣らすべきところを、一気に使用したことで許容範囲を超えて、恐らく拒絶反応が出ているのだ。

 どの程度かはわからんが、下手をするとこれから数日はそのままだ。食事も睡眠もまともに出来んぞ」


「そ、そんなっ!!何か、ぐっ…、何か方法は無いんですかぁっ?!」


「それはわからん。俺の時は三日ほどだったが、耐えるしかなかったからな。

 帰ったら回復魔法をかけてもらったり、回復薬を飲んでみるしかあるまい。

 治る保証は無いが、レストミリア殿の眼なら何か分かるかもしれん。急いで街に戻るぞ」


「は、はひっ!」


 激しい痛みを堪えて、僕は全力の身体強化で街へとすっ飛んで行き、負傷者の治療を終えていつものように練兵場で訓練をしている、レストミリアとアマリアの元へと向かった。


「ミ、ミリアさぁぁんっ!」


「うわっ!ビックリしたなぁ。ジグ、そんなに慌ててどうしたんだい?」


「うぐぐ…新しい魔力の扱い方を練習していたら、調子に乗りすぎて、り、両腕があっ」


 僕の痛がりようにアマリアもオロオロしている。すると、街中でも構わず全力で駆けていた僕を、追いかけていたモルド神父も到着した。


「レストミリア殿、訓練中のところをすまぬ。

 恐らく拒絶反応が出たのだと思うが、何か痛みを抑える手立ては無いだろうか?」


「ちょっと待ってよ…うーん…あぁ、反発している魔力を無理に混ぜようとしたみたいだね。

 腕のあちこちで逃げ場のなくなった魔力が結晶化して、神経にさわっているよ。うわぁ、これは痛そうだなぁ…」


「い、痛そうじゃなくて痛いんですよぉっ」


「魔力の結晶化なんて珍しい症状だから、専用の薬の在庫なんて今は無いよ。

 あ、でも体内の魔力の流れをスムーズにする薬があるから、それを飲めば結晶化した魔力が溶けるのも早まって、多少は早く治るとは思うけど、それでも治るのは明日以降になるね。

 薬を持ってくるので、そのあいだアマリア様は回復魔法をかけてあげてください」


「あ、明日以降までこの痛みが…」


 僕は絶望した。もういっそのこと腕を切り落としてしまいたいくらいだ。しかし両腕がこの有様ではそれも出来ない。


「さぁ、回復魔法をかけるわよ。大人しくしていなさい」


「お、お願いしますっ」


 アマリアが腕には触れずに回復魔法をかけてくれると、痛みは少し和らいだ。


「痛いけど、さっきよりマシになったよ。ありがとうアマリア…いやアマリア様」


「…ジグまでそんな呼び方をするようになるのなら、もう回復してあげないわよ?」


「痛みが酷すぎて、それを和らげてくれるアマリアの後ろから後光がさしてるように見えたものだからつい。ちょっとミリアさんの気持ちがわかったよ。

 でも回復してくれないのは困るから、普通に感謝するに留めるよ…」


「よろしい。なら治るまで、ちょくちょくかけてあげるわ」


 それからレストミリアが薬を持ってきてくれて、ちょうど時間が来たのでアマリアも一緒に戻ることにした。

 モルド神父がいるから教会まで送る必要は無いのだが、やはりレストミリアもついてきた。


「薬は朝晩飲むのと、痛みが酷いときにはアマリア様の回復魔法をかけてもらうようにして、後は安静にしてると良いよ。

 それとジグの腕が良くなるまで、アマリア様の訓練は教会ですることにしましょう。練兵場では恐らく気になって身が入らないでしょうし、教材にも事欠かないでしょう…」


「ありがとうミリア。私もその方が良いわ」


「はい…わかりました。ミリアさん、ありがとうございます…」


「何か問題があったら遠慮なく呼んでくれて良いからね。じゃあお大事に」


 哀れんだ眼で僕を見ながらレストミリアが言うと、アマリアも了承し、痛みに耐えるのに疲れていた僕もお礼を言うと、レストミリアは街へと戻っていき、僕たちも教会へと入っていく。

 ちなみにラジクは騎士団の用事で早めに戻ったらしく、代わりの騎士が立っていた。


「明日はアルテミア殿が来る予定だったが、訓練はしばらく休みだな」


「すみません…」


「まぁ仕方がない。大人しくしておいて、早く治すことだ。しかし、やっと出られたというのに、またベッドに逆戻りだな」


「こればかりは自業自得なので、どうしようもないです」


「さぁさぁ2人とも話してないで、ジグはさっきの回復魔法で痛みが引いてるうちに、食事と寝る準備を済ませておいて。あとからもう1度、回復魔法をかけにいくからね。

 神父様は狩ってきた獲物を、早く持っていってください」


 僕はアマリアの言葉に従って動き、痛みに耐えながら、またベッドで過ごすことになった。

やっと抜け出せたのにモルド神父の注意を忘れて、調子に乗りすぎた挙げ句に激痛に苛まれ、ベッドに逆戻りのジグでした。

レストミリアやアマリアがいるぶん、モルド神父の時よりはマシなのですが、それでも涙目です。

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