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転生の糸使い [830万PV突破・400万字、900話以上の大ボリューム!]  作者: 青浦鋭二
第1部 教会の孤児編 (襲撃・修行・エルフの里・黒骸王・巡回の旅・王都攻防戦)

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第77話 閑話 後衛の仕事と魔女の至福

今回は騎士団長やラジクの戦いの少し前、ラジクと共に街を出て、後衛の治癒術士の部隊に加わってからの話を、ジグ視点で。


一応本編と閑話の違いとしては、黒骸王との戦いを話の主軸にしているので、主人公の話でもこちらを閑話として位置づけしております。

そのためたびたび閑話が挟まる形になり、読みにくい部分が多々あるかもしれません。ご了承ください。

 カルスト兵士長の言葉もあって、僕とアマリアは師匠に付いていき、治癒術士の手伝いに行くことが許された。

 カルストや兵士達は南門に戻っていき、僕達は急いで北門に向かっている。

 急いでいるので身体強化で移動中だ。ちなみに身体強化がまだ使えないアマリアは、僕に背負われている。

 騎士様の手を煩わせるなんて!とアマリアが真っ青になって言ったためだ。


「お前達が大人しく避難しておらず、後衛にまで出てきてると知れば、多分俺はモルド殿に、下手をすればレストミリア殿にも怒られるのだろうなぁ…」


「モルド神父はわかりますけど、ミリアさんに関しては、アマリアから言ってもらえれば大丈夫ですよ!…たぶん。

 それにワガママを言ったのは僕達ですし、師匠が怒られる前には必ず、僕にゲンコツが落ちてるはずですから、モルド神父もそこまで怒らないはずです。

 ああ、でもそれなら先に師匠に怒られてもらった方が、ゲンコツの威力も多少は落ちるかなぁ…?」


「こら、ジグったらもう!その時は私から神父様やミリアに言いますから、あまりラジク様は気になさらないでください。

 神父様に関しては焼け石に水かもしれせんが…」


 ラジクがガックリうな垂れてそう呟くので、僕達は慌ててフォローのようなものをして、そうこうしているうちに北門に到着した。


 そこはまさに治癒術士たちの戦場だった。

 前線の戦いで負傷した騎士だけでなく、先のアンデッドの軍勢によって、街の衛兵や市民からもたくさんの怪我人が運び込まれていた。


「僕達のいた南門はスケルトンの強さもそれほどじゃなかったけど、中心部の辺りのは手強かったから被害もこんなに出てたんだね…」


「うむ、俺達もかなり急いだんだがな。同時多発的に出現されては、完全に防ぐのは無理だったのだ」


「こうしちゃいられないわ。ジグ、私達も加わらなくては…」


「よし、では俺は団長の部隊に合流して一帯を掃除してから、前線の救援に向かう。お前達はこれ以上、絶対に前線に近付かないようにな」


「わかってますよ、僕達の仕事はここにありますから。師匠こそ本当に気をつけてくださいね」


「ラジク様、ここまで連れてきてくださり、本当にありがとうございます。皆様のご武運をお祈り申し上げます」


 そうしてラジクは僕の頭をポンポンと叩きながら、アマリアにくれぐれも目を離さないようにと僕の監視を頼んで、近くに居た治癒術士に事の次第を簡単に説明して案内を頼む。

 そしてこの辺りにいる、街の内部よりも遥かに強いアンデッドの軍勢を相手にしている、騎士団長の部隊へと向かっていった。…解せぬ。


「アマリア様!話は聞いておりますが、本当に無茶をなさって…」


 案内されて隊を率いる副長の元に行くと、以前会ったことのある治癒術士で、名前はクロエと言うそうだ。

 彼女は治療のあいだに回復薬を飲んで、ちょうど休憩しているところだったらしい。


「クロエ様、危険は承知の上です。ですがただ避難しているだけでなく、私たちにも出来ることをしたいのです」


「レストミリア様からも聞いていましたが、本当にマリア様に似ていらっしゃる…。

 それにこれはマリア様の望みでもありましたね。

 ならば当然、私も協力いたします。

 …そ、それからアマリア様、わっ、わわ、私のこともどうかレストミリア様と同様に、くっ、クロエと呼び捨てになさってくださいませ…!」


 クロエは、アマリアの強い意志の宿った赤い瞳を見ると懐かしいような、少し泣きそうな表情をした後に、ガラッと表情を変えてウットリした顔で、自分のことも呼び捨てにしてくれと言い出した。


 感動的なシーンが台無しだよっ!


 レストミリアの行動によって、ドン引きするのに慣れているはずのアマリアも、このタイミングでそんなことを言われるとは思っていなかったらしく、不意を突かれて絶賛ドン引き中である。


「えっと、クロエ様。ミリアさんも最初はそうだったんですけど、仲良くなれば徐々にアマリアも打ち解けていくと思うので、今すぐに呼び捨てにっていうのは勘弁してあげてください。

 それにあまり最初からゴリ押しすると、アマリアの許容範囲を超えてしまいますから…」


「はっ!まぁ私ったら…おほほほ。申し訳ございません。

 たしかにそうですね。レストミリア様のように、私も時間をかけて…ふふふっ。

 それとあなたも様なんて付けずに、レストミリア様と同じように、気軽に呼んでちょうだいね」


「え…あー、はい。わかりましたクロエさん」


 すでにドン引きからのフリーズをしていたアマリアのお陰で、クロエの説得は上手くいった。

 その後、フリーズから立ち直って再起動したアマリアと僕を連れて、クロエは他の人の治療を近くでしながら、僕達がどの程度まで出来るか確認していた。


 負傷者の中には護聖八騎のヴォルグラントもいた。伝令を出したのは知っていたが、国内トップクラスと聞いている騎士ですら、この状態なのかと改めて思い、前線で戦っているであろうモルド神父やレストミリアのことが、更に心配になった。

 一緒に治療にあたるアマリアも、顔見知りの騎士がいることで一層不安が増したらしく、かなり深刻な顔をしていた。


 僕達の回復魔法を見て、よほどの重傷者でなければ任せられると判断したクロエと共に、僕達は次々と負傷者のもとを回って治療していく。


 しばらくして上空を覆う巨大な光のドームが形成された後、他の騎士達と共に女騎士に担がれたレストミリアが運ばれてきた。

 その顔色は真っ白で、ほとんど意識がないようだった。


「レストミリア様!…すみませんアルテミア様、こちらに寝かせてください」


「ミ、ミリア!!一体何が!?」


「この一帯に現れたアンデッドの軍勢を浄化するために、限界を超えて魔力を使うような無茶をしたのよ。

 一応、応急処置として回復魔法をかけた後に、霊樹の葉を使ったっていう回復薬を飲ませてあるわ。

 それにしても、こんなところに教会のシスターと子供が居るなんて。一体どういうことなの?」


「僕達はミリアさんに回復魔法を習っているので、何か役に立ちたいと思ってここで治療を手伝わせてもらってます」


 僕はレストミリアにハイワーシズの首飾りをかけてから、彼女の治療に集中しているクロエやアマリアの代わりに答えた。さすがに3人もいると邪魔なのだ。


「ってことは、モルド殿やラジク殿の弟子ってあなたの事ね?

 あなたがモルド殿に渡してくれた回復薬には助けられたわ。

 私もそうだけど、ミリアに飲ませたのもそれなのよ。私はアルテミア。宜しくね」


「はい、僕の名前はジグです。あっちはアマリアといいます。宜しくお願いしますアルテミア様。

 それに飲ませたのがあの薬なら効きそうですね。クロエさん、ミリアさんに飲ませた薬は魔力回復に特化したものです」


「そうなの…なら魔力の枯渇に関しては心配無いとして、あとは極度の疲労だけかしら。でもそっちは回復までに時間がかかるわね。

 せっかく休んで顔色が良くなったのに、送り出したら更に悪化して帰ってくるんだから…」


 クロエはそう言って、レストミリアの頭を優しく撫でながら、回復魔法をかけ続ける。


「こんなのミリアらしくないから、早く目を覚ましてっ」


 アマリアも反対側から回復魔法をかけながら、半泣きで言う。


「へぇ…あの子がミリアの言ってたアマリアね。

 真剣にミリアのことを心配しているみたいだし、これなら仕える主君としては悪くないかもね…」


 アルテミアはアマリアを見ながら、小声で独り言を言っていた。

 すると薬や魔法が効いてきたのか、レストミリアが目を覚ました。


「うぅ…ここは…?」


「後衛の治癒術士隊です。レストミリア様、私がわかりますか?」


「意識の確認なのはわかっているけど、私がクロエを忘れるわけ無いだろう?」


「こんなにすぐ無駄口が叩けるなら、もう大丈夫ですね…」


 それからクロエはレストミリアの状態を診ると、もう大丈夫と太鼓判を押し、他の重傷者のところへ行った。


「ミリア、目を覚まして良かったわ。けどしばらくは前線には戻れそうにないわね。

 あなたのお陰でスケルトンは消えて、残りは黒骸王のみのはずだし、あとは私達に任せてゆっくり休むと良いわ。

 もしこれ以上の無理をして茶飲み友達が減ったら、誰が私の愚痴を聞いてくれるのかしら?」


「アルテミア、運んでくれてありがとう。

 たしかにそれは困るだろうし、数少ない友人を悲しませるのも嫌だから、私は大人しくしているよ。

 それと、これはもう私には必要ないから、前線に行くキミが持っていておくれ」


 レストミリアはそう言って、持っていた回復薬をアルテミアに渡した。


「心配しましたよミリア。本当に良かった…」


「ア、アマリア様!何故ここに?それにこの首飾り…。

 もしかして2人とも……ああ、来ちゃったんだね。

 しょうがない子達だ。ジグ、後でモルド殿に叱られるよ?」


 アマリアの姿に驚き、次に見覚えのある首飾りから僕の存在もわかったようで、少しキョロキョロすると、レストミリアは僕を見つけてそう言った。


「僕達だって出来ることがあるなら、魔力の続く限りは助けたいんです。

 それに師匠とクロエさんからはお許しが出ていますし、もう来ちゃったんですから仕方がないですよ。

 いっそのこと僕とアマリアが神父に怒られないよう、どうせならミリアさんも協力してください。

 そうですね…報酬はアマリアの回復魔法と膝枕でどうで『その話乗ったぁっ!』…そ、そうですか。決断が早くて助かります」


 まだ話している最中だったが、レストミリアはもう顔色が良くなりつつあるようだ。そしてゴソゴソと動いてアマリアの膝に頭を移動し始めている。

 僕と共犯のアマリアは、やれやれといった顔をしつつもレストミリアに膝枕をしてやり、追加オプションとして頭を撫でていた。


 あぁ、今のミリアさんにそこまですると、逆に興奮しすぎて身体に悪いんじゃ……あっ、やっぱり気絶した。アマリア成分恐るべし。

 まぁ本人は凄く幸せそうだし、友人の変態っぷりをアルテミア様がこれ以上見ずに済んで、案外良かったのかもしれない。手遅れな気もするけど。

 それにこのまま意識を保ったままだと、昇天しかねないし…。


「ふふふ、ミリアったら…。でも良い顔してるわ。

 じゃあ私はそろそろ戻るわね。それとジグ、ミリアはああ言ってたけれど、この薬はあなたの物だから返すわ」


「いえ、出来ればそれは前線のモルド神父に渡してください。

 もともと回復魔法を使えない神父のために渡した物ですから。

 それに、必要なら他の騎士様も遠慮なく使って下さって結構です」


「そう、わかった。皆の代わりに礼を言うわ、ありがとうジグ。

 アマリアも、ミリアの事をお願いね」


「はい!騎士様もお気を付けて。ご武運をお祈り申し上げます」


「じゃあまたね」


 そう言って手を振ったアルテミアは前線へと戻っていき、その後を追うように、治療や編成を終えた騎士団長やラジクの隊も、前線へと出発していった。

予定ではモルド神父たちの合流までだったのですが、2つに分けることにしました。


戦闘やシリアスな話のあいだには、少しホッと出来るやり取りや、クスッと笑えるものを書きたくなるもので、閑話は書いていて楽しいです。

しかし、あいだに挟むと頭の中の時系列がゴチャゴチャになって、辻褄を合わせるのに苦労します(笑)

もしどこかに矛盾があったら、すみません。

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