第67話 魔女の指導 その2 鉱山の遺跡と浄化実践
引き続きレストミリアの訓練です。
翌日もレストミリアの訓練の日だ。迎えに来たレストミリアに連れられて僕達は今、街の北門にいる。
「さて、今日は街を出て実戦訓練をしようと思うんだけど…やはりモルド殿も行くのかい?」
「うむ。今回は近場だから日帰りになるだろうし、ラジク殿に留守を任せてあるから安心だ。
何かあってもレストミリア殿と俺がいれば、アマリアとジグを1人ずつカバーできるしな」
心配性だねぇ…なんて言いながら、レストミリアがモルド神父に向かって、呆れたような表情を向けているが、モルド神父もレストミリアも、アマリアに対して甘いのはお互い様だと僕は思う。
「それに出掛けるたびに毎回、予想以上の敵と遭遇する奴がいるからな」
「その人は今、教会で留守番をしているはずです」
チラリとこちらを見るモルド神父であったが、僕はその視線を受け流して首を竦める。
「今日の行き先は北の山脈にある大鉱山だよ。
なんでも最近、鉱山の中を掘り進んでいた最中に古い小さな遺跡のようなものが出てきて、そこにアンデッド系のモンスターがひしめいてるそうなんだ。
このままじゃ作業が出来ないと報告が来て、冒険者ギルドに回されるところを、私が解決を請け負ったわけさ」
北門を出て橋を渡り鉱山に向かいながら、レストミリアは今回の目的を説明する。
ちなみにアマリアはというと、滅多に無いモルド神父との外出で素晴らしく上機嫌だ。
僕達の後ろをモルド神父と並んで歩いているが、昨日レストミリアが言っていたように、その身体からは今にも光を放ちそうな勢いだ。
幸せそうで何よりだが、恐らくレストミリアの説明は耳に入っていないだろう。
それにしてもラジクと言いレストミリアと言い、この手の話を持ってくるのが上手なものだ。
まぁ、街や近隣の集落や村の住民の報告は冒険者ギルドにも届くが、兵士からの報告は軍や騎士団の方が先に届くから、仕方がないのかも知れないけど。
「あまり冒険者ギルドの仕事を横取りすると、文句を言われたりしないんですか?」
「そうだねぇ…前にラジク殿やキミが行ったと聞いている、トスウェの盗賊団くらいなら冒険者ギルドの案件だけれど、あれはタイミング的にたまたま騎士団に話が来たらしいよ。
エルフの里やダリブバールの話になると、エルフの方はイリトゥエル様が持ち込んだ騎士団案件、ダリブバールや今回の鉱山の場合は、冒険者ギルドの方でも大きな仕事を抱えている状態での依頼だから、こちらに話が回ってきたんだよ。
だから横取りというよりは、役割分担している感じだね」
「ミリアさん、その大きな仕事とは?」
「フォータルキャビルにグランドシェルが出ていて、街を襲っているそうなんだ。
途轍もなく堅いモンスターだから、今はギルド所属の冒険者の大半が、パーティーを組んで討伐に参加しているらしいよ」
「そうなんですか。それなら文句は言われませんね」
フォータルキャビルはセントリングの南東にある海の玄関口の街で、グランドシェルというのは巨大なヤドカリみたいなモンスターらしい。
国内でも3番目に大きな街で、モンスターを放っておくと交易の妨げにもなる。重要拠点の防衛だと報酬も良いので、冒険者たちがこぞって参加しているようだ。
そんなやり取りをしつつしばらく歩くと、やがて鉱山が見えてきた。目標の遺跡は新たに掘っていたところから発見されたので、あまり深く潜らなくても行けるらしい。
「じゃあ現場に着いたことだし、早速浄化していこうか。私とモルド殿は2人の護衛や支援だからね、基本的には手を出さないように」
「むむっ、そうだったな。ゴホン…ではアマリア、頑張りなさい」
レストミリアが釘を刺すと、僕達の浄化魔法の実戦訓練という本来の目的を忘れて、やる気満々な顔をしていたモルド神父が一歩下がった。
遺跡には鎧や剣や弓、ローブや杖を身につけたスケルトンが大量にいたので、まずはそれらを前衛を僕が担当して敵を阻み、後衛のアマリアが光の盾を張りながら浄化魔法で攻撃することにした。
スケルトンは剣で叩き割って身体をバラバラにしても、すぐにまた姿を元通りにして襲ってくる。
試しに風の刃や魔法剣で斬ってると、再生までの時間は長い気がしたが、結局はまた元通りになった。
「アンデッド系のモンスターは光属性や火属性で浄化しないと、時間差はあっても最終的には再生して、何度でも襲ってくるよー」
僕が色々と試していたのを見たレストミリアは、後ろからそう教えてくれた。
それならアマリアに近付くスケルトンを防ぐのに集中して、倒すのは任せた方が良さそうだね。
「アマリア、弓や魔法攻撃は盾で防ぐとして、近付く奴らは僕がどうにかするから、バンバン浄化しちゃって!」
「わかったわ…『エリア・プリフィクト!』」
アマリアが浄化の範囲魔法を唱えると、辺り一面が眩い光に包まれて、周囲に群がっていたスケルトンが一斉に消滅した。
「ほぅ、これは凄い。アマリアは本当に頑張っているのだな…」
「あぁっ!アマリア様、なんて凛々しく神々しいお姿っ!」
アマリアが魔法を使うところを初めて見たモルド神父は、感心しつつも少し寂しそうな、でも誇らしいような複雑な表情をしていた。
アマリアの成長を嬉しく思うのはもちろんだが、恐らく戦いなど知らずに平穏に過ごしてほしいという思いも、モルド神父の中にはまだ根強く残っているのだろう。
ミリアさんの方は…うん、まぁ、嬉しそうで良かったよ。なんだか前世で見たことのある、男装の麗人が歌って踊る某集団のファンの人みたいだね。
けれど確かに、光の柱の中に立ち両手を頭上にかかげるアマリアの姿は、いつか見た導きの女神が、僕をこの世界に送るときの姿に似ていて、とても神々しく美しかった。
ある程度の浄化を終えて僕達は、一旦外に出て休憩をとり、今度はアマリアが盾魔法で防ぎながら、僕が浄化を行うことになった。
遺跡の入口から奥へと進むと、先ほどとは装備の違うスケルトンが出てきた。
「あれはナイトやスナイパー、メイジのクラスだね。数は少ないけど、さっきのスケルトンよりも強いから、アマリア様は盾魔法に集中して、ジグは片っ端から浄化しないと、前衛のアマリア様が保たないよ!」
「アマリア、厳しくなってきたら無理をせず、すぐに待避するように。一応俺も付いておこう」
レストミリアとモルド神父がそれぞれアドバイスをし、モルド神父は手出しはしないものの、アマリアの盾の中で待機することにした。
「あっ、本当に強いわ!早く倒さないと、長くは保たないかもっ」
光の盾に攻撃が開始されると、アマリアは両手を盾にかざして魔力を注ぎながら僕にそう言った。
僕は慌てて浄化魔法を放つが、一撃では浄化出来なかった。
アンデッド系には光属性なら無条件で効くのかと思っていたが、やはりクラスが変われば魔力量も増えるし、装備などでも魔法耐性が違ってくるらしい。
消費は激しくなるが仕方がないと思い、魔力をかなり多めに注いで範囲浄化を行うと、ようやくスケルトンは消滅した。
「はぁ、戦う前に休憩もしたし、前半よりも数は少なかったけれど、こっちの方が断然疲れたわね…」
「うん、一発で決められないくらいには耐性も上がってて、前半と同じ数がいたら無理だったかもね」
「うむ、しかし2人とも良くやった。特にアマリアは敵を目の前にしても、盾魔法を張り続けられるとは正直驚いたぞ」
「さすがはアマリア様です!私は感動で涙を禁じ得ませんっ!」
「しかし魔力をだいぶ使ったと思うので、2人ともこれを飲むように」
それぞれが感想を言い、最後にモルド神父が取り出した魔力の回復薬を飲むと、次の予定を立て始める。
「さて、この後はどうしようか。形状や構造から推測した結果、小さな遺跡だとは聞いているけど、正直どこまで続いているのかは判明していない。
まだ奥があるみたいだけど、敵がこれ以上強くなるとジグとアマリア様だけでは、恐らく手が足りないよね」
「うむ、しかし依頼を受けたからには、途中で引き返すわけにもいくまい。それにスケルトンナイトやスナイパーが出てきたのなら、後はロードやキングを残すのみだと思う。もし予想が外れたとしても、行けるところまでは行くしか無かろう。
ここからは前衛を俺とジグが、後衛をレストミリア殿とアマリアが担当して進むとしよう。もちろん無理は禁物だが」
「私達は二人の判断に任せます。その方がジグも良いでしょう?」
アマリアの意見に僕も頷くと、モルド神父の意見を採用して僕達は奥へと進んで行った。
珍しく今回ラジクは留守番。岳竜戦で満足した余韻があるのと、アマリアを心配するモルド神父に気を遣ってのことです。
遺跡にはスケルトンがごろごろでしたが、アマリアも無事に役目を果たしています。
アマリアが安定して魔法を使えているのは、モルド神父がいてくれるのが大きな理由で、神父が見守ってくれる安心感と、自分の良いところを見せたくて、アマリアはかなり頑張っています。
休憩後は少し厳しくなってきましたが、ここから先はモルド神父とレストミリアも参戦。
一行は遺跡の中を更に進んでいきます。




