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転生の糸使い [830万PV突破・400万字、900話以上の大ボリューム!]  作者: 青浦鋭二
第1部 教会の孤児編 (襲撃・修行・エルフの里・黒骸王・巡回の旅・王都攻防戦)

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第56話 大森林の異変 その5 敵の正体と休息

ラジクの本隊がエルフの里に到着しましたが、かなりの被害が出ている様子。

「師匠!!」


「ラジク殿!? 一体そちらで何があった?」


 僕やレストミリアはラジクの元に駆け寄ると、彼を初め大きな被害が出ている本隊の騎士たちを、レストミリアや治癒術士たちが一斉に治療し始める。


「私が代わりに説明しましょう……」


 比較的軽傷で治療が必要ない騎士の報告によると、ラジクの本隊は精鋭部隊なだけあって作戦通りにワイバーンを引き付けつつ街道を東進し、敵の数を減らしながらエルフの里に向かっていたらしい。


 しかし突然、マントやフードで体を覆ったエルフらしき者が現れて襲いかかってきた。奇襲を受けて隊列を崩され、更に助けにきたはずのエルフに襲われて混乱したところにワイバーンが殺到し、部隊は乱戦に持ち込まれた。

 しかもワイバーンは、何故かそのエルフには攻撃しなかったそうだ。


 ラジクは里へ伝令を出そうとしたが、ワイバーンは僕らの時と同じように里へ近づくのを阻み、力押しで通ろうとしてもマントのエルフに背後から襲われては、それも難しかった。

 本隊の騎士たちはよく防いでいたが、このままでは(らち)があかないと思ったラジクは一人でエルフの相手をし、他の騎士たちにはワイバーンを片付けるように指示を出した。


 ラジクとエルフの実力は拮抗(きっこう)していたようで、しばらくの間は一進一退の攻防を繰り広げていた。

 しかし、ジワジワと押され始めたエルフが(ふところ)から水晶のようなものを取り出し魔力を注ぐと、それは黒い光を放ち始めて騎士たちと戦っていたワイバーンの様子がおかしくなり、なりふり構わず一斉にラジクへと襲いかかっていった。


 その後、ラジクはワイバーンの攻撃で重傷を負いながらも一太刀(ひとたち)浴びせることに成功して、エルフは森の中へと撤退していった。

 そうして倒れたラジクを騎士たちはワイバーンを倒しながら守り、どうにか里まで連れてきたようだ。


「ふむ……これは一度、里長とじっくり話す必要があるね」


 騎士からの報告を聞いたレストミリアは真剣な顔つきでそう言うと、里長やイリトゥエルのいる一際(ひときわ)大きな木の根元の建物へと入っていった。

 僕はラジクに首飾りをつけて回復魔法をかけ、魔力が無くなったところで交代して眠りについた。



 ◇◇◇◇◇


 翌朝、目が覚めるとラジクは意識を取り戻していた。


「師匠、ご無事で何よりです」


「この状態が無事かと言われると疑問だが、あれだけワイバーン共に噛みつかれたりブレスを喰らって、それでもこうして生きているのだから、部下や治癒術士には頭が下がる思いだ」


 まだまだ本調子ではないラジクは苦笑いしながら答える。


「運び込まれた師匠を見たときは、さすがにもうダメかと思いましたよ。

 僕には無理するなと言っておきながら、師匠は随分と無理をしたようですね?」


「それについてはお前もだろう。

 せっかく里に着いたのに引き返して、殿(しんがり)を買ってでたレストミリア殿や護衛の騎士を助けたと聞いているぞ?

 しかも守るべきイリトゥエル殿と一緒だったと」


 僕たちは互いにジトッとした目で相手を見る。

 しかし、自分はともかくラジクの言葉は正確ではないので、ここはきちんと改めておくべきだろう。


「師匠、それについては正確ではありませんよ。

 イリトゥエル様がミリアさん達を助けに行くところに、僕がついていったんです」


「どちらも似たようなものだ。ワイバーンが飛び交う中で護衛対象を戦場に戻すものではない……が、レストミリア殿を失うのはセントリングにとっては相当の痛手になる。その点についてはよくやってくれた。

 あぁ、それとこの首飾りは返しておく。これはあまり他人にホイホイと貸すものではないのだぞ?」


 僕のツッコみにやれやれといった顔をしたラジクは、それでも僕の頭をガシガシと撫でながら味方を助けたことを褒めてくれた。


「それはわかってますし、ホイホイ貸してるつもりは無いですよ。価値を知っていても欲しがらなそうな、ミリアさんや師匠だからこそですよ」


「わかっているなら良いが……」


 そんなやり取りをしているとレストミリアがやってきた。


「やぁやぁラジク殿。意識も戻ったようだし、もう大丈夫そうだね。昨日の事については騎士から報告を受けているよ。

 ……それにしても相変わらず無茶をするねぇ」


「レストミリア殿、治療に感謝する。

 しかし昨日の場合は仕方がなかったのだ。まさか敵がワイバーンを操るなど思いもよらなかった。あれさえ無ければもう少しで倒せたと思うのだが……残念だ」


 レストミリアにお礼を言いつつも、敵に遅れをとったのが悔しいのかラジクは無念そうな表情を浮かべ……いや、単に勝負を着けられなかったのが残念なだけだなこれは。


「その辺りのことも含めて昨夜、里長やイリトゥエル様と話し合いをした結果を伝えたいから、ジグは皆を集めてもらえるかい?」


「わかりました」


 僕は頷いて騎士や治癒術士に声をかけ皆を集めると、里長をはじめとしたエルフたちも同様に集まっていた。

 ワイバーンの群れが北の山脈の方角から来たこと、一昨日の夜に数が増えたこと、本隊や別働隊がそれぞれ見たことを大まかに説明し、それから本題に入る。


「昨日、ラジク殿の本隊を襲ったエルフは闇の魔力を使ったことから考えて、過去にこの里から追放された者ではないかと思われる。

 そして持っていた水晶は魔法を増幅させる魔道具で、それを使って幻惑系の闇魔法を強化してワイバーンを支配しているようだ」


 エルフの里長がそう説明する。イリトゥエルの父親だけあって、こちらも金髪に緑の眼をしたかなりの美形だ。

 見た目だけなら十代前半の妹と年の離れた、二十代後半の兄って感じに思える。


「追放されたということは、その者についてある程度の情報があるという事でよろしいですか?

 出来るなら持っている情報を全て開示(かいじ)していただきたい。既に我々には大きな被害が出ていますし、これ以上の被害を出すわけにはいきませんので」


 今回の件が恐らく、エルフ同士の争いが原因であるという可能性を聞いたラジクが部下を失ったこともあって、いつもと違って少しトーンの低い声で更なる情報提供を里長に求めた。


「……うむ。その者は私の息子であり、イリトゥエルにとっては兄にあたる者で名はザグエルという。

 エルフには珍しく闇の魔力を持ち、剣術、魔法戦闘、弓術に優れた男だった。

 しかし今のような人間との共存を望まず、力を蓄えていずれはセントリングを攻めるなどという、過激な思想を抱いていた。私はその考えがいつか里に災いをもたらすと判断したため、奴を森から追放したのだ。

 恐らくワイバーンを操る(すべ)を手に入れたことで、自分の目的を果たすために行動を起こしたのだろう。

 手始めにこの大森林や里を襲い、秘薬や素材を手に入れて資金を調達し、更に力を蓄えてから本格的にセントリングを手に入れるつもりなのだろう。

 姿を現すまで気づけなかったとは言え、命を落とした者たちには申し訳ないことをした。……本当にすまない」


「兄は元はこの森のエルフですから、森に侵入してもワイバーンのように異物としての感知は難しく、姿を現すまではこちらも分かりませんでした。

 このような事態になってしまいましたが、我々はセントリングやあなた方に敵意はございません。どうかその事だけは信じていただきたく思います」


 ラジクや騎士から得られた情報から導き出した予想を述べると、里長とイリトゥエルは揃って頭を下げる。


「大丈夫だイリトゥエル殿。あなたがリッツソリスで見せた真摯(しんし)な思いを我々は疑ったりしないし、これまで築いてきた人間とエルフの関係を今さら壊したいとも思っていない。

 当初の予定の通りに我々は大森林からワイバーンを排除する。

 そこにエルフが一人加わったとしても、戦場ではよくあることだ。そうだろう?」


 ラジクがそう言って頭を上げさせ、周りの皆を見回すと騎士も治癒術士も(うなず)いていた。


「ラジク殿……感謝する」


「皆様のお気持ちに感謝いたします」


 里長やイリトゥエルはそれを聞くと再び頭を下げ、他のエルフもそれに続く。


「では今後に向けて、どう動くかの話し合いもしましょうか。

 俺をはじめとした騎士はまだ満足に戦えませんから、動くにしても恐らく明日以降になりますし……」


「そうですね。今日は里の結界を利用しつつ私たちエルフを中心に守りに徹して、騎士や治癒術士の方々には明日に備えて、一旦休息を取ってもらう方が良いと思います」


「ではそのようにお願いします。

 あぁ、それと里長にイリトゥエル殿。明日以降に西から森への侵入者がいるかもしれませんが、攻撃してこない限りはこちらからも攻撃しないでいただきたい。

 この里に向かう前に騎士を二人、伝令としてリッツソリスに送ったので、そのうち援軍が来るはずですから」


 死者が出るほどの戦闘だったにもかかわらず、ラジクはしっかりと今後への布石も打っていたようだ。

 普段はそんな雰囲気を感じさせないけれど、やはり中級騎士であり部隊長を任されるだけはあるのだと、僕は改めて師匠を見直した。


「承知しました。森に入れば探知は出来ますから、我々に近付けば人数や動きも分かりますし、姿が確認できればワイバーンと間違えて攻撃することも無いでしょう」


 そうして話し合いを終えると騎士たちは休養と治療に専念し、僕や治癒術士も負傷者の治療しながら交代で休みを取り、その日は里に籠城しつつ結界を利用して守りに徹した。

2人ほどの戦死者がいましたが、戦闘後に比較的元気だった騎士2人をリッツソリスに送り、ラジクの本隊は里に到着。


治療は進んでいますが騎士達が復活していないため、翌日は亀のように首を引っ込めて籠城し、まずは回復に努めます。

エルフ達にも疲労は溜まっていますが、そこは自分達の土地を守るためですから、頑張ってます。


次回は反撃開始です。

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