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転生の糸使い [830万PV突破・400万字、900話以上の大ボリューム!]  作者: 青浦鋭二
第1部 教会の孤児編 (襲撃・修行・エルフの里・黒骸王・巡回の旅・王都攻防戦)

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第55話 大森林の異変 その4 強行突破と各隊の危機

ようやく一行は、エルフの大森林へと入っていきます。

 翌朝、日の出と共に僕たちは大森林に入ってエルフの里を目指したが、すぐにイリトゥエルが森の異変に気づいた。


「私が森を離れていたあいだにワイバーンの数が更に増えて、今は百余りになっています……」


 伝令も同じ意見のようだ。伝令が今気づいたということは、理由は不明だが昨夜のうちに増えたらしい。


「そうは言っても引き返すわけにはいくまい。

 数が増えたのなら、なおさら里が危険にさらされているはずだ。一刻も早く救援に向かわねば手遅れになってしまう」


「その通り。ラジク殿の本隊は派手に暴れながら、予定通り敵を一匹でも多く引きつけ、倒しながら里に向かってほしい。私の隊も早く里へ着くように努力しよう。

 到着したら青の狼煙を上げるから、それを確認したら合流して里の防衛に努めよう」


 イリトゥエルから森の変化について聞いた、ラジクとレストミリアが意見を出して今後の動きを決める。


「了解した、では行くとするか。ジグ、レストミリア殿の指示をしっかり聞いて、無理はしないようにな」


「はい、師匠もお気を付けて」


 そうしてラジクが率いる本隊は目立つ街道を進み、ワイバーンの注意を引いて敵の数を減らしつつ里に向かう。

 一方でレストミリアの別働隊はイリトゥエルの案内のもと、道のない鬱蒼(うっそう)とした森の中をワイバーンに見つからないように進んでいく。


 高くそびえる木々の間を歩き、時に茂みや木陰に隠れて順調に進んでいくが、徐々(じょじょ)に上空を飛ぶワイバーンの数は増えてきていた。


「ラジク殿の本隊が注意を引きつけて進んでいるはずだけど、ワイバーンの数がだいぶ増えてきたね。このまま進んでいては見つかるのも時間の問題か……。

 イリトゥエル様、里まではあとどれくらいありますか?」


「ワイバーンの隙間を縫うようにして時折、身体強化も使って進んでいましたから予定よりはだいぶ早く進んでます。

 この調子でしたら半日もかからないと思います。

 ですがレストミリア様の言う通り、これ以上ワイバーンが増えれば探知しながら隠れて進んでいても、いずれ見つかるでしょう」


 葉の生い茂る木の下に身を潜めながらレストミリアが問うと、イリトゥエルは上空を行き交うワイバーンの様子を窺いながら答える。


「ではとりあえず、このままのペースで進んで見つかり次第、全速力で一気に突破しましょうか。

 隊列は私を先頭に護衛騎士は隊の左右に、他の皆はジグとイリトゥエル様を囲むようにして進むことにしよう。

 ジグ、キミの盾ならワイバーンが群がってきてもしばらくは耐えられるだろうから、イリトゥエル様から離れず彼女の護衛を最優先に。

 どうしても逃げられない場合にはキミが壁となり、イリトゥエル様が盾の中から魔法でワイバーンを狩れば、ある程度の数なら撃退可能なはずだ。

 本当は里に着いてから行う作戦だけど、どうしようもなくなったら私たちもキミの盾に避難するから、そのつもりでいるようにね」


「それは初耳ですけど……はい、了解です」


 聞いてないですよと言いたかったが、僕の盾魔法の性能は確認済みだからと言われれば、レストミリアの判断に任せるしかなかった。


 つい最近、破られたばかりなんですけど!

 まぁ一応、改善案もあるし頑張るしかないか……。


 そうして引き続きイリトゥエルの案内で森を進んでいたが、やがて抜け道がなくなるほどにワイバーンが増えてきた。


「よし、ここからは一気に突破しよう。

 各々(おのおの)、隊列を崩さないように一直線に里へと向かうこと。いいね?」


「はっ!」


「ふぅ……じゃあ行動開始っ!」


 レストミリアの言葉に皆が頷き、別働隊が里へと全速力で移動を開始すると、すぐに上空のワイバーン数匹が気づいて追い掛けてきた。


「来た来た~!『エル・メニア・アクア・ボール!』」


 僕らを追ってくるワイバーンに向けて、レストミリアがいくつもの水球を放つ。するとそれらはワイバーンに命中するとその全身を包んで空中で溺れさせた。


「今のうちに行くよ!」


 その隙に僕たちは進んでいくが、前方には更に多くのワイバーンが待ち構えていて炎や氷、雷など様々な属性のブレスが飛んでくる。

 それを回避しながら騎士や治癒術士たちも魔法を放つが、ダメージを与えて撃ち落とせても、硬い外皮を持つワイバーンにはなかなか致命傷を与えられない。


 それでも強引に進んでいるとやがて遠くに、他の木々とは比較にならないほど大きな一本の木が見えてきた。


「あそこです! あの大樹(たいじゅ)の周りに私たちの里があります!」


 イリトゥエルがエルフの里の方向を指差した頃には、進むごとに襲い掛かってくるワイバーンが増えていき、追い掛けてくるものと前方に待ち構えるものとで、僕らを挟み撃ちする形になりかけていた。


「このままじゃ危ないね。でも治癒術士は何としても里に送らなくちゃならない。

 ……私と騎士二人でワイバーンの足止めをしますから、イリトゥエル様は他の皆を率いて先に里へ向かってください」


「三人では無理です! それでは皆さん死んでしまいますっ」


 いつもは飄々(ひょうひょう)としているレストミリアが真面目な顔で言うが、危険性を充分に知っているイリトゥエルは首を振る。


「あなたが最優先に考えるべき事は里の安全です。そしてこの隊を率いる私の最優先は、部下を無事に里まで送り届けることです。

 それと私は別に死ぬつもりなどありませんから、そこは安心してください。

 何より、ここでモタモタして囲まれた方が危険は増すばかりですよ?」


「……わかりました。お願いいたします!」


 レストミリアが真っ直ぐに見つめて言うと、イリトゥエルも自分の優先すべき事を改めて理解し頷く。


「では私たちで前方のワイバーンを叩き落としますので、合図したらその隙に里まで一気に駆け抜けてください。

 では行きますよ……3、2、1、今!」


 そう言って合図するとレストミリアたちは、前方を塞いでいたワイバーンに向かって魔法を放ち、見事に撃ち落として道を開いた。

 そして同時に後ろに迫るワイバーンに突撃を開始した。


 レストミリアの合図と共に飛び出した僕たちは後ろからの攻撃を心配しなくて良くなり、前方のワイバーンに火力を集中させては(ひる)ませ撃ち落とし、無理矢理に押し通って多少の負傷者はいるものの、里までどうにか全員で辿り着くことが出来た。


 エルフの里は巨大な木を中心に集落が形成され、集落全体が結界で覆われていた。

 結界の性質としては弾き返さない風の盾といった感じだ。攻撃や敵を堅く拒絶し、とにかく内部に通さないように出来ている。


 しかし害意が無くても里のエルフ以外は内部の者……特に里長(さとおさ)やエルフの戦士長などの許可が無ければ、入ることが出来ないようになっていた。


「はぁ……はぁ……援軍を連れてきました、父上に取り次ぎを」


「イリトゥエル様!? よくぞご無事で……さぁ、早く中に!」


 見張りのエルフは僕たちの姿を見ると弓を構えたが、イリトゥエルの姿を確認すると警戒を解いた。

 そしてイリトゥエルと伝令が先に入り、彼女が許可することで僕たちは結界の中に通された。


「皆さんはイリトゥエル様と共に奥へ進んで体を休めてください。ここは我々にお任せを……」


 後を追ってきたワイバーンは結界に阻まれて中までは入ってこられず、結界内部のエルフたちから魔法や弓による攻撃を受けては倒されるので、やがてその場から離れていった。


「僕はここでミリアさんたちが来るのを待ちます」


「そうですね……分かりました。結界の外に出てしまうとまた許可が必要になるので、そこだけ気をつけてくださいね」


 ひとまずは安心したがレストミリアたちがなかなか来ないので、僕はイリトゥエルに言って結界のぎりぎり内側で視力強化を使って確認すると、遠くでまだ戦っているようだった。


 治癒術士たちはすぐに負傷者の治療を開始すると共に、無事に里へ到着したのを知らせるため青い狼煙を上げたが、ラジクの本隊もまだ姿は確認できなかった。


 やがてレストミリアたちがワイバーンに追われながらも、こちらへ向かってくるのが見えた。

 しかしその途中で里から追い払ったものも加えた群れに囲まれ、攻撃を受けるようになっていた。

 あのままでは危ない。いまだ姿の見えないラジクたちの助けは望めないし、里とレストミリアたちのあいだには他にもワイバーンがいる。


「ミリアさん……!」


 僕はとうとう我慢来なくなって結界を飛び出そうとしたが、ちょうどそこに武装したイリトゥエルがエルフの戦士を数人連れてやって来た。


「里を救いたいという私の願いを聞き、無事にここまで送ってくださった方々を見殺しにするわけにはいきません。

 あなたも助けに行くつもりなのでしょう? 良かったらあの盾魔法でワイバーンを防いでください。

 周囲の協力があるのなら、私も自分の力を心置きなく振るえます」


「イリトゥエル様……ありがとうございます!」


 そうして結界を飛び出した僕らはレストミリアたちの救援に向かう。

 こちらの姿を見つけたワイバーンが襲い掛かってくるが、エルフの戦士たちは弓を構えると、矢も無いのに弓を引いた。すると魔力で出来た矢が現れて、それを一斉に放つ。

 放たれた魔力の矢は空中で分裂し、硬い外皮を貫きワイバーンの全身に突き刺さった。


 ワイバーンは矢の痛みに暴れて落下していくが、まだ致命傷には至っていない。

 矢を放ったエルフたちは続いて剣を構えると、地面に着地したワイバーンに斬りかかり更にダメージを与えていく。

 そうして戦士たちが地上のワイバーンを相手にしていると、更に上空にいた他のワイバーンが数匹、イリトゥエルと僕の方へとブレスを放ってくる。


『ウインド・シールド!』


 僕は風の盾を出してそれを弾き返すが、それほどのダメージを与えられてはいないようだ。


「本当に良い盾魔法ですね。ならば私も負けてはいられません……!『エル・ウインド・カッター!』」


「ギャオォォォッッ!」


 盾の反撃を受けたワイバーンを見据えたイリトゥエルが魔力を溜め、風の刃を放った。

 一直線に空中を(はし)ったそれは、ワイバーンをまるで障子紙(しょうじがみ)か何かのように、あっさりと切り裂いた。


「えっ……?」


 ラジクでも出来なかったことをいとも簡単にやってのけたのを見た僕は、ポカンと口を開けてマヌケな顔でもしていたのだろう。

 イリトゥエルが僕を見てクスリと笑う。


「私とて里長の娘ですから、戦闘の心得くらいはあるのですよ?

 特に弓と魔法が得意なのです。

 その代わり接近戦は苦手なので、あなたのように守ってくださる方がいてこそですけど。

 さぁ、早くワイバーンを退けて、皆さんを里までお連れしましょう!」


「……は、はいっ!」


 そうだ、呆けている場合ではない。今はとにかく敵の排除が最優先だ。

 僕が防ぐあいだにイリトゥエルが迎撃して、こちらに向かってきたワイバーンを片付けレストミリアたちの所に合流すると、騎士たちも怪我だらけだったがレストミリアは更に重傷だった。

 騎士に攻撃を任せて自分が防御や回復を一手に担い、囲まれてからは騎士の守りを優先して、自分は属性身体強化で耐えながらワイバーンの数を減らしていたらしい。


 僕は風の盾を張ってワイバーンを防ぎ、攻撃はエルフの戦士たちに任せ、イリトゥエルには騎士たちの治療をまずお願いした。


「や、やぁ、ジグ。無事に里まで着いたというのに、護衛対象と一緒にこんな所に戻って来て、一体どうするつもりなんだい?」


 あちこち出血しながらもいつも通りの口調で話すレストミリアだったが、その声に力は無く立っているのがやっとの様子だ。


「ミリアさんたちを助けに来たに決まってるでしょう。死ぬつもりは無いとか言って、なんてざまですか。こんなところで死んではアマリアに叱られますよ」


「もう少し耐えられるかと思ったんだけど、最近は鍛練を怠けていたからなぁ。キミと手合わせしたのも久々の実戦だったくらいだ。

 こんな事なら日頃から、もう少し鍛えておけば良かったね。しかしアマリア様に叱られるのは困るよ、本当に困る。

 ジグ、例えここで私が死んでもアマリア様には内緒にしてくれないかい?」


 僕がアマリアを引き合いに出して励ますと、レストミリアは弱々しく微笑んで無茶なことを言う。


「いや、何を言ってるんですか。ミリアさんが死んだら、さすがに報告しないわけにはいきませんよ。

 っていうか治癒術の訓練があるんですから、迎えに来なかったら普通にバレますって。

 それに怒られるのが嫌ならこれでも飲んで、さっさと起きてくださいよ。師匠から借りてきた回復薬です。

 まさかこんなに早く使うことになるとは思いませんでしたが、借りておいて正解でしたね。

 僕の首飾りも貸しますから、大人しくしていればすぐに動けるようになるはずです」


 そう言ってレストミリアに薬を飲ませると首飾りをかけてやり、僕はワイバーンの攻撃に耐えている盾の方へと魔力を注ぐ。

 そこに騎士たちの治療が一段落したイリトゥエルも攻撃に加わると、一気に形勢が逆転し始める。


「ところでレストミリア様に渡したあの首飾りは、お守りか何かなのですか?

 回復魔法が刻まれているようですし、随分と質の良さそうな魔石と()った装飾ですね。それにあの紋章(もんしょう)帆船(はんせん)ということはハイワーシズの……?

 あなたは孤児だと聞いていましたけれど、実はハイワーシズ王族だったりするのですか?」


 レストミリアや騎士も命に別状はなく、戦況も好転したことで心に余裕の出来たイリトゥエルが、首飾りを興味深そうに見て尋ねる。


「あれはその、話せば長くなるので今はちょっと……。

 まぁとりあえず僕は孤児ですし、ハイワーシズ王族でもなんでもないです。あれは貰い物で、今のミリアさんに必要なので使ってもらってます」


「面白そうな話ですね。ではワイバーンの件が片付いたら、後ほど詳しく聞かせてください。他にも森の外の話があるのなら聞いてみたいです」


 僕が答えるとますます興味を持ったらしく、彼女は目を輝かせて言う。


「わかりました。じゃあ全部が片付いて時間があるときで良ければ、僕が行った場所や見たものの事をお話ししますね」


「それは楽しみです。里や同胞を守る以外にも理由が出来て、より一層戦い甲斐があるというものですっ!」


 そこから先は言葉の通り、更に威力を増したイリトゥエルの攻撃で群がるワイバーンを退けつつ、やがて回復したレストミリアも加わって、僕たちはどうにか皆で里まで撤退することが出来た。


 しかし日が暮れる頃になってもラジクの本隊は現れず、夜遅くになって捜索隊(そうさくたい)を出すべきか、里で待つべきかと皆が話し合いを始めた頃。


 数を十人ほどに減らし、ラジク自身も重傷を負った状態で騎士たちに運ばれ、本隊はようやく里に到着した。

どうにか里までは到着した一行でしたが、ワイバーンの群れはその数を増やしており、途中レストミリアも重傷を負うほど苦戦。

更に、なかなか里に現れなかったラジクの本隊には、思わぬ被害が出ていました。

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