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転生の糸使い [830万PV突破・400万字、900話以上の大ボリューム!]  作者: 青浦鋭二
第1部 教会の孤児編 (襲撃・修行・エルフの里・黒骸王・巡回の旅・王都攻防戦)

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第2話 転生後の世界と周囲の環境 その1

とりあえず生まれ変わることになり、転生先の世界で成長していきます。

 ルミア様に言われた通り、赤子から生まれ変わった。想像と違ったのは産まれた直後に、僕は捨て子になり教会も兼ねた孤児院に入れられたことだ。


 どうやら生活に困窮していた両親には育てられなかったらしい。この世界はモンスターや魔族がいるせいか、親を亡くしたりして孤児になる子供がそこそこいるようだ。自分は捨てられちゃったけど…。


 それなりの数の子供達が孤児として居る割に、満足とは言わないまでも食うに困らない程度に生きていけた。

 これはシスターや神父が親切だということもあるけれど、モンスターや魔族だけではなく神様も確かに存在していて、孤児院のシスターや神父はたびたび各地の村や集落に赴いては仕事をして、報酬として多少の食料や金銭を得ているからだ。


 その仕事とは、神に祈りと魔力を捧げる事によって土地に恩恵をもたらすことで、恩恵によって土地を潤し少しではあるが土地を肥沃(ひよく)にし、恩恵の結界を張って効果範囲内の土地や建物や人を守る。


 この結界は中に存在するものに対して害意がある者や攻撃に対して働き、弱い敵や攻撃なら侵入そのものを阻んだり防ぐことができ、侵入してくるような強い敵や攻撃に対しては、それを弱体化させる効果があるそうだ。


 そんなわけで多少の不便はあれど、シスターも神父も優しいし、どうにか成長していけている。

 いや、本当にありがたい。姿形は赤子とは言え、中身が三十路(みそじ)のオッサンだから逆に申し訳ないくらいだ。


 そうして一年…二年…三年と年を重ね、五歳からは孤児院の掃除や洗濯の手伝いをしたり、あまり広くはない畑ではあるが、皆で食べるための作物を育てる手伝いを始めた。

 そして孤児仲間の子供たちと遊んだり、喧嘩やイタズラをしてはシスターに怒られたり、たまに風邪は引くものの大病をするわけでもなく、そこそこ順調に成長し十歳になった年のある日。

 掃除をしながらもふざけて遊んでいて、ふと気がついた。


「あれ……僕ってなんか子供というか、中身が年相応になってきてない?」


 前世の記憶は確かに残っている。この世界で役に立つかは別として、学生の頃に習った勉強の内容も……いや、それは元々大して覚えてなかったか。

 文字に関しては生まれてからこれまでに、こちらの世界の文字を習って慣れているから問題ないし、数字も0~9に相当するものの組み合わせだから、覚えてしまえば数字が違うだけだった。


 文字が違う世界だから、漢字や平仮名や片仮名を知っていても意味が無いし、科学知識なんかも真面目に授業を受けていたとは言えずうろ覚えで、生活に役立てられる応用力もない。

 雑学知識も大して持ち合わせてはいなかった。知識としては知っていても、実際に活かせるのとは違うし。前世で得た知識は、簡単な計算能力程度しか活かせそうにないや。


 それはさておき自分は自分であるという自覚はある。


 周りの子供達よりは多少の自制心もあるし、物事への理解も早い方だとは思うけど、実際の中身は成人した大人だとして考えると、ちょっとヤバいレベル。

 掃除をしながらも遊んでいた事からも、もしかしたら精神が肉体に引っ張られているのだろうか。このままだとマズいかな? でもまぁ赤子までこのまま幼児退行するとは思えないし、年相応に若返る分には良いか。


 そんなことを考えていたら「ジグ、ボーッとしてどうしたの?」と後ろから声がした。


 ちなみにジグとは僕のことだ。現在は孤児院長で唯一の神父でもあるモルド神父が名付けてくれた。

 モルド神父は二十代後半ながら灰色の短髪に、左の眉から頬にかけてある縦の傷痕と、モミアゲから顎にかけて生えている髭のせいかとても威厳があり、優しくも厳しい人だ。

 あまりシスター達の言うことを聞かないでワガママやイタズラをすると、無言でゲンコツが落ちる。


「ううん、なんでもないよ、アマリア。ちょっと考え事をしてただけさ」


 アマリアは肩までの赤い髪に、優しいながらも意志の強そうな眼差しをしたシスター見習いだ。年は十代半ばでそろそろ成人が近いらしいから、恐らく今年で十五歳だろう。


「そう。なんでもないなら良いけど、悩みがあったらいつでも相談するのよ。あと、もうすぐお昼だから早めに掃除を済ませて、手も洗ってきてね」


 そう言ってアマリアは台所へ向かっていった。


「はーい」と返事をして僕は掃除を終わらせ、他の子達がいる水場へ合流する。手洗いを終えて食堂へ行き、配膳を終えてパンとスープの質素な食事をしていると、アマリアの成人式の話題になった。


「そういえばアマリア、成人すると儀式場で選別を受ける人もいるみたいだけれど、アマリアはどうするの?」


「うーん、選別で貰えるものは自分じゃ選べないらしいし、選別を受けて魔力が上がるのなら嬉しいけど魔力は貰えないもんね。

 下手に優れた武器や道具や魔法を貰って、冒険者や工房からスカウトされると断るのが大変みたいだから、私は行かないかな」


 同じくらいの年の子に聞かれると、アマリアはそう答えて苦笑いをする。


「そうなんだ。じゃあそのまま見習いからシスターになるの?」


「うん。私はここで育って、日々の生活にもこれといって不満は無いし、大好きな皆がいる平穏な孤児院でこのままシスターになりたいな。

 シスターになって各地へ祈りに行くのは少し不安もあるけれど、グループを組んで交替で行くから一ヶ月のうちの三分の二くらいは、今まで通りの生活ができるし多分大丈夫だと思う。小さな子供達の面倒を見るのも好きだしね」


 アマリアは質問にそう答えてから、チラッとモルド神父の方を見た。

 神父は食事をしながら聞いていたが、アマリアの視線に気づく様子もなく、そうかと頷いていた。


 この世界では十五歳で成人し、希望すれば儀式場で神様からの選別を受けて、魔力の武器や道具、魔法のいずれかを神の恩恵として貰うことが出来る。

 しかし、恩恵の内容によってはそれで将来が強制的に決まってしまう事がある。割とギャンブルなのだ。


 平凡なものならそこまで問題は無い。よほどの人手不足でもなければ替えが利くから、手に入れた恩恵とは適性の違う、自分の希望の職にも就きやすい。


 自分が将来目指している職に合うものが得られるかは運……いや神様次第で、戦闘なんてしたくない人が優れた武器や魔法を得たり、兵士を目指しているのにも関わらず、職人が喉から手が出るほど欲しがりそうな道具を得ることもある。


 また、それらは他人に譲渡出来るものでもないため、その能力を欲する職の関係者からのスカウトが激しく、断り続けると偉い人が出てきて、大抵の一般人や孤児院出身者では押し切られてしまうらしい。


 優れた道具が出ても強引にとは言え、職人になるのならまだマシな方で、戦闘に向かない人に優れた魔法や武器が出た場合には、命に関わることもある。

 選別は1度しか受けられないので、やり直しも利かない。


 あまりに珍しい恩恵が出ると、王族に召し抱えられることもあるらしい。よほどの野心でも無い限り、身分の違いからどんな扱いを受けるか分からない王宮は、庶民にとってはあまり行きたくない所だ。


 そんな理由もあり、自分の目標がしっかりと決まっていて安定した仕事が手に入れられる人は、そういったリスクのある選別を受けない傾向が強い。

 幼い頃から親の仕事を手伝ったりしていて、人脈やノウハウを活かせる人は選別を受けずに、親の仕事にそのまま就く人が多い。

 店や顧客や工房などを引き継げる商人や職人、農地を持っている農民はまさにその代表だ。


 孤児達にはそういった親から引き継げるものが無いので、そのまま神父やシスターになることが多い。

 孤児達にとっての親代わりは彼らで、彼らから土地をわずかでも肥沃にすることや人々を守る結界は、皆の生活にとって大切なのだと教えられているのも理由としてあるのだろう。


 魔王がいた頃と討伐後の十年ほどは兵士不足だったため、兵士を目指す者も多かったようだけど、ここ二、三年は補充が済んで需要が減っている。

 それに基本的には孤児院よりも、兵士と関わることの多い街の人達が目指す傾向にあることから、現在の孤児院に兵士を目指している者はいない。


 冒険者を見る機会の多い街の人達は、モンスターや魔族を倒した素材や討伐報酬で一攫千金を夢見て、冒険者を目指すために儀式場で選別を受ける人も多いらしい。

 武器や魔法なら問題ないし、良い道具が出たら出たで職人として普通の人よりは稼げる。


 それに兵士や冒険者の場合は命がけの仕事になるので、戦闘向けの恩恵が有るのと無いのとでは生存率が大きく変わるので選別は必須だ。

 そして兵士は管轄地域の守備、冒険者は依頼の達成や有事の際には傭兵として戦闘に参加するために、一定以上の人数が確保されることも決められているので、よほど良い道具が出ない限りはそのまま希望通りになる。


 たしかに冒険するのは楽しそうだし、兵士として命をかけて街や国を守るのも格好良いし必要だとは思うけど、日本の記憶や孤児院での静かな生活を知っている自分には、到底選べる気がしない。

 痛いのも怖いのも嫌だし、モンスターなんかと戦って負けた場合のことを考えてると、前世での自分の最期が思い出される。


 即死ならまだマシだけど、あんな状態で死にきれなかった場合を考えるとね……。


 実際に日本より危険が身近にある世界に来ると、アニメやゲームで見てきたような勇ましく格好いい戦いなんてものは無理だと思えた。


 自分に冒険者や兵士はちょっと難しいのかもしれないな。

 アマリアが言っていたように、自分も割と今の環境が好きだから、成人したら神父になるのが良いかなと思った。

思いつくままに書いているため、ノートやパソコンに書き溜めもしていないし、サイトでの一時保存の仕方もよく分からないので、ある程度書き込んだ後に一旦投稿して保存し、読み返して矛盾や不足を見つけては、また書き込んで改稿や追加をして、一話一話完成させております。ご容赦ください。


神の恩恵は土地を肥沃にして収穫量を多少増やしますが、主な役割は結界の方です。ちなみに祈りの真摯さや神への信仰心と、捧げる魔力量によって、収穫量の増加と結界の強度は違ってきます。


長々と説明した選別と職に関してですが簡単に言えば、

冒険者や兵士は必要に迫られて大抵は選別を受ける。

職人、商人、農民の希望者にとっては有れば便利だけど、命がけの仕事にかり出されるリスクを考えると、それほど必要としてない。

そういった職を目指していて選別を受けるのは、親などの後ろ盾が無い孤児や親とは別の職に就きたい人達です。

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― 新着の感想 ―
[良い点] はじめまして! ツイッターからやって来ました。 成る程、導入部分で未来の話を見せるとは、これは斬新なアイデアですね。 そして赤子からやり直すタイプの異世界転生ものなんですね。 世界観もしっ…
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