第39話 魔石収集 その1 見送りと提案
色々とあった事情報告から数日後のお話。
数日後、ハイワーシズの交易船は商売を終えて国へと帰る日が来た。
ラジクと一緒に見送りに行った僕は改めてお礼を言われ、こちらも贈り物を大変喜んでもらえたと、その時の状況を伝えお礼を述べると、カナレア様も嬉しそうに微笑んでいた。
ラジクの方は騎士たちと何やら話しているようだった。
そのうちハイワーシズに遊びに来るようにとカナレア様に念を押され、見送りを終えて船が去った後の教会への帰り道の途中、ラジクに騎士たちと何を話していたのか聞いてみた。
「あぁ、お守りについて少し話をしたのだ。
魔石とは言っても商人が扱う品質のものだと、一度や二度は良くても何度か使っているうちに、魔石が割れてしまう可能性があると伝えておいたのだ。
それは向こうも承知していたようだが、念のためにな」
「そうだったんですか? 魔石も万能じゃないんですね」
「基本的に魔石の質は大きさではなく、倒したモンスターの強さに左右されるからな。
もちろん強力なモンスターから大きな魔石が出れば、込められる魔力や魔法の強さ、耐久性も上がり、途轍もなく高品質なものとなるだろう。
だが今回お前が姫に渡した物は、小さくは無いがそれほど品質の高いものでもなかったからな。
何度か使えば確実に効果を失うだろう。
まぁ、そこまでお守りの効果に頼らなければならないほど、姫の護衛も無能ではない。
それに品質で言えばお前が貰った首飾りの魔石の方が、よほど上等なものなんだぞ?」
「そ、そうなんですか? じゃあ受け取っちゃマズかったのでは……」
「姫に渡したお守りは、どちらかというと込められた盾の魔法が評価されたからな。代わりとして首飾りを受け取る分には、恐らく問題なかろう。
それにお前に渡したのは姫の意思でもあるしな。
そういえばその首飾りには、防御と癒やしの魔法が込められているそうだ。
お前の盾の魔法ほど強力ではないがある程度の不意打ちを防ぎ、傷を受ければ魔力を使って徐々に回復してくれるらしい。
お守りの効果はそれほど高くない反面、魔石の品質が高く、そうそう壊れるものではないらしいぞ」
「いよいよただの首飾りを貰った訳ではないと実感しますね。でも僕は回復魔法を扱えませんから、その点は凄くありがたいです。
師匠も首飾りについてわざわざ聞いてくれたのでしょう? ありがとうございます」
「効果を知っているに越したことは無いからな。まぁ気にするな」
そうして話しているうちに教会に着いた。
午前中の残りを剣術の鍛練をして過ごし、昼食の後はモルド神父との鍛練だ。
今日も魔力を使わず、モルド神父を相手に肉弾戦の稽古をしてコテンパンにやられた後、休憩時間となり僕は地面に大の字に寝転がっていた。
「ところでモルド神父、たくさんの魔石を手に入れるには一体どうしたら良いですかね?」
「急になんだ、魔石が必要なのか?」
突然の質問にモルド神父は怪訝な顔をする。
「この前ハイワーシズのカナレア姫に、僕の盾魔法を込めた魔石がついてる装飾品をお守りとして贈ったのは話しましたよね。
なら教会の皆にもそういうものを渡せたら、各地に祈りを捧げに行くシスター達も安心ですし、ルナメキラが来たときのような事があっても、多少は役に立つと思うんです」
「ふむ、たしかにそうだが人数分の魔石を集めるとなると、かなり大変だぞ。
それに魔石をそのまま持つわけにもいくまい。その辺はどう考えている?」
僕が説明するとモルド神父は更に突っ込んだ質問をしてくる。考え自体は否定されてないので、やり方次第では良いということだろうか。
「教会や孤児院の人間なら教会のシンボルをかたどった、簡単な首飾りでも作って身に着けていれば良いかと。
それを作るのに必要な資金については、どうせ魔石集めの際にモンスターの素材も大量に手に入りますから、それを売れば問題ないでしょうし」
「ふむ、それなら残りの問題は魔石だけだな……」
僕が具体的な方法を話すと、モルド神父は少し考え込む。
「よし、最近はラジク殿にお前を任せっきりだからな。今回の魔石集めには俺が協力しよう。
他の予定もあるからすぐにとはいかんが、近いうちに実行できるように話や準備をしておこう」
そう言ったモルド神父はなんだかやる気で、少し嬉しそうだった。こういう計画を考えるのは戦闘好きな神父には楽しいのだろう。
僕の戦闘経験も積めるうえ魔石を集められれば心配事が減るし、僕らが留守の間には師匠がいるから安心できるね。
モルド神父が乗り気になってくれて良かった良かった。
……などと思っていた僕だったが、戦闘好きがモルド神父だけではないことを、この時はすっかり忘れていた。
交易船は姫を乗せて国へと帰っていきました。
そして魔道具のお守りを作れるようになったジグから、モルド神父に皆を守るための提案が。
乗り気な2人ですが、そんな楽しそうなことを黙って見過ごすわけがない人物の存在を、すっかり忘れています。




