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転生の糸使い [830万PV突破・400万字、900話以上の大ボリューム!]  作者: 青浦鋭二
第1部 教会の孤児編 (襲撃・修行・エルフの里・黒骸王・巡回の旅・王都攻防戦)

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第32話 誘拐 その1 交易船の到来と人さらい

トスウェの森から帰り、街や教会に着いてからのお話。

 僕とラジクは帰り道の途中、街の北西端にあり騎士団や軍の本部がある建物で、盗賊の頭を討伐した賞金の半分を受け取ってから教会に戻った。


 ラジクがモルド神父に賞金を渡して今日の報告を済ませると、明日は休みにすると言われた。

 初めての対人戦で肉体的にも精神的にも疲労があるだろうから、というのが理由らしい。

 僕はそれまで気がつかなかったが休みと聞いてホッとしたので、もしかしたら自分で思っている以上に疲れが顔に出ていたのかもしれない。


 その後の夕食時にモルド神父から、僕とラジクが盗賊団を討伐したこと、その賞金の半分を寄付として教会に渡されたことが告げられ、明日は見習いたちには街へ買い出しに行ってもらい、少し豪華な夕食にすると皆に伝えられた。

 滅多に無いことに子供たちだけでなく見習いや成人した者たちも、なんだかとても嬉しそうだった。


 特に日頃から教会に来ていて僕の訓練指導をし、騎士なのに気さくな態度で話しかけ、訓練のない時には警備の合間に子供たちにモンスターや戦いのことを話して聞かせたり、シスターが重い荷物を運んでいればそれを自然な感じで手伝うなど、ラジクは以前から教会や孤児院の人々から好かれていたが、今回の件で更に人気が高まりそうな勢いだ。


 ……なんで師匠はまだ独身なんだろうね?



 翌日、訓練は予定通り休みだったので、僕は見習いとして買い出しに向かっている。

 今日は出歩く人数が多いので引率にアマリアが、護衛には今度こそ本当に非番のはずのラジクが何故か付いてくれていた。


 基本的に休みでも関係なく鍛えているから、たまにはしっかりと体を休めろと騎士団長に怒られ仕方なく家に一人でいたところ、教会の買い出しの件を思い出して結局いつものように朝から教会に来たらしい。


 ジッとしてられない子供じゃないんだから……いや、護衛は助かるんだけどね。


 街に入るといつもより人通りが多いというか賑わっている気がしたが、商店が多い街の中心部に行くとその理由が分かった。

 今日はどうやら街に交易船(こうえきせん)が来ているらしい。


 交易船はリッツソリスの遥か南東、ソリス川を下り、レクイ湖を越え、更に川を下った先の海に出て、その海の遥か向こうの国からやって来るそうだ。

 途中の街や村では、補給のために必要な最低限の商売に留め、リッツソリスで大々的に商売をするらしい。


 この街は国の首都で人も多いし、より遠くの方が保存の利かない食料でもない限りは高値で売れるようだ。


 交易商人たちは街の中心部から東門の間にかけて店を出している。なかなか高価な物もあるようだが、店舗が無いので露店で売るしかないようだ。

 彼らの売る商品は珍しい物も多いが高いので、基本的に僕たちには関係ない。しかし物珍しさについつい目が行ってしまう。


 この辺は海が遠いから、貝殻や珊瑚(さんご)で作られた装飾品などは特に人目を引くし、この辺では売られていないような薬にも結構興味がある。

 珍しい形状の武器なんかがあれば、そりゃもう見ずにはいられなかった。


 身体強化で視力を上げられるようになって、今が一番役に立ってる気がするよ!


 普段お世話になっているモルド神父や師匠はもちろん、よく心配をかけているアマリアやヒルダに、何か贈ってあげられたらなぁと思うが、未成年の孤児がそういった物を買うのには、まず先立つものが無かった。


 早々に諦めて皆と共に買い物をし、大体買い揃えた頃だった。

 東門の方で騒ぎが起こっているようで、聴力強化で様子を(うかが)うと、どうやら人攫(ひとさら)いが出たらしい。

 視力強化で辺りを捜すと、小さな子供を抱えた人影が建物の屋根を走っていた。どう考えても普通の動きじゃない、あれは身体強化だ。

 街にいる普通の衛兵が捕まえられるとは、とても思えなかった。


「こんな街中で堂々と……!」


「待てジグ、俺が行く!」


「師匠は皆といてください。特に今はアマリアから目を離さないで!」


 僕が思わず身体強化で飛び出し、誘拐犯の後を追いかけ始めると師匠がそれを止めたが、僕は助走をつけて屋根にジャンプしながら言い返す。


 ルナメキラの時にアマリアが狙われていた事はラジクも知っているので、そちらの護衛を優先して欲しいと暗に伝えたのだ。


 前だって誰もが関係ないと思っていたイスフォレ襲撃が、アマリアを狙ったルナメキラがモルド神父を教会から引き離すための罠だったのだから、今回が違うとも限らない。


「皆を教会に連れ帰ったらそちらに向かうから、無理をせず定期的に狼煙(のろし)を上げるようにな!」


 言葉の意味を察したラジクはそれ以上は止めず、僕にそう言うと皆に教会に戻るようにと指示を出していた。


 誘拐犯(ゆうかいはん)は屋根を次々と飛び越え、東門に達しようとしていた。

 モタモタしていたら逃げられてしまう。

 東の森は広いから逃げ込まれたら厄介だし、街の衛兵が森の中に詳しいとも思えない。

 少なくとも彼らよりは、イスフォレの森で訓練し狩りをしていた僕の方が地形などを知っていると思う。


 僕は身体強化を更に強め距離を縮めていくが、誘拐犯は屋根から飛び降り、着地と同時にその勢いを維持したまま衛兵が止める間もなく一気に東門を突破した。

 そのあとを追って東門を通り過ぎようとしていた僕を、衛兵が今度こそはと止めようとする。


「僕は中級騎士ラジクの弟子だ! 邪魔をするな!」


 犯人を逃がした上に、それを捕まえようとする自分の邪魔をする衛兵に腹が立ち思わず怒鳴ってしまったが、お陰で衛兵は飛び退いた。


 師匠ごめんなさい。あとで面倒なことになるかもしれません……と心の中で謝りつつ、僕は誘拐犯のあとを追いかけて東門の先にある橋を渡り、東の監視塔を通り過ぎて森に入っていった。

たまには皆に息抜きとご褒美を…との考えでモルド神父は、ちょっぴり豪華な夕食にする予定。


たまにはラジクに十分な休息を…との考えで騎士団長は、丸一日の休暇を与えてゆっくりさせる予定。


モルド神父の考えた予定は、これからの展開次第です。


騎士団長の考えた予定は、既にラジク本人によって破綻しています(笑)


思いがけない事件に遭遇しましたが、ジグが訓練を受ける決意をした理由を知っているラジクは、自分に皆を任せたいというジグの判断を否定できませんでした。

もちろん弟子の心配もしていますが、男の頼みを無碍(むげ)に出来る人ではないのです。

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