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転生の糸使い [830万PV突破・400万字、900話以上の大ボリューム!]  作者: 青浦鋭二
第1部 教会の孤児編 (襲撃・修行・エルフの里・黒骸王・巡回の旅・王都攻防戦)

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第25話 訓練開始 その3 属性検査と変人賢者

ジグの属性検査のお話。

新キャラも登場です。

 昼食の時にラジクから言われたことをモルド神父に伝えると、そろそろ調べようと思っていたからちょうど良いとのことで、今日の午後はまず属性検査をすることに決まった。


 どこで調べられるのだろうと考えながらの食事の後、属性検査のためにモルド神父に連れて行かれた先は街の中心にあるガチャガチャ……もとい選別の儀式場だった。

 ちなみにラジクも付いて来たがっていたが、気になるのは理解できるけれど、さすがに教会の護衛任務が優先でしょうという神父の言葉によって却下されていた。


「選別の神器で属性を調べることができる。本来は成人の儀式の際、選別と共に属性も調べて判明するものなのだが、早くから将来を決めて訓練に必要な者達は、成人前に属性だけを調べることもできる。

 そこの土台に付いている虹色の魔石に触れて魔力を流せば良い。本来はそれで選別も行われるが、それには王宮の魔導師が封印を解除しなければならないので、今は気にしなくて良い」


 モルド神父は巨大なガチャガチャを選別の神器と呼び、調べ方を教えてくれた。

 僕は恐る恐る手を伸ばし、魔石に触れて魔力を流し込む。すると魔石が光り出し、虹色だった魔石の色は金色と緑色が入り交じったものに変わった。


「ほう……光と風か。いきなり二属性持ちとは凄いじゃないか。

 光、水、土のいずれかがあれば、回復魔法にも適性があって使いやすい。組織に所属せずに戦う者には特に必要な属性だ。

 そして風があるならラジク殿のように、剣術と組み合わせた戦闘にも向いている。属性が同じならラジク殿から教わるのも楽になるだろう」


 僕の属性が判明すると、隣で見ていたモルド神父が嬉しそうに言う。


 そういうものなのかぁと僕は話を聞いていたが、ふと気になったのでモルド神父の属性について聞いてみた。


「俺の属性か? まぁ隠すような事でもないか。

 元々は火と土、それと弱いながらも無属性を持っている。

 それから俺の魔法を見て知っているだろうが、火よりも強力な溶岩というか火山の魔力も持っている。正式な属性名はわからん」


 えっ、四属性? モルド神父ってそんなに属性持ってるの!?


 師匠からは神父の父親が無属性だったと聞いていたけど、神父も無属性持ちだったんだ……。それにしても元々三属性持ちで更に溶岩かぁ。

 この事を師匠が知ったら、ますますモルド神父への尊敬が激しくなりそうだなぁと考えていると、神父は少し声を潜めて続ける。


「本来は隠すことでは無いのだが、俺の場合はあまり知られると面倒な事が増えるから、土と無に関しては殆ど知られていない。お前もペラペラと話さないように。わかったな?」


 僕の考えを読んでいたのか、それとも何か不都合があるらしく釘を刺された。

 ……師匠、残念ですがこれは秘密だそうです。


 そうして僕の属性検査を無事に終え、教会へ帰ろうとしていたところに知らない声が聞こえてきた。


「モルド? おお、モルドではないか。久し振りじゃのう!」


 僕が声の主を探していると、隣のモルド神父がボソッとした声で呟く。


「ぬぅ、しまった。ジグ、先程の俺の属性の話はくれぐれも口にせぬように。それとお前のこともだ。ここからは俺に任せて、お前はとにかく喋るな。下手に話すと面倒が増える」


 よく分からないが神父が少し焦っている。ここは黙って頷いておこう。


 僕らが振り返ると大通りの向こうから手を振り、通りを渡ってこちらに近付いてくる、杖をついたお爺さんがいた。


 そしてそのお爺さんの後からは、困惑したような表情のローブを着た集団が付いてくる。

 お爺さんは馬車が来ようが視界には入ってないらしく、通りを突っ切ってズンズン進んでくる。杖はどうやら飾り程度のものでしかないようだ。

 それをお付きのローブ集団が、馬車から守ったり頭を下げたりしながら付いてくる。


 お爺さんが僕たちの前に来ると、モルド神父は珍しく頭を下げて丁寧に対応する。


「こんにちは、賢者サイモン。私に何かご用ですか?」


 サイモンと呼ばれた老人は、ボリュームのあるモコモコとした真っ白な白髪に、同じく真っ白でお腹くらいまである長い顎髭(あごひげ)を生やして、灰色の目をしたお爺さんだった。


 かなり高齢なようだが、それを感じさせないエネルギーに満ちているような人だ。

 自分の背丈ほどもある、先端に虹色の魔石のような物が付いた木の杖を持ってはいるが、先程の歩き方を見ても足は悪くないらしい。


「用と言うほどではない、ワシが作った義手の調子はどうかと思っての」


「えぇ、もう慣れましたし、とても使いやすいです。生活するだけならそれほど不便は感じません。

 しかし、これで敵と戦えたならと思うと残念でなりません」


 モルド神父は義手を動かしながら答える。


「はっはっは。お前さんの戦い方に耐えられる義手なんぞ、この世に存在せんじゃろうて。

 して、その子は? お主が子供連れとは珍しいのぅ」


 サイモンは神父と義手を見て笑い、続いて僕の方をまじまじと見て尋ねる。


「この子は孤児院の子供です。将来は冒険者になりたいとのことで、まずは属性の確認をと思いましてね。風の属性が判明し、確認も終わったので帰るところです」


 モルド神父は、サラッと光属性のことは無かったことにして、いつもより愛想多めで答えていた。


「そうかそうか。感心なことじゃ。頑張って鍛え立派な冒険者になるがよい。珍しい素材が手に入ったら、ワシのところへ直接持って来い。高値で買い取るからのぅ」


 サイモンはご機嫌な様子で言い、僕は黙って頷いた。


「では私達はそろそろ……」


「また何か希望があれば作ってやるからのう。いつでも言うんじゃぞ」


 神父が僕を連れて帰ろうとしたら、サイモンがその背中に向けて声をかける。

 振り返ったモルド神父は、お気持ちに感謝しますと答えるとサイモンに挨拶し、僕を連れて教会への帰り道を急ぐ。


「何だかあのお爺さんを、神父は随分と苦手にしているみたいですね?」


 普通に会話だけを聞いていれば、好々(こうこうや)といった感じの良い老人だったが、モルド神父の反応が引っかかったので尋ねてみる。


「あれは王宮の筆頭魔導師で、賢者と呼ばれるほど優れた魔導師だ。歳も百をとうに超えているはずだが、あの様子では更にあと百年は生きそうだな。

 要職に就いているがかなりの変人で、研究のためには周りの迷惑も顧みない部分があってな。ことある毎に俺の溶岩魔法を研究したがっている。

 今回は義手のためには仕方なく協力をしたが、出来るだけ関わりたくない人物だ。

 どのくらい関わりたくないかと言えば、病み上がりとはいえ俺が倒れるかと思うほどに魔法を使わせる人だと言えば、おおよそ予想出来るだろう。

 まさかこんなところをウロウロしているとは思わなかった。いや、考えが読めないのは以前からか……。

 基本は良い人なのだが、研究が絡むとなかなか面倒だ。お前も気をつけろよ」


 いつもは無口なモルド神父が珍しく口数が多い。

 それほど苦手なのかと思っていると、色々驚く事を立て続けに言われた。


 百歳を超えてあの元気だとか、王宮の筆頭魔導師だとか、賢者だとか。充分に驚く事があったはずだがそれよりも、モルド神父が倒れるかと思うほどに魔法を使わせたというのが一番ヤバイ気がした。


 ……うん、なるべく関わりたくないね。


 そんなやり取りがあって、賢者サイモンに恐れを抱いているうちに教会へ戻ってきた。

 モルド神父は出発前に比べて、なんだかとても疲れたような顔をしている。

 まぁ、原因はわかっているけれど。


 とりあえず警備をしているラジクに自分の属性について報告し、明日以降の計画を考えてもらう。

 街に行って属性検査やサイモンと遭遇して話をしたこともあり、いつもより時間が無いのでその日の残り時間は、剣術訓練を行うことになった。


 僕の剣術訓練の相手をしているラジクは、明日以降の予定を考えているのか、なんだか楽しそうだった。


 上の空でも僕の相手は務まるらしい。まだまだ先は長いようだ。

ジグの属性は光と風でした。


サイモンが初登場。簡単に言えばマッドサイエンティストな感じのお爺さんですね。

付き合わされる周りは大変です。


モルド神父は思わぬところでサイモンと遭遇して、ぐったり。

ラジクはジグが自分と同じ属性だったことで、何を教えたら良いかとウキウキです。


次回は属性魔法の習得の予定です。

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