第24話 訓練開始 その2 体力作りと戦闘経験と師匠
引き続き訓練の模様。
倒れた翌日、神父はなんだかションボリしています。
翌日、前日からグッスリ眠った(?)僕は目を覚ました。
午前中、ラジクはいつも通りに剣の指導をしてくれたが、午後からの身体強化訓練ではモルド神父と話をしてもなんだか遠慮がちな物言いで、なんとなく歯切れが悪かった。
訓練はと言うと前日のように身体強化ではなく、普通に長距離を走らされた。
身体強化しながらよりは楽なんだけど、何かあったのかな?
「はぁ、はぁ、ふぅ……」
しばらく走った後に休憩に入る。
どうにも気になったので嫌がる神父をしつこく問い詰めたところ、しばらくしてようやく白状した。
「あー、昨日お前が倒れた事がヒルダの耳に入ってな。どのように訓練したのかを聞かれたので、ありのままを答えたら……まぁ、その、なんだ。
子供相手に自分を基準にして考えるな、基本は体力作りからだろうと怒られてしまってな……」
ヒルダに叱られたらしい神父は、かなりバツが悪そうな顔をして教えてくれた。
なんだか弱りきった感じになっているモルド神父が、とても珍しくて思わず笑ってしまった。
モルド神父がヒルダには頭が上がらないというのは聞いていたけど、本当にそうだったとは。
「そういうわけでしばらくは魔力は用いず、基礎体力を優先してつけるように訓練する。
ラジク殿の訓練も明日以降は、体力や筋力増強に重点を置くように言ってある。まずは土台を作らねば、これからの訓練にもついて行けん。
それと今後は倒れる前に、自分から訓練を中断するように」
モルド神父はこれからの計画を説明し、最後に僕が無理をしないよう釘を刺した。
それからしばらくは午前も午後も、長距離走や短距離の走り込み、素振りや型の練習、筋力トレーニングなど、つまらないとも思えるメニューが続いた。
訓練の合間の少し長めの休憩中には、ラジクやモルド神父がそれぞれ過去に戦ったモンスターの話やセントリング国内の地理、地域ごとに生息しているモンスターの違いや人間以外の種族の話など、体を動かした分は休憩中に頭を使えと言わんばかりに、色々と教えてくれた。
そして魔力を使わないのは勿体ないのと、畑の周りをグルグル回るだけでは飽きてきた僕の気分転換も兼ねて。
更に教会の仕事を減らすという一石三鳥な考えのもと、僕はモルド神父に付き添われながら復興中のスウサやトイスまで、走って行っては祈りを捧げて結界を張り、また走って教会に戻ってきたりもした。
そんな訓練を続け、更にリッツソリスの北にある岩山を軽装備で登ったり、岩山を過ぎて北の山脈の大鉱山まで、そこそこ傾斜のある山道を登っては街まで戻ったり、街の東にあるイスフォレの森の中、ちょうど街とイスフォレ村の中間にある狩猟集落までの往復など、様々な訓練を経験して長距離を走るのも苦にならなくなってきた頃。
僕の体力が以前とは比べ物にならないと確認できたため、ようやく訓練を次の段階に進めるとモルド神父が宣言した。
まずは身体強化をしながらの長距離走だった。倒れたことを思い出して注意しながら走っていたが、今回は暗くなるまで走っても倒れなかった。
退屈に感じ延々と続いた基礎訓練も、やはり大事なのだと実感できた。基本、マジ大切。
モルド神父に体力作りからやれと言ってくれたヒルダには、本当に感謝だね。
そこからは魔力を使わずに行っていた基礎訓練を、身体強化を使いながら同じようにこなしていき、これも難なくクリア出来た。
以前も神父が言っていたように、僕の魔力量は普通の人よりも多いらしい。
更に身体強化とラジクに教わった剣術も使って、イスフォレの森で狩りをした。
耳や眼に魔力を集めることによって聴力や視力も上げられるようで、森の中でも獲物を探すのにはそれほど苦労しなかった。
ついでに教会の食料も調達できて、一石二鳥だ。
それから普通の動物を難なく狩れるようになると、弱いモンスターを見つけては狩るようになった。
休憩中に教わったモンスターの動きや特徴、どういった攻撃をするかなどを思い出しながら戦い、たまに逃がしたり反撃を受けることもあったけれど、どうにか倒せた。
休憩中の雑談かと思いきや、案外しっかりとした座学を受けていたのかもしれない。
それに走って行った先で結界を張ったり、動物を狩って肉や毛皮を手に入れたり、魔物を狩って素材を持ち帰っては街で売ったりして、地味にではあるが教会の皆の助けになるような訓練をしている気がする。
僕が訓練ばかりをして皆にはその分の仕事もさせていることで、僕が引け目を感じなくて済むように、訓練以外の部分でも実益も兼ねた内容をモルド神父は考えてくれているのかもしれない。
教会や孤児院の皆は応援してくれているけど、僕としては心苦しい部分もあったから、とてもありがたい配慮だった。
そうしているうちに剣術も身体強化の訓練も、どんどんと難易度を増していく。
身体強化に慣れ、剣術が磨かれ、モンスターとの戦闘経験で魔力量が増えるにつれて日帰りで行ける範囲も広がり、倒せるモンスターも増えてきた。
街から離れればそれだけ強いモンスターも出てくるので、戦う相手は徐々に強くなっていった。
そろそろ遠距離から撃てるような魔法が欲しいなと思っていた頃だった。
「剣も身体強化もかなり使えるようになってきたし、そろそろ戦いの幅を広げるために、ジグの属性を調べても良いかもしれんな。モルド殿からは何か言われているか?」
中庭でいつものようにラジクから剣術を教わっていた時、突然そんな事を聞かれた。
えっ、属性ってどうやって調べるんだろう、自分にはどんな属性があるんだろうと、思わずワクワクしてしまったが、モルド神父からはまだ何も言われてない。
「まだ何も言われていません。もうすぐ昼食ですし、午後の訓練の前にラジク様からそういう話があったと、モルド神父に伝えておきます」
僕が汗を拭いながら答えると、ラジクはやれやれと言った表情でこちらを見る。
「おいおい、一緒に過ごすようになってしばらく経つし、いい加減慣れてきているだろう?
そろそろ様は止めてくれ。それに二人でいる時はもう少し気安く話してくれて良い。俺にとってもその方が楽だ。
自分としても騎士面をするのは、他の者達の前や公の場だけで良い。肩が凝るしな」
そんな風にニカッと笑ったラジクに言われた。
急にそんなことを言われてもなぁ……。普段から砕けた態度でいると他でも間違えてそのままになりかねないし、それはお互いのためにも良くないと思う。かと言って無碍に断ることもしづらい。
親切な兄貴分みたいなラジクを、僕はかなり好意的に捉えている。ぶっちゃけ年や身分が同じくらいなら、友達になりたいくらい良い人なのだ。
一度だけ襲撃の時に、ラジクさんなんて呼んだ事もあるけど、あれは緊急事態だったからなぁ……などと考えていたところで、良い考えが浮かんだ。
「じ、じゃあ流石に騎士様をラジクさんとは呼びにくいので、剣術の師匠ということで、先生とか師匠と呼ばせてください。
その、僕は場面に合わせて呼び方を器用に変えられるか分からないので、先生や師匠なら他の人の前で呼んだとしても、さん付けよりはマシかなと……」
僕はラジクの反応を窺いながら言ってみた。
するとラジクの表情がパアッと輝く。
「おおお、それは良いな! 先生と師匠か……それなら師匠だな。うむ、なんか格好良いじゃないか。それにしよう!」
ラジク……もとい師匠は、ノリノリで僕の提案を受けてくれた。
ヒルダには頭の上がらないモルド神父は怒られてションボリ。
ジグは体力作りの後、結構成長してきています。
ラジクは堅苦しいのがそろそろ限界。
そこに師匠と呼ばれてウキウキです。
次はジグの属性を調べます。




