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転生の糸使い [830万PV突破・400万字、900話以上の大ボリューム!]  作者: 青浦鋭二
第1部 教会の孤児編 (襲撃・修行・エルフの里・黒骸王・巡回の旅・王都攻防戦)

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第23話 訓練開始 その1 属性の話と身体強化訓練

いよいよ訓練開始です。

 モルド神父が教会に戻るまでのあいだ、先に僕はラジクから剣の訓練を受けることになった。


 剣の種類や特徴、型や扱い方を習い、まずは木剣(ぼっけん)を使って動きを体に覚えさせていく。

 構えの練習や素振(すぶ)りを終えて休憩していた僕は、ジェネラル・オーガとの戦いの際にラジクが使った斬撃について聞いてみた。


「あぁ、あれは魔法の一種だな。俺の属性は風だから、あのような使い方が得意なのだ。属性については知っているか?」


「いえ、あまりよく分かりません」


「属性には光、闇、火、水、風、土、雷、氷などがある。などと言うのはモルド殿のような例外も存在するからだ。だが、そのモルド殿も元は火属性だったと聞いている。

 例外といえば稀に無属性というものもあるようだが、これは属性が無いのではなく単純に破壊の力として存在する属性のようだ。対象を無に帰すような力を持つことから、そのように呼ばれるようになったらしい。

 俺が知っている限りでは、モルド殿の父上の『砕拳(さいけん)』ガルド将軍が無属性であったと聞いている。勇者でもない人の身でありながら、魔王軍四天王を討ち取ったほどのお方だ。無属性というのも頷ける」


 ラジクは各属性について説明し、途中からはモルド神父とその父の話を例に出して嬉しそうに語っていた。そして話が逸れたと言って説明を続ける。


「属性は魔力を持つ者なら強弱の違いはあれど、誰もが必ず一つは持っているものだ。そして経験を積んだり鍛えていたりすると、強くなったり増える事がある。

 火属性のモンスターを狩り続けていたら火属性が増えた。なんて話を聞いた事があるが、それが正しいのかはわからない。それを真似た人間が必ずしも同じように、属性を増やしたわけではないからだ。

 それと選別の儀式で属性そのものが増えたり、自分の持つ属性とは違う、他の属性の魔法を授かったりすることもあるそうだ。

 そういった例とは別に、生まれつき複数の属性を持つ者もいる」


 属性は先天的に備わっているものと、後天的に獲得するものがあるらしい。取得の仕方も様々だが、こうすれば必ず手に入るという手段は無いようだ。


「自分の属性以外の魔法は使えないことはないが、発動までの時間や魔力消費が異常に増える事。

 威力や精度が格段に落ちることから実戦向きではなく、基本的には自分が持つ属性以外を使うことはほとんど無い。

 例外として選別の儀式で授かった魔法に関しては、たとえ属性違いでも得意属性と同様に使えるらしいぞ」


 一通り説明するとラジクは「あとはそうだなぁ……」と呟いて少し考え込む。


「あぁ、あとは住む地域や種族によっても、属性には得意としやすいものが違うようだ。

 魔族は闇、エルフは風と光、リザードマンは水と雷、ドワーフは土と火、精霊は強めの全属性、人間は弱めの全属性といった感じだ。

 そういえば北の山脈の向こう、一面が雪と氷に閉ざされた土地には高い戦闘力と極めて強い氷属性を持った、氷雪族(ひょうせつぞく)という人々がいるそうだぞ。騎士たる者、一度は手合わせ願いたいものだ……。

 ちなみに強めとか弱めというのは、例えばエルフと人間で同じ風属性を持つ者が、同じ魔力量を込めて魔法を使っても、その威力には違いがあるという事だ。ここまでは大体理解できたか?」


「はいっ」


 ラジクは思いつく限りの説明を終え、僕が頷くと訓練に戻るよう促した。




 そうして十日ほど剣の訓練をして過ごした頃、モルド神父が教会に戻ってきた。右腕には義手が装着されていた。

 魔力を通すことで、戦いには使えないが日常生活には困らない程度に動かせるらしい。


「では訓練を始める。まずはジグ、魔力を体内で巡らせてみろ」


 戻ってきて皆の無事を実際に見て確認し、仕事を任せたカディルとヘロルの仕事ぶりをヒルダから聞き、教会や孤児院の建物を見て回った翌日のこと。

 午前中に自分の仕事を終えたモルド神父が、昼食後にそう言って身体強化の訓練を開始した。


 ちなみに僕は午前中をラジクの剣の訓練、今日からは更に午後をモルド神父による身体強化の訓練にあてているので、教会や孤児院の仕事については免除されている。

 僕が訓練を受けることになった経緯をモルド神父が説明したら、皆はそれを応援し仕事は自分達に任せろと言ってくれた。

 正直ありがたい。ラジクの訓練をこなして午後から普通に仕事をするのなら、厳しいながらもまだ出来たが、これ以上体力を使うと他の仕事を出来る気がしなかった。


 神父に言われた通りに魔力を巡らせると、次はそれを出来る限り長く維持するようにと指示が出された。

 動き回らずにいるなら魔力を消費しないだろう。これなら大丈夫かと思いきや、これが案外辛い。

 数分後には息が上がってしまった。


「まだまだ無駄が多いから持続しないのだ。

 もっと滑らかに、更に速く魔力を巡らせ、加えて外に一切漏らさず体内に留め続けろ」


 速く動かせば暴走に近くなって魔力は体の外へ溢れ出てしまう。

 速さを抑えれば外には漏れないが、流れは滞り滑らかさは無くなる。

 両立させるのは結構難しい。しかもそれを長く維持しなければならない。


「何かコツというか、神父が身体強化を行うにあたって気をつけている事って何かありますか?」


「その辺りは自分で気づいていくものなのだが……まぁ仕方がないか。

 俺は自分を強固な一つの塊として捉えて、その中で魔力を巡らせている。

 だが人にはそれぞれ魔力の特性や質の違いがあり、それの捉え方にも差があるから、俺のがお前に当て()まるかはわからんぞ?」


 塊かぁ。わざわざ全身を思い浮かべて、手足まで細かく考えなくても良いのかな。

 いっそのこと丸い形、球みたいに考えて中で魔力を回転させたらどうかな。そして外側を壁で囲えば、魔力が外に漏れ出さないかもしれないね……。


 あ、薄くて丈夫な金属の殻で出来た卵を想像して、中の白身や黄身を魔力に置き換えて、グルグル回してみようかな。


 考えてみたイメージで魔力を回すと先ほどよりも滑らかに、そして速く循環させることが出来た。外に漏れ出ることも無い。

 モルド神父が止めるまでしばらく身体強化を続ける。先ほどよりも長く維持していたが、疲れはそれほど感じなかった。


「先程とは随分と違っていたな。予想より早くコツを掴んだようで何よりだ」


 モルド神父が褒めてくれたと思ったのも束の間。


「ではそれを維持しながら畑の周囲を走ってみろ。速度は普通で良い、速く走る必要は全く無い。

 出来る限り身体強化を維持しながら動き続けるための訓練だ。体力と魔力の続く限り、無心で走り続けろ」


 この人ときたら真顔で早速、次の課題を出してきたよ。鬼なのかな?


 そうして僕はその日の夕方まで走り続け、見事に倒れた。

ラジクは割と堅実に稽古をつけてくれています。質問にもなかなか丁寧に答えてくれる人です。上位に近い中級騎士ですから、新米騎士の指導もしてたのかもしれません。


モルド神父はなかなかの鬼教官、いや鬼神父?です。

人に教えること自体に不慣れでもあります。

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