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転生の糸使い [830万PV突破・400万字、900話以上の大ボリューム!]  作者: 青浦鋭二
第2部 海の国編 (初任務・火焔馬・海の民・ハイワーシズ)

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第232話 閑話 ポンコツ騎士の力 (アルテミア視点)

今回も引き続きアルテミア視点のお話です。


そして前回で実は100万字を突破していました。

昔は読書感想文で原稿用紙を埋めるのにも苦労していたというのに、よくここまで来られたものだと驚いております。


一人では絶対にここまで続けられなかったと思います。

読者の皆様、本当にありがとうございます!<(_ _)>


物語の大筋はもちろん、ネタもまだまだたくさんありますので、これからも宜しくお願いいたしますヾ(*´∀`*)

 海の民の暗殺部隊に危うくやられそうになったところを救ってくれたのは、同じく捜索に出ていたセラーナ殿の隊だった。

 私はメリルに助けられてその場から離れると、敵の前には虚ろな表情のセラーナ殿が立ちはだかる。


 彼女の生み出した黒い腕によって動きを封じられた暗殺者たちは、初めのうちこそ脱出しようともがいていたけれど、すぐに抵抗を止め、既にその体からは力が抜けてグッタリとしている。


「闇属性による吸魔魔法といっても、あんなに早く相手を行動不能に出来るものなの……?」


「セラーナ様の二つ名にもなっている『夜帳(よるとばり)』は、強力な闇魔法で対象を拘束すると同時に幻覚を見せ、相手の意識も現実から逸らします。

 そして他の闇魔法とは違い、魔力の吸収力も段違いなのです」


 独り言として口から出た私の疑問に、普通に答えてくれたメリルは少し誇らしげにそう言うが、他国の騎士にスンナリと教えてしまっても良いのだろうか。


 ……お人好しというか、抜けているのは彼女も同じなのかも知れない。

 もしくは知られても問題ないと言えるほどに、セラーナ殿の力は凄まじいのだろうか?


「闇属性は攻撃に優れる反面守りが弱い……一気に畳みかけろ!」


「愚かな……」


 闇属性持ちを相手にするなら魔力を吸われる前に、守りに適さない闇属性使用中の相手へ一気に反撃して倒すのが定石(じょうせき)なのだが、暗殺者たちが動き始めるとメリルはそう呟く。


叫喚ノ風(きょうかんのかぜ)…』


 一斉に飛び掛かってくる敵に対してセラーナ殿が緩やかに手を振るうと、辺りには黒い風が巻き起こって暗殺者たちを撫でる。すると彼らはバタバタと倒れて二度と起き上がらなかった。


「風に…ふ、触れただけで…?」


「あれは異常だ! 近付かずに遠距離から集中砲火を浴びせろ!」


 その光景を見ていた暗殺者たちに動揺が走る。

 しかしそこはさすがに命を投げ出すほどの訓練を受け、使命を負っているためなのか。

 すぐに態勢を立て直して次の一手に出る。


『ウインド・カッター!』

『アイシクル・ランス!』

『ライトニング!』

『ウォーター・バレット!』

『エル・ファイアー!』

『ホーリー・レイ!』



嘆キノ壁(なげきのかべ)…』


 周囲から一斉に放たれた魔法に対してセラーナ殿は、自分を取り囲む滑らかな黒い石壁を生み出すと魔法はそれに阻まれ、そして消えた。

 それと同時に彼女の魔力が膨れ上がる。恐らく攻撃を防ぐと同時に吸収して魔力に変換したのだろう。


「この化け物…いや魔女め……臆するな! どんなに強かろうとも此奴(こやつ)とて人間だ! 強力な一撃を複数与えれば必ず討ち取れる! 命を捧げよ!」


「はっ!」


『ホーリー・ライト!』『ホーリー・レイ!』

『エリア・プリフィクト!』


 暗殺者たちは魔力を高めて各属性を纏うと、まず先に光属性持ちがセラーナ殿へと攻撃を開始して闇魔法を相殺・浄化していき、それと同時に多数の自爆要員が突撃を開始する。


「いけない……あれでは防ぎきれないわ!」


「まだ治療が終わってませんから、アルテミア様は動かないでください!

 それにセラーナ様ならきっと大丈夫です……!」


 立ち上がろうとした私を止めながら、メリルはそう言ってセラーナ殿を見守る。

 周囲から一斉に浴びせられた光魔法によって、黒い壁は燻り崩れてきていたが、その中に立つセラーナ殿は既に迎撃の準備を整えていた。


常闇ノ雫(とこやみのしずく)…』


 発動した彼女の魔法は周囲に漆黒の雨を降らせると、光魔法を打ち消して辺りを黒く染めあげ、自爆攻撃のために接近してきた者たちの纏っていた魔力を、文字通り根こそぎ奪い取った。


「……て、撤退! 残った者は第二、第三隊に合流して、とにかくこの事を知らせろ!」


夜帳(よるとばり)…』


「ひっ……ぎゃあぁぁぁアッ!?……」


 勝てないと悟ったのか、それとも怖じ気づいたのか。暗殺者たちは散り散りになって、どうやら別の場所にいる味方の元へと逃げようとした。

 しかしセラーナ殿はぼんやりとその背中を見ていたかと思うと、手を伸ばして己の二つ名の元となった魔法名を呟く。


 すると悲鳴を上げて恐慌状態になっていた暗殺者たちは、黒い腕に抱かれるとすぐに大人しくなり、辺りに生きている者は私たちだけとなった。


「あれだけの敵を単独で、しかも無傷で全滅させるなんて凄いわね……」


「ですから私は申し上げたのです。普段のセラーナ様は頼りないですけれど、本当は凄いお方なのですよっ」


 私は想像以上の実力を見せられて驚いていると、メリルは誇らしげに、そして自分のことのように嬉しそうに答える。

 すると虚ろな表情をしていたセラーナ殿が正気に戻ったのか、キョロキョロし始めた。


「あれ……私はいつの間に……ひぃっ、また知らないあいだに周りが死体だらけになってる!?

 ……メ、メリル…メリルはどこぉ~! ひぃぃぃ、怖いぃ……」


 足元に転がる暗殺者たちを見て縮み上がり、彼女はその場でオロオロし始める。


「あ、あの……戦闘になると恐怖で感情がシャットアウトするのですが、敵がいなくなったのを確認するといつもあのように……」


「二人は命の恩人だもの、感謝してるしフォローなんて必要ないわ。

 それよりも早く行ってあげて。セラーナ殿がもう泣きそうよ?」


 主と同じくオロオロしながらフォローしていたメリルに対して、私は感謝と尊敬の念を込めてそう言うと、ホッとした表情のメリルはセラーナ殿の元へ迎えに行く。


「私を放ってどこ行ってたのメリルぅ~!?」


「アルテミア様の治療をしておりました! それにセラーナ様の近くにいたら、私たちまで攻撃に巻き込まれるではありませんか。

 いい加減に恐怖で我を忘れるのを直していただかないと、いつまで経ってもセラーナ様をお一人で戦わせることになりますから、もう少し頑張ってくださいませ!」


「ご、ごめんねぇ~!」


 メリルがセラーナ殿の手を引きながら、そんなやり取りをしている。


「お二人とも、助けていただきありがとうございます。しかし私はすぐに行かねばなりません。あれほどの敵がいるのなら、弟子と合流してから捜索を再開したく思います」


 二人がこちらに戻って来ると、私は頭を下げてお礼を述べる。

 するとセラーナ殿は何だか照れくさそうにして顔を赤らめ、メリルの後ろに隠れて何やら小声で呟いた。


「……えっ?」


「セラーナ様、そういうことはご自分でハッキリお伝えください……」


 聞き取れなかった私が聞き返すと、助けを求めるようにメリルの背中に隠れたものの却下され、セラーナ殿はモジモジしながら再び顔を出す。


「ア、アルテミア様のお役にたてて良かったでしゅ……ご、ごびゅうん(ご武運)をお祈りしておりまひゅあ……」


「うふふっ、ありがとうございます。私からもお二人のご無事を祈らせていただきますから、必ずや任務を果たし、また会いましょう」


 美しい黒髪とは対照的に真っ白な肌を赤く染めているセラーナ殿と、それを見て恍惚の表情を浮かべるメリルにそう告げると、私は回復薬を飲んで治療を終えたばかりの体に鞭打って跳び上がり、近くの建物の上へと登る。


 すると街の炎に照らされた夜空には、遠くに白い狼煙が二本上がっているのが見えた。

ポンコツ騎士セラーナの無双回でした。


彼女の力は強力な闇属性だけでなく水、風、土属性も持っていることから、以前に出てきた黒骸王のように他の属性との併用によって攻撃力や防御力を増しています。


しかしこれは二つの属性の混合使用であり、身体強化と魔法剣といったように2属性を別々に使うよりも難しいので、出来る人はあまり多くありません。

(イリトゥエルのアイシクルテンペストやルミアのネメシスがこれに該当しますが、彼女たちはそもそも普通ではないので(笑))


ただ、苦戦していたアルテミアとセラーナではセラーナが強いというわけではなく、セラーナにとっては暗殺者たちとの相性が抜群だっただけなので、もし二人が戦う場合にはまた違った展開になってくるかと思います。


ひとまず窮地を脱したアルテミアですが完全回復とはいかず、また敵もたくさん残っています。そしてルミアたちが上げた狼煙がアルテミアに見えるということは、他の者たちにも見えるわけです……。


というわけで次回はルミアかクリムゼリス視点の閑話となりそうです(仮)

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― 新着の感想 ―
[良い点] やはり来ましたな。 普段はポンコツ、でもやればすごくすごーく出来る子。 そして全てが終わるとポンコツアゲイン。 たまりませんね。うん。 そしてセラーナ&メリル組。 なんですか! この可愛…
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