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転生の糸使い [830万PV突破・400万字、900話以上の大ボリューム!]  作者: 青浦鋭二
第1部 教会の孤児編 (襲撃・修行・エルフの里・黒骸王・巡回の旅・王都攻防戦)

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第19話 モルド神父の呼び出し その2 昔話と誓い

ジグとアマリアはモルド神父に呼び出され、各々に話があるとのこと。

「まずはアマリア、君への話からだ」


 僕たちに席を勧め、座ったのを確認するとモルド神父は話し始めた。


「今回の魔族やモンスターによる大規模なリッツソリス襲撃は、元・魔王軍四天王である『百化(ひゃっか)』のルナメキラが、俺個人に対して抱いている復讐心を動機として行われた。

 あわよくばリッツソリスも落とす予定だったようだが、主な狙いは俺が守るものを殺し、破壊し尽くして後悔や苦痛、絶望を与えることが狙いだったようだ」


「あの、神父様。それが私となんの関係が……?」


 突然の話にアマリアが困ったように聞く。


 アマリアの気持ちはわかる。そんな大それた事に孤児であった自分が関わっていると普通は思わない。

 でも僕は戦闘中に交わされたモルド神父とルナメキラの会話を聞いていたので、何となく察しはついていたが今は大人しく聞くことにした。


「詳しく話すと俺自身の話も含んで長くなるのだが……良い機会だ。全て説明することにしよう」


 そう言ってモルド神父はどこか遠くを見るように懐かしいような、悲しいような目をして昔話を始めた。



「俺は平民出身でありながらセントリングの将軍になった『砕拳(さいけん)』のガルドと、その妻であるモルガンの間に生まれた。

 幼い頃から軍人になるべく鍛えられ、生まれつき豊富な魔力量も相まって、成人前の時点で下級騎士以上の実力があると言われるまでになった。

 来年には成人を迎えるという年に、父は当時の魔王軍四天王であった『虐狼牙(ぎゃくろうが)』ウルファルクを激戦の末に討ち取ったが、自身もその戦いで致命傷を負い亡くなった。

 母は嘆き悲しみ、俺が成人を迎えたのを見届けると父の後を追うように、病で亡くなった」


 モルド神父はこれまで一度もしたことが無かった自分の過去を話し、僕とアマリアはそれを黙って聞いている。


「生前の父にはアベル将軍という、同じく平民出身の同僚であり親友がいた。

 彼は戦死した父の遺体を負傷しながらも戦場から連れ帰ったり、両親の死後は身内のいなくなった俺の後ろ盾というか後見人というか……とにかく色々と気にかけて、何かあるたびに世話を焼いてくれた人だった。

 まぁ、俺にとっては第二の父親のような人だな」


 そう言いながらモルド神父は懐かしむような、少しだけ嬉しそうな表情を浮かべる。


「俺は成人後にアベル将軍の口添えと、実力を確認するために出された課題に合格したこともあって、街の衛兵からではなく正規軍に配属され、アベル将軍の配下として前線で魔王軍との戦いに参加するようになった。

 そうして一年が経つ頃には、武功を評価した将軍から直属の部隊長に任命され、彼の留守を預かったり隊を率いて別働任務をこなしたりするようになっていた。

 今思うとあの頃の俺は同期で自分に並ぶ者は無く、戦いに出れば負けを知らず、任務には必ず成功したことで天狗になっていた。自分に出来ぬ事は何も無いと慢心していた。

 そのどれもこれもが将軍の立てる優れた作戦と、周囲の協力あってこその戦果であって、俺一人の力ではないのにな……」


 ここまで話すとモルド神父は一旦話すのを止め、ベッドの脇のテーブルに置いてあったコップの水を飲み干し、しばしのあいだ目を伏せた。

 そして大きく息をつくと再び(まぶた)を開き、話を続ける。


「魔王軍との戦いは神に選ばれた勇者の協力もあって、我々が徐々に優勢になっていた。

 しかし、そのまま勢いに乗って攻め続けると追い込まれた魔王軍の猛反撃で、どれほどの被害が出るかわからないという勇者側の意見が出た。

 将軍たちが協議した結果、最終的には四天王が率いる迎撃部隊を各地で将軍たちの部隊が抑えているうちに、勇者やその仲間が魔王に直接戦いを挑み、討ち取る作戦をとることになった」


 すでに物語にもなっている勇者と魔王の戦いの裏では、各地で四天王と各国の軍が激しい戦いを繰り広げていたらしい。


「そしてアベル将軍が率いる軍はウルファルク亡き後、新たに四天王となっていたルナメキラの迎撃部隊と交戦し、一進一退の攻防を繰り広げていた。

 ある日アベル将軍が出陣し、俺は他の部隊長や自分の部下と共に本陣の留守を任された。しかしそこに敵軍の別働隊に襲われたと、近くの森にある村から救援要請が来た。

 他の部隊長は本陣の留守を預かる我々が動くことは出来ない、まずはアベル将軍に連絡を取り指示を(あお)ぐべきだと言ったが、俺は助けを求めている者を見捨てたくはなかったし、自分なら何とか出来ると思っていた。

 あぁ、そういえば二人はカルスト殿を知っているのだったな……」


 南門の兵士長であるカルストの名前が出ると、モルド神父はフッと自嘲(じちょう)するように笑いながら呟いた。


 もしかすると他の部隊長というのは南門のカルスト兵士長の事だろうかと、この兵舎で彼と初めて会った時のことや、今のモルド神父の言葉の意味を考えていると、神父は更に話を続ける。


「俺は周りの制止を振り切り、部下を連れて村へと救援に向かった。村にはモンスターがいたが、俺と部下たちはそれらを難なく蹴散らし村人を保護した。

 しかし敵の排除を問題なく終えたと思った矢先、周囲の森から一斉に、蹴散らした数とは比較にならないほどのモンスターの大群が押し寄せてきた。

 俺たちは必死に防いだが部下は次々と倒れ、俺は負傷しながら一人で敵の猛攻をなんとか(しの)いでいた。すると大群の中から、アベル将軍と対峙しているはずのルナメキラが現れた。

 奴はそれまでに何度も俺やアベル将軍と交戦してきた過程で、将軍が指揮することで俺の突破力が活かされ、魔王軍相手に何度も戦果を挙げていることを見抜いたようだ。

 そして少数の部隊を率いた自分がいると偽の情報を流し、囮を使ってアベル将軍が率いる主力を誘い出して、その間に邪魔な俺を罠にかけて討ち取る作戦をとった。

 しかし俺がそれに気づいた時にはもう手遅れで、周りには味方も無く、包囲され逃げることも出来ずに、後は敵をどれだけ道連れに出来るかという状況だった」


 モルド神父は当時を思い出しているのか、その表情はどんどんと曇っていく。


「だが、奴はそれも許さなかった。村人を人質にとり、俺がこれ以上抵抗しなければ村人は助けてやると言ってきた。

 奴の言葉を信じるつもりはなかったが、このまま見捨てることは出来ないし戦ってもいずれ死ぬのなら、僅かな望みに賭けたいと思った。

 俺は抵抗を止め、ルナメキラに攻撃されるがまま耐えた。やがて血だるまになって倒れた俺を見て、もうまともに戦えないと判断したルナメキラは部下に命じて村に火を放ち……そして村人を次々に焼き殺し始めた。

 俺に助けを求めながら、そしてルナメキラに命乞いをしながら泣き叫ぶ村人たちを、奴は心底楽しそうに(なぶ)り殺し、俺はそれを見ているしか出来なかった」


 ギリギリという音が聞こえたので見てみると、モルド神父は血が滲むほど左手を強く握り締めていた。


「そうして村人は全滅し次は自分の番だと思った時、知らせを受け引き返して来たアベル将軍が救援に駆けつけると、俺はどうにか助け出され治癒術士の治療を受けた。

 強行軍で数を減らしていたアベル将軍の部隊は、それでも将軍の見事な指揮の(もと)でモンスターの大群を押し返していたが、乱戦のさなかにルナメキラが獅子の姿になって現れ、上空から一気にアベル将軍に襲いかかった。

 ……本当に、あっという間の出来事だった。アベル将軍の左肩に噛みついたルナメキラはそのまま一気に上空へと飛び上がり、将軍を爪で切り裂き左肩を噛みちぎって、そこから落下していく将軍に向かって、火球を放ったのだ」


 そう話すモルド神父は、今でもその光景が目の前に見えているのだろう。先ほどよりも更に強く握られた左手は怒りと後悔に震え、眉間には深い皺が刻まれている。

 魔力が(うっす)らと漏れ出ていたが、それに気づくと無理やり押さえ込む。


「俺はその光景に我を失い、ルナメキラめがけて突っ込み、奴の左角と左眼を奪ったが倒しきれずに取り逃がしてしまった……。

 その間も部隊は指揮官を失いながらも敵を必死に防いでいた。将軍を守りながら前線から下がらせ、治癒術士が懸命に治療していたが、致命傷なのは本人が一番わかっていた。

 ルナメキラが去った敵軍は、やがて統率を失って散り散りに逃げていき、その隙に副官に退却の指揮を任せ、俺を近くに呼んだアベル将軍は……こう言った」


 モルド神父はそう言ってアマリアの方を見つめる。

 アマリアはその視線を真っ直ぐに受け止め、次の言葉を待つ。


「私には今年で三歳になる一人娘がいる。私の赤い髪と、妻であるマリアの赤く美しい瞳を持った可愛い女の子だ。

 私たち二人の名前から、娘はアマリアと名付けた。

 私が戦場にいる間に元々病弱だった妻は、産後から崩れたままの体調が回復せず、娘が二歳になる前に亡くなった。

 私と妻の親族も魔王軍との戦いや疫病で、既に皆亡くなっている。このうえ私までいなくなれば、あの子は一人になってしまう。

 どうかあの子を守って欲しい。せめて成人し、独り立ちするまでで良いのだ。

 この私の最期の願い、どうか聞き届けてはくれまいか、と……」


 自分の過去や両親の話を聞いたアマリアは突然のことに呆然としているが、更にモルド神父は続ける。


「俺はその願いを聞き、アベル将軍の前で君を守ると誓いを立てた。そしてアベル将軍……いや、君のお父上は君のことと、身に着けていたマリア夫人の指輪を俺に(たく)し、息を引き取られたのだ」


 それを聞いていたアマリアは目に涙を溢れさせ、左手に着けている指輪を大切そうに胸元で抱きしめ、泣き続けていた。

 それをしばらく見ていたモルド神父は、やがて苦悶に満ちた表情で口を開く。


「アマリア、君の父上を死なせたのは俺だ。

 愚かだった俺は自分の力を過信し、周りの忠告を聞かず無謀な行動を取り、むざむざ父上を死地へと踏み込ませてしまった。本当にすまない」


 神父は深々と頭を下げてアマリアに謝罪した。


「もっと早く、少なくとも成人を機に言うべきだったが、ルナメキラがいずれ復讐しに来るであろうことを考えると、その前に打ち明けてもし君が俺を(きら)って教会を離れることになれば、守ることが難しくなると判断して先延ばしにしてしまった。

 今回の襲撃でルナメキラは教会の者たち……いや、もっと言えばアマリア、君を狙っていたのだ。アベル将軍に託され守ると誓った君を亡きものにして、俺が守れなかったことを悔やみ、嘆き、絶望しているところを充分に楽しんでから、復讐の仕上げとして俺を殺すつもりだったのだ。

 だが運良くイスフォレで計画が露見(ろけん)し、騎士団や兵士達が教会の守りにつき、そしてジグが時間を稼いだ事によって、奴の思惑(おもわく)は外れた。

 だが今回の事で俺は右腕を失い、もし次に何かあった時、これまでのように防ぐことは恐らく出来なくなった。

 幸いにも今回の件で騎士団や兵士の中には、教会への見方が変わってきた者たちがおり、護衛を志願する者も出てきて守りにも不安が少なくなって来ている。

 このまま騎士団や軍や街の者たちの認識が変わり、教会との関わりや連携が強まれば、今回のような有事の際にも更に教会や孤児院は強固に守られると思う」


 モルド神父はこれまでの事情と、これからの予想を話す。

 でも僕は、それを聞いている隣のアマリアが泣き止んでいる事に気づき、更に不穏な空気を感じていた。


 ……ええと、なんか怒ってない?


「だから、君がこのまま教会に残ることを望むのなら、俺は教会を出て衛兵にでもなり、街から教会の守りや生活等の支援をしたいと思うし、君が教会を出て自分の人生を選んでいくのなら、それを止めないつもりだ。

 だが、教会を出るのなら農民になるのではなく、出来れば街の中で出来る仕事に就き、比較的安全な城壁の中で暮らして欲しいと思っているのだが……」


 モルド神父がそこまで続けたところでガタン!と椅子が倒れ、勢いよく立ち上がったアマリアがモルド神父を(にら)んでとうとう爆発した。

モルド神父の昔の話と、アマリアが孤児院に入った経緯と、2人の出自や両親についての話でした。



砕拳とか百化とか虐狼牙というのは、強い者に対して種族を問わずに付けられる、称号とか通称とか、二つ名的なものです。

モルド神父の爆拳もそれです。


ルナメキラとの場合は、対峙した騎士達は正体を知る前にやられ、ラジクはまともに確認できる状態になく、モルド神父もわざわざ本人の前で言わず、ヴォルグラント達は入れ替わりで来たために姿を見ておらず、この回が初出となりました。


色々と話を聞いていたアマリアですが、何故かモルド神父にお怒りです。次はその2です。

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