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転生の糸使い [820万PV突破・400万字、900話以上の大ボリューム!]  作者: 青浦鋭二
第1部 教会の孤児編 (襲撃・修行・エルフの里・黒骸王・巡回の旅・王都攻防戦)
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第0話 いつかみた夢 (?視点)

作品紹介の意味を込めて未来のチラ見せとなっておりますので、ネタバレが嫌いな方は第1話からご覧ください。


場面としては第一部終盤(第150話付近)のエピソードとなります。

それと文中の○や△で表されているのは人物の名前です。同じ記号が同一人物ですので、分かりにくかったら申し訳ございません(´;ω;`)


 ふと気がつくと腹に強烈な痛みを感じた。


 自分はどうやら地面にうずくまっていて、腹以外にも体のあちこちが痛み、疲労感が全身に重くのしかかっていた。

 見上げると周囲にはたくさんの瓦礫の山があって至るところから炎が上がっているし、その無数の瓦礫の山やまだ崩れていない建物の向こう側からは、空気が震えるほど大きな爆発音が響いていた。

 まるで映画か何かのワンシーンのようだが、こんな映画は観たことがあっただろうか…?


「お願いします○○○さん。このままでは△△△△△が死んでしまう!」


「それは無茶ってものだよ。それに彼の覚悟を無駄にするつもりかい?」


 すると何故か口からは自分のものではない子供の声が発せられ、隣には人間離れした銀髪と金と銀のオッドアイを持つスラッとした長身の女性がいた。

 そしておおよそはハッキリと聞こえるのに、何故か相手の顔の一部や会話の一部だけは、(もや)がかかったように判然としない。


 なんだなんだ?

 まさか映画の登場人物になった夢でも見てるのか?

 最近は忙しくて息抜きするヒマも無かったけれど、そこまで娯楽に飢えているとは思わなかったなぁ……。


「あの体では無理です、それこそ無駄死にになってしまう。

 それに僕は△△△△△にまだ何も返せてないし、このままでは本当に◇◇◇◇が一生、後悔して泣き続けることになります……。○○○さんはそれでも良いんですか?」


「私だって……私だって本当は嫌だよ!

 でも彼の覚悟を聞いた以上はそれを無碍(むげ)にも出来ないし、私たちもここで撤退しないと生きて帰れる確率なんて、本当に僅かなんだよ?」


「覚悟なんて訓練を始める前からとっくに出来ています。

 それに僕は△△△△△の代わりに皆を守ると、あの時に決めたんです! だから、だから……!」


 そう言うと自分の目からは悔しさのせいか涙が溢れてくる。

 女性はとても困ったように「うーん……」と悩んでいたが、やがて近くにいた鎧姿の騎士に声をかけると三人ほどが急いでどこかに駆けていき、しばらくするとこちらも鎧を(まと)った騎士と思われる、三人の男女がやって来た。


「無事か!? こんな事態に最優先で来いとは、新手でも現れたのかと思ったぞ……」


「すでに団長から撤退指示が出ているのに、わざわざ直接伝令を寄越すなんてどうしたの?」


「▽▽▽や□□□□□だけでなく、(わたくし)まで呼ぶなんて一体何事ですの?」


 顎髭(あごひげ)の男、小柄な女性、そして両眼を瞑った女性はそれぞれ長身の女性に問うと、彼女はやれやれといった仕草をして口を開く。


「私たちの弟子がどうしても△△△殿を助けに行くと言って聞かなくてね。どうせなら◎◎を鍛えている二人にも意見を聞きたくてさ」


「あら、(わたくし)は◎◎を弟子にした覚えはなくてよ?」


「******殿はそうかもしれないけど××××××殿の分の借りは、ここでキッチリと返しておきたいんじゃないかと思ってね?」


「それは……たしかにそうですわね」


 長身の女性と目を瞑った女性が話していると、顎髭の男が口を開く。


「それで? 話の流れとしては我々だけで、☆☆☆☆☆を倒しに行くということで良いのか?」


「そういうこと。さすがに▽▽▽殿は話が早くて助かるね」


 顎髭の男に長身の女性が頷くと、小柄な女性が割って入る。


「ちょっとちょっと! 団長の命令は撤退のはずよ?

 それを無視して勝手に動くわけには……」


「でも先生、△△△△△だけを戦わせるわけにはいかないんです。それに僕はこの時のためにずっと厳しい訓練に耐えてきました!

 立場のある皆さんには無理をしてくれとは言いません。だけどその代わりに、僕が動けるだけの回復魔法をかけてください。

 △△△△△に恩を返すのは今なんです。どうかお願いします!」


 またもや自分の口から勝手に言葉が出てきて、涙が(ほほ)を伝い落ちる。

 すると小柄な女性が真面目な声色で自分に問いかける。


「◎◎、本気なのね?」


「はいっ!」


「……わかったわ。仕方がないから私も付き合うわよ」


「おお! それならもちろん俺も行くぞ。

 団長命令だからと我慢していたが、あれだけ好き勝手にされてヤツを逃がすわけにはいかん。

 俺とて仲間や(たみ)を傷付けた☆☆☆☆☆を斬りたくて仕方ないのだ!」


「あら、そういうことでしたら(わたくし)も行きますわ。

 先ほどは仕留め(そこ)ないましたし、それに××××××の受けた借りを(わたくし)が代わりに返してあげなくてはなりませんもの」


 自分が頷くと小柄な女性は諦めたようにそう言い、顎髭の男や目を瞑った女性も賛同する。


「ありゃ。どう説得しようか考えていたのに、案外みんなも命令には不満があったようだね?」


 長身の女性がそう言うと三人とも、まぁね……といった様子で同意していた。


「さて……じゃあ早速△△△殿を助けに行くとするか!」


 顎髭の男が僕の手をとって立ち上がらせる。

 そこに長身の女性が体に手を当ててきて、何やら手の平が光ると魔法のようなものを使った。

 すると体の(だる)さが(やわ)らいで、先ほどよりも楽に動けるようになった。


「皆さん、ありがとうございます!」


 自分は四人の気持ちがとても嬉しくてまた涙が溢れてきたが、今度のそれは希望がまだ(つい)えていないことに対する喜びの涙だった。


 希望が満ちるに従って体からも力が湧いてくる。

 自分を守ってくれた大きな背中を思い浮かべて、僕は歩き出した。




 ~~~~~~~~~~~~~~~~


 ……アラームの音が聞こえる。

 眠気をどうにか退(しりぞ)けながらそれを止めると、眠りながら泣いていたのか目元が濡れていた。


「あれ……? なんか夢を見ていた気がするけど、どんな夢だったっけ……」


 感情を激しく揺さぶられたのは覚えているけど、それは手の平からこぼれ落ちていく砂のように、サラサラと記憶から消えていく。


「まぁ、夢なんてそんなもんか」


 独り言を言いながら起き上がると、仕事に向かうための支度を始める。

 胸が引き裂かれるような痛みはすでに(うず)く程度になっていたが、焦りのようなものだけはまだ強く残っていた。


「あぁ~、今日も残業かなぁ……」


 今月はトラブルがあったせいで残業続きだ。

 疲れているが仕方がない、軽く朝食を済ませて身支度を終えると、僕は誰かに見送られることもなく家を出る。


 こうしていつもと変わらない退屈な日常が今日も始まり、続いていく……はずだった。

本編を読む前に世界観のチラ見せと言いますか、興味を持っていただけたらなという想いで、175話まで書いた時点で追加してみました。


序盤は説明っぽいですが、この第0話で興味が湧いた方には、どうかそこを超えて読んでいただきたく思います。


5ヶ月以上書いていても、なかなかツカミの強い第1話を書けずに足掻いた結果です。どうぞお許しくださいorz


追記。(2021/1/13)

スマホの機種などの違いで記号の表示にバラつき(作者の場合は△のサイズが変化)があるようなので、もし読まれた方の中でそういった症状が出る方がおられましたら、お詫び申し上げます。


それと第150話の前書きに、記号に該当する人物が誰なのかを追加しました。先に読み進めていた方で、誰が誰だか分からないという方は、そちらをご覧ください。

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ハッピーエンド
― 新着の感想 ―
[良い点] これは気になる導入部ですよ。ここまで読みたいと思わせるような。
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