第190話 サスリブ村の討伐依頼 その1 山村と襲撃
2020年の7月31日から活動を始めて、今日でちょうど半年が経ちました。
素人の自分がここまで続けてこられたのは、読んでくださる方々がいたお陰です。
本当にありがとうございます!(*´д`*)
ここまでは平均して毎日1話の投稿が出来ているペースですが、今年は年内に400話突破を目指して頑張りますので、引き続きお付き合いいただけましたら幸いですヾ(*´∀`*)ノ
「ではモルド神父、アマリア達にも宜しく言っておいてください」
「うむ。お前たちも気を付けていくのだぞ」
「師匠もそんな顔しないで、きちんと仕事をして下さいよ?」
「ほ、ほら、お前たちだけではまだ経験が足りないから、俺みたいな保護者がいた方が…」
「却下です。僕たちはもう成人してますし、いつまでも師匠や神父に付いて来てもらわないと、依頼も果たせないんじゃ困ります」
「んむぅ……、わかった。では3人とも気を付けてな」
「はい。ではモルド様、ラジク様、行って参ります」
「心配しなくても私が付いてますから大丈夫ですよ~」
「ギルドからの情報ではそんなに危険は無いですから、三日もあれば戻りますよ。じゃあ行ってきまーす」
僕たちはこうして教会を出発し、身体強化で駆けながら南街道を真っ直ぐ南下して、最初の休憩地点に定めたスウサの砦を目指した。
「……ふう。ひとまずスウサには着いたけど、サスリブ村はたしか西サスリブ山の中腹にあるはずだから……ええと、ここから更に南下して森を越えた先、街道の右手に見える山だね」
「山に入るのは明日の早朝にするとして、今日はどこで野営します?」
「野営かぁ……。そういえばスウサの森で野営したときにも酷い目に遭ったなぁ」
僕はイリトゥエルと話しながら、ゴブリンやオーガに奇襲を受けた時のことを思い出して顔をしかめると、ルミアが手を挙げた。
「はいはいは~い、この地図で見たら大した距離じゃないですし、野営するよりは向こうにある集落で宿でも借りて、その分は明日の朝少し早めに出発したら良いと思いま~す♪」
「おお、その手があったね」
「お風呂にも入れますし、宿を借りられるならその方が私も良いですっ」
ルミアの提案に僕たちは大いに頷くと、その日は集落にある旅人用の宿に泊まり、翌朝の日の出前に出発することにした。
翌日、まだ暗いうちからスウサの集落を出発すると僕たちは、山を登りながら時折現れるゴブリンを倒して目的地を目指した。
そうして日も高くなってきた頃、山道の先に拓けた場所が見えてきて、ようやくサスリブ村に到着した。
「ふぃぃ~、ようやく着きましたね~」
「ゴブリンは相手になりませんでしたけど、山道を登り続けるのは結構疲れました……」
「あははっ、二人はもう少し体力を付けた方が良さそうだね。
じゃあ僕は村長のところに行ってくるから、二人は休憩しながら周りを警戒しておいてもらえる?」
「「は~い」」
僕は村の入り口に残る二人に自分の荷物を預けて、門番をしている村人に村長の居場所を尋ねると、カンディバースの時と同じく「こんな子供が?」といった表情……というか実際に言われたが、今回は身分証としてギルドカードを提示することを忘れなかったので、7級冒険者である事がわかった途端にそれはもう愛想良く迎え入れてくれた。
◇◇◇◇◇
「ようこそおいでくださいました。ワシがこの村の村長です。
依頼を受けてくださったとの事ですが、まさかゴブリンを相手にお一人で……?」
「いえ、僕だけでなく他にも仲間が二人います。今は村の周囲や内部を見て回ってるはずで……あっ、二人とも7級冒険者なので大丈夫だと思いますよ」
僕が説明すると村長は三人しかいないのかといった落胆の表情を見せていたけれど、二人も同じランクであると告げると少し安心した様子だった。
「それでその、ゴブリンはいつ現れてどのように襲ってきたのですか?」
上位種も含むというゴブリンの群れに襲われた割には、村に被害が出ていないようなので不思議に思い尋ねると、どうやら村はまだ直接襲われてないらしい。
このサスリブ村は山の中にあって狩猟や林業などを生業としていて、少し離れたところには伐採場や、小さな川の近くには炭を作る炭焼き小屋もあるらしい。
その伐採場の近くで数日前に村人が初めてゴブリンの姿を発見して、村の衛兵が討伐に向かいこれを倒したがその後ゴブリンの姿が何度も見られるようになり、その数もジワジワと増えてきたうえ上位種の姿も発見されたため、ギルドに討伐依頼を出したそうだ。
「なるほど。…この辺りの細かい地図はありますか? もし良ければそれを借りるか写させてもらいたいのですが」
「はい、ではこれを」
村長が棚から取り出した地図を受け取って見ると、どうやら伐採場は村の西、炭焼き小屋は伐採場から川に沿って少し下った先にあるらしい。
「分かりました。ではまず伐採場やその周辺を調べてきます。
万一に備えて村には一人残りますのでご安心ください」
僕たちが離れたときに襲われたりしたら危ないからね。
一応この村には高さ2メートルくらいの杭を並べて作った壁がある。小さなゴブリンならそれで十分防ぎながら迎撃出来るし、上位種が来てもルミアやイリトゥエルの魔法なら、近付く前に仕留められるはずだ。
「あぁ、一応結界も張っておこうかな……」
僕は村長との話を終えて村の中を歩いていると、そんなことを思いついたので回れ右をして村の中心部に行き、そこで祈りの結界を張った。
「……これでよしっと。村全体は無理だけど、建物に避難するときには役立つよね」
中心部にある十数軒ほどの建物を覆う結界を見ながら僕がそう言うと、村の入り口の方から赤い狼煙が1本上がった。
「赤1ってことは単体か少数のモンスターか…。
普通のゴブリン相手なら、あの二人のどちらかだけでもで充分すぎるだろうし、それなら僕は他から攻め込まれないように別の場所を警戒した方が……」
僕がそう言って狼煙から目を離して周りを見回していると、入り口の方の狼煙に続いて、衛兵が上げたと思われる狼煙が村の周りを囲むように次々と打ち上げられた。
「なっ、なんだなんだぁっ?!」
それと同時に村人たちが全方位から逃げてきて、先ほど張った結界の中の建物へと避難していき、村の入り口のある北の方からはイリトゥエルが走ってきた。
「ジグ! ゴブリンが一斉に攻めてきています! 北の入り口はルミアが抑えてますから、私たちも他の入り口を守らないと…!」
「ちょっと待って……村長から貰った地図を見ると村の入り口は全部で5つもあるし、これじゃあ僕たちの手が足りなくて守り切れないよ。
それなら僕が張った結界まで引いて、ゴブリンが集まってきたのをまとめて相手にした方が戦力的にも楽になると思うけど、イリトゥエルはどう思う?」
「……勝つための作戦としては良いと思います。けれどその場合、村の中が荒らされて畑や家屋に被害が出ますから、その方法をとるなら村長の意見も聞きましょう。
例えここで命拾いしても、村がめちゃくちゃになってはこの先村人たちがかなり困るはずです」
僕には見えていない部分も、ずっと里を守ることを考えてきたイリトゥエルは気付くらしい。
それならばと村長との話はイリトゥエルに任せて、僕は慌てふためく衛兵や武器を取って戦うという村人に、東西に別れて守るように言い、自分は一番多く狼煙が上がっていた村の南へと向かう。
「ここは僕が抑えますから、皆さんは北以外の入り口の守りに回ってください! 『エル・メニア・ウインド・カッター!』」
「わ、わかった、後を頼む!」
合流すると同時に風の刃でゴブリン達を薙ぎ払うと、それを見ていた衛兵や村人たちは僕に任せて他への助勢に向かう。
「それにしてもどうしてこんな大量のゴブリンが……。
『エル・メニア・トルネード!』
…洞窟を潰してまだ1年ちょっとしか経っ……あぁ、そういえばゴブリンって繁殖力が凄まじいって言ってたっけ。
『エリア・サンダー・レイン!』
…それにしてもこんなに増えるなら、ギルドや騎士団に定期的に討伐要請を出してもらった方が良さそうだなぁ。
『ホーリー・ライト!』
…それとも前みたいに新人騎士や治癒術士の訓練がてら、間引いてもらう方が良………あぁもう鬱陶しい!
『金剛斬糸!』」
次から次へと群がってくるゴブリンを相手に、僕はあれこれ考えながら村への侵入を阻んでいたが、倒しても倒しても減らない数にウンザリしてきて風の糸を放つと、辺り一帯のゴブリンを全て貫き蜂の巣にした。
「何だか山の上の方から来てるみたいだなぁ……」
「ジグ! 村長はこの状態では仕方がないので、村の被害については構わないから村人の命を優先して欲しいと仰ってました!」
報酬的にもこれだけの数を相手にする依頼ではなかったはずなので、もしかすると村長はその辺を気にして無理をしてるのかも知れない。
「普通のゴブリンが相手なら、イリトゥエルは負けないよね?」
「えぇ。回復薬もありますし、どれだけ群れても雑魚は雑魚です。上位種がいないなら数時間程度なら問題ありません」
「ルミアはどうだろう?」
「ふふっ、彼女は私以上に心配ないかと」
「じゃあちょっと僕は行ってくるから、ここを任せても良いかな?」
「村長はこちらの案を受け入れましたけど……?」
僕の言葉を聞いたイリトゥエルは少し心配そうな顔をして問う。
「うん。でもイリトゥエルの言う通り、村に被害が出るのは良くないかなと思ってさ……」
「そうですね……わかりました。では、いってらっしゃい」
僕がイリトゥエルの考えに同意したことを告げると、ふっと優しく微笑んだイリトゥエルは頷いてそう言うと、僕の後ろから迫っていたゴブリンが凍りついて動きを止め、風の刃で真っ二つになった。
「ここは私が死守します。ですからジグは大元をどうにかしてください!」
「ありがとう、行ってくる!」
互いに風の刃を放って道を切り開くと、僕は一気に山の頂上を目指して走り出した。
初めて冒険者らしい依頼を受けた3人でしたが、初来訪となるサスリブ村付近にはゴブリンが予想以上にたくさんいて、しかも村への道中で倒してきたために警戒され、一斉に攻め込まれる形となってしまいました。
そんなこととは見当もつかないジグたちですが、どうやらゴブリンたちは山頂の方からやって来る事がわかり、その大元を叩くためにジグが単身向かうことにしました。
これまでに戦ってきたモンスターや敵よりも格段に弱いゴブリンですが、数が多いと厄介ということを知る機会となり、またパーティーとしての実戦経験が少ない彼らにも、適材適所というか役割分担を学ぶ良い機会となればいいですね。
次回は山頂の方のお話の予定です。




