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転生の糸使い [830万PV突破・400万字、900話以上の大ボリューム!]  作者: 青浦鋭二
第2部 海の国編 (初任務・火焔馬・海の民・ハイワーシズ)

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第183話 初任務 その15 魔女と竜騎士 (レストミリア視点)

今回は狼煙が上がった辺りから、レストミリア視点のお話です。

 ラジク殿たちが盗賊の追撃に出てから、もうだいぶ経つ。守りを任された私たちは順調に敵の数を減らしていて、間もなく敵を撃退し勝利することが出来そうだった。

 すると突然、北の森から白2本の狼煙が上がった。


「前にも同じのが上がってたけど、今回はどっちだろうねぇ……。

 いや、いずれにしてもこちらに余力があるなら、ラジク殿たちへの応援を回しても良いかな。

 万が一、森に伏兵でもいたら大変だしね…」


 私は考えをまとめると、負傷者の治療のためにアマリア様とルミアを残し、ラジク殿と共に来た騎士に現場の指揮を任せ、ヒスティリスとイリトゥエル様を連れて馬で向かうことにした。


 すると森の手前で逃げた盗賊を背負ったジグと遭遇した。


「ジグ! 狼煙を上げたようだけど、いったい何事だい?」


「はぁ……はぁ…ミ、ミリアさん! 新手が…ドラグニアの竜騎士というのが現れて、師匠が残って戦ってます! メラリオも魔力切れで倒れてるので、は、早く増援を…!」


「なんだって!? かなり危険だけど私だけじゃ手が足りないし、二人は私に付いてきてくれるかい?」


「もちろんです!」


「えぇ、早く行きましょう!」


 私の問いにヒスティリスもイリトゥエル様も頷く。


「ジグは街に戻ったらアマリア様の治療を受けるようにね」


「すみません。師匠とメラリオのことをお願いします……!」


 私は頷くとジグと別れ、二人を連れてラジク殿の元へと急ぐ。


「二人とも、相手はセントリングで言うところの護聖八騎みたいなものだから、絶対に無茶をしたらダメだよ。

 ラジク殿とメラリオを回収したら、逃げの一手だからね!」


「「はいっ!」」


 二人に注意点を告げ、狼煙の元へと近付くに連れて、木々の向こうから魔法の光が見えてきた。


「オオォォォッッ!!」


「しぶとい男ねぇ…『メニア・ライトニング!』」


風之太刀(かぜのたち)六連(ろくれん)!』


 そこには全身傷だらけの血だらけで剣を振るい、敵の攻撃を切り裂くラジク殿と、ジグの言う通りドラグニアの竜騎士がいた。

 しかしその相手には見覚えがある。


「たしかあれはカサンドラ……『雷迅剣(らいじんけん)』のカサンドラか!」


 私は過去の記憶を探りながら作戦を練る。

 竜騎士が相手とは言えそれが彼女なら、私がここにいるのはそれこそ、導きの神の祝福でもあったのだろう。

 この『右眼』と属性の相性から、過去に一度だけ戦ったときには、かなり優位に事が進められた。


 とは言え昔とは違って彼女も竜騎士になっていることだし、今の自分との実力差がどれほどあるかは分からない。

 しかしあの敵を抑えられるのは、この場に私しかいないとも思う。


「…よし、私が敵の相手をするから、ヒスティリスは倒れてるメラリオを運んで先に撤退。

 イリトゥエル様はラジク殿に付いて最低限の治療を終えたら、ヒスティリスの後を追ってください」


「「わかりました」」


「では行くよ!

『ホーリー・ライト!』『アクア・ゲイザー!』」


 私はカサンドラが出現させた闇魔法の手を打ち消すと同時に飛び出し、不意を突かれて動きの止まったカサンドラを水柱で押し上げる。


「助けに来たよラジク殿! ここは私に任せて撤退を!」


「『キュアエル!』ラジク様、こちらへ!」


「うぅっ……す、すまん、助かる」


「ではイリトゥエル様、私が先行しますから付いて来てください!」


「逃がさないよっ!

『エル・メニア・サンダー!』」


『エル・ウォーター・シールド!』


 私は全員が離れていくのを確認していると、彼らを追撃するように雷が飛んでくる。

 それを水の盾で防いで四人を逃がすと、着地したカサンドラはこちらを見て心底忌まわしげな顔をしてくる。


「レストミリア!? この魔女め……まさかアンタとここで会うとはねぇ」


「やぁやぁ、ごきげんようカサンドラ。

 久し振りだけど、その鎧を身に着けているとは随分と出世したみたいだね?」


「この鎧の意味がわかっていて一人で残るなんて、よほど死にたいのかしら。

 それとも昔の事を思い出して、アタシになら自分一人で充分だとか思ってるの?」


「半分正解で半分ハズレ。

 たしかにキミとの相性は良いと思うけど、あの状況なら私一人が残るしか無かったのもまた事実さ」


「そう…ならあの頃のアタシとどれだけ違うか、その体で試してみると良いわ!『雷迅剣!』」


『エル・アクア・プール!』


 剣を自分の右後方に構えたカサンドラは、雷を(ほとばし)らせて地面を蹴るともの凄い速さで迫ってくる。

 それに対して私は、膨大な量の水を自分とカサンドラの間に生み出すと、突進してきたカサンドラは水の塊に激突し、辺りに水を撒き散らしながらこちらへと突っ込んでくる。


「くっ!」


「ちぃっ!」


 昔はこのやり方で防ぎ切れたけれど、さすがに成長しているらしいカサンドラはそれだけでは止まらず、私は襲いくる剣をこちらも剣を抜いて受ける。


 しかしヴォルグラント殿の『閃剣(せんけん)』と同様に、雷迅剣も速さで斬ることを極めている技のため、大量の水で速度を大幅に削られたのでは本来の威力には程遠く、防ぎ方としてはまだまだ有効なのも事実らしい。


「さすが竜騎士になるだけあって、昔よりも技のキレが増してるね…」


「アンタこそ、その年でまだ成長しているとは思わなかったわ…」


 ギリギリと剣を押し込んでくるカサンドラと、それに耐えながら私は話す。


「失礼な子だよまったく、こんなに麗しい私に向かって何て言い草だい?

 それにそんなに顔をしかめると、せっかくのお化粧が崩れるよ?」


「治癒術を使ってまで、見た目を若く保ってるアンタに言われたくないわ!」


「あっ、今のは酷いなぁ。私のこれは母親譲りだよ?」


「あれから十年近く経つのに、何も変わってないなんて有り得るわけがないでしょ!?」


「そうは言われても事実だからねぇ…。

 それにここ数年はアマリア様のお陰で、更に若返ってる気がするんだよ!

 カサンドラにも分けてあげたいくらいさ!」


「相変わらずのわけの分からないこと…をっ!」


 カサンドラは私の剣を弾いて一旦離れると、魔力を溜め始める。


『エル・メニア・ダーク・シャドウ!』


『エル・メニア・ミラージュ!』


 私もカサンドラの動きに対応すべく魔力を溜めると、同時に分身魔法と幻影魔法を発動させる。


「そんなもので誤魔化せると思わない事ね!」


 数はこちらの方が多いけれど、実体を持つ分身体は攻撃が可能で、こちらの幻影は次々と消されていく。


「それはどうかな…『ホーリー・ライト!』」


 私はカサンドラに向けて閃光魔法を放つと、分身体は浄化の光を浴びて一斉に(くすぶ)り、込められた魔力の少ない一部は霧散していく。


「本物だけは浄化に影響されないんだよね…。

『エル・アクア・ハンド!』」


 私は閃光の中でも全く影響を受けていないカサンドラに向けて、大きな水の手を伸ばすと掴まえて握りつぶしにかかる。


「くっ…! この程度の水魔法で…」


 ギリギリと締め付けられるカサンドラ全身からは雷を放ち始める。


「アタシを止められると思うんじゃないわよっ!」


 バリバリと音を立て、辺り一帯に迸るほどの雷を生み出したカサンドラは、水の手を弾けさせて着地すると胸元で剣を構え、頭上には一気に黒い雲が発生し始めた。


「……これはマズいかな。『エル・アクア・プール!』『エル・ウォーター・シールド!』」


 私は途轍もない魔力を溜め込んだカサンドラを見て、こちらも一気に魔力を高めて攻撃に備え、先程のような水塊と水の盾魔法を唱えたうえで、更に水の属性身体強化で守りを固める。


「我が国固有の極大魔法を喰らうと良いわ!

『エル・トール・ドラグ・ライトニ…』」


黒桜裁葬(こくおうさいそう)!』


 今にも放たれんとしたカサンドラの魔法は、突如として頭上に現れた魔法陣から降り注いだ、謎の攻撃魔法によって発動を阻止され、完全に無防備な状態でそれを受けたカサンドラが地面に叩きつけられた。


「レストミリアさん、ご無事ですか~?」


 声がした方を見るとそこには街に残してきたはずのルミアがいて、どうやら彼女に窮地を救われたらしい。


「キミがどうしてここに?」


「あのですね~。ジグさんが敵の強さを考えて、更に男性二人を助けた後で撤退するには、あと一人くらいは手が必要だと仰いまして~。

 ボロボロのくせに自分が行くと言って聞かないから、アマリアさんに協力してもらって強制的に寝かせた代わりに、私が来ることにしたんですよ~。それに……」


 間延びした話し方で説明していたルミアだったが、そこまで言ってカサンドラの方を見ると、ガラリと目つきが変わって冷たい視線を浴びせ始める。


「来てみれば神たるこの私の前で、よくもまぁあのような魔法を使おうとしたものです」


「ええと……何か問題でも?」


「下界の民はここまで知らないとは、本当にやれやれですねぇ~。

 この者が唱えようとした魔法の詠唱は私の友である雷神ケラヴトールと、神々に仕えて一段下に置かれるべき神竜の名前を、互いに一部とは言え同列のモノとして扱っていたのですよ。

 こんな不遜な魔法を私の目の前で使うなんて、身の程知らずも良いところです!」


 導きの女神の生まれ変わりという彼女は、そんなことを言いながら神と竜の序列について力説していたが、私は今それどころではない。

 カサンドラが意識を失っている今、すぐにでもここを離脱したかったが少し遅かった。


「い、いきなり誰がこんな事をしてくれたのかしら……」


 意識を取り戻したカサンドラが、怒りを隠し切れない様子でフラフラと立ち上がる。


「あらあら、アレを受けてまだ立てるのですね。

 もしかしてあの者はそんなに強いのですか?」


「彼女は他国の騎士だけど、その国の中ではトップクラスの実力者だよ……」


「まあ。それは困りましたねぇ~」


 ジグから敵の強さを聞いてたんじゃないの!?

 とツッコミたいのは我慢して、私は戦闘態勢を取る。

 すると突然、カサンドラの背後に黒い影が現れた。


「カサンドラ様、計画は失敗です。速やかに撤退せよとのご命令が下っております」


「うるさいわね! アタシは今ここで、この二人を消し炭にしないと気が済まないのよ!」


「しかしリッツソリスからの援軍が迫っておりますし、これは兄君の……」


 黒い影がそう言うと、怒りを爆発させていたカサンドラの魔力がピタリと止まり、剣を収めた。


「……お兄様のご命令なら仕方がないわね。

 命拾いできて良かったわね、レストミリアに小娘。今度会うときは必ず息の根を止めてやるから、覚悟しておきなさい!」


 そう言うとカサンドラと黒い影は辺り一帯に黒い霧を発生させ、私がそれを消したときには姿をくらませていた。

女騎士の名前が判明。

カサンドラとレストミリアは魔王軍討伐後の混乱した時代に交戦しており、その時はまだ年若かったカサンドラがレストミリアに完敗してます。


モルドなどがそうであるように、カサンドラもまた属性の相性だけでなく個人としても、レストミリアを苦手としているようです(笑)


しかし戦いは年月を経て実力をつけたカサンドラが優勢でしたが、もはやフラグ破壊を得意としてそうなルミアがやって来て不意討ちし、味方の接近と敵の都合もあってどうにか助かりました。


色々あった初任務ですが、ひとまずはこれで落ち着けそうですね。

次回もお楽しみにです( ´∀`)v

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― 新着の感想 ―
[良い点] カサンドラさんとレストミリアさんはお知り合いでしたか。 どちらもSっ気がお強そうなので会話が戦闘中ということを差し引いても会話が…… 特にミリアさんが穏やかな口調ながらなぜでしょうね? 自…
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