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転生の糸使い [830万PV突破・400万字、900話以上の大ボリューム!]  作者: 青浦鋭二
第1部 教会の孤児編 (襲撃・修行・エルフの里・黒骸王・巡回の旅・王都攻防戦)

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第138話 閑話 騎士の会議と悪夢のような光景(ラジク視点)

今回はジグ達と別れた後の、ラジク視点でのお話です。

 リッツソリスからの救援要請に応えた俺たちは現在、練兵場から移動して味方の本陣がある内城壁の南門前にいる。

 アルテミア殿にたしなめられ一旦は落ち着いたのだが、実際に本陣が置かれているのを見ると沸々と怒りがこみ上げてくる。

 あのクソじじいが自分や身内可愛さに民の守りを担うべき騎士団までも、このような所に配置していることには本当に嫌悪感を覚える。


「ラジク殿、また顔に出てるわよ。団長に見られたら後が面倒なんだから、少しは取り繕ってくれないかしら?」


「ふん、俺が説教を喰らうのは今に始まったことではない。それに団長やアイゼンフォート殿とて、今の王に対してどう思っていることやら」


「まぁそうだけど、立場というものがあるんだから…」


 アルテミア殿の言うことは理解できるが、しかし納得するかは別問題だ。敵を城壁の外で防いだ教会襲撃や、街の中の敵を割と短時間で排除できた黒骸王の時とは違うのだ。

 近衛兵がいるうえ被害の出ていない内城壁の中より、今は自宅から避難せざるを得ない民を優先させなくて、一体どうするというのか。


 色々と思うところはあるが、しかしモルド殿やアルテミア殿の前でこのような態度では、それこそ八つ当たりというものだろう。


「わかったわかった。顔に出さないよう、なるべく努力しよう。二人とも済まなかった」


「ラジク殿の気持ちは俺にもわかるから、気にしないでくれ」


「それはそうだけど、あまりそういう態度が目立つと近衛がうるさいし、場合によっては罷免も有り得るんだからね…」


 小声でそんなやり取りをしているうちに、団長たちのいると思われる天幕に到着した。


「おうおう、わざわざ来て貰ってすまないのぅ。スウサの方はどうじゃ?」


「申し訳ございません。援軍を送っていただいたのにも拘わらず、守り切れませんでした。

 現在はエレオノール殿のお陰で持ち直しましたが、ゼストルフ将軍が戦死なされ、リッツソリスにまでも敵の手が及び、なんとお詫びしたら良いのか…」


「負傷で先に戻ったアドルピスカとそれに付き添ったケルガーは別として、アルテミアとラジク、お前たちの処遇については後だ。今はこちらに攻め込んできた敵への対処をせねばならん」


「ディアブラス、それではまるで皆を罰するような口振りじゃのぅ。彼らは防衛任務に就いていたわけでもなく、訓練に赴いた地で突然襲われたんじゃぞ?

 今回の敵襲に対して責任を取らせるのは、さすがに酷なんじゃなかろうか」


「あくまで一般論の話で、実際に処罰があると言ってはいないのだが……」


「ほっほっ、団長ともなると建前も使わなくてはいかんから、大変じゃのぅ」


「なら代わってくださいよ。こちらとしてもその方がやりやすいのですから」


「それはお断りじゃ。それと口調が団長らしからぬものになっておるぞ?」


「ぬぅ、全くこれだからお師匠は……ゴホン。あー、どこまで話したか……あぁ、そういうわけであるから、まずは目の前のことを話し合おう」


 さすがの団長もアイゼンフォート殿の前では形無(かたな)しだ。とりあえず、上からも今回の件で責められることは無さそうだが、ケジメとしてしばらくは給料を返上するべきだろうか。それか破壊された教会に寄付をするのも良いかも知れない。

 そんなことを考えていると、我々の後ろからレストミリア殿が入ってきた。


「やぁやぁ皆さんお揃いで。少し遅れちゃったかな?治療やその他諸々(もろもろ)が長引いてしまってね」


 負傷者の治療をしていたのは事実だろうが遅れた理由については恐らく、それ以外にも何かしていたせいだろう。

 何となくだが、いつものようにアマリア殿にじゃれついている光景が目に浮かぶ。


「ちょうど始めるところじゃよ。病み上がりのアドルピスカ嬢には、すでに避難民の護衛任務を与えてあるから心配いらんぞい」


「さて、では敵についてだが実際に目にした者の報告によれば、あれは『虐狼牙(ぎゃくろうが)』ウルファルクに非常によく似たモンスターだと聞いている。それについて皆の意見を聞きたい」


「ワシは先にアレと戦ってきたし、過去にも実際にウルファルクを見たことがあるが、あの桁違いの強さと見た目はウルファルクのそれと完全に一致しておったのぅ」


「しかし、奴は父に……ガルド将軍によって大戦時に討ち取られているはずだ」


「それについては南門兵士長のカルスト殿から、亡きアベル将軍から聞いた話としてウルファルクの正体についての情報があるわ」


 アルテミア殿がカルスト殿から聞いた話をすると、そこにいた全員が息を呑む。


「しかしアベル将軍は、そんな情報を一体どうやって知ったんだろうね?」


「あれは本当に知恵の回る男じゃったからのぅ。隠密に長けたものを使って情報を集め、それを元に作戦を立てて、魔王軍との戦を有利に進めておったと聞いておる。

 一部では魔族までも助命を条件に調略(ちょうりゃく)して、魔王軍内部の情報を得ていたと噂があったくらいじゃ」


「ふむ、魔王軍に内通者がいたかまではわからないが、実際のところ部下の中には俺やカルスト殿のように表立って戦う者以外にも、偵察などを主に行う者が何人も近くに仕えていた。

 アベル将軍なら他の者には知り得ない情報を掴んでいるかもしれんし、それを同期のカルスト殿にだけ伝えていたとしても、特に不思議は無いな」


「情報源があのアベル将軍なら、その信憑性は高いだろう。それを踏まえ、あの敵をウルファルクであると断定した場合、ここにいる我々で奴を倒すのは可能か?」


 団長の言葉に少しのあいだ沈黙が流れる。

 一番初めに口を開いたのはアイゼンフォート殿だ。


「奴を倒したときにはガルド将軍をはじめとして、配下の将校や騎士、兵士にも多大な被害が出たと聞いておる。

 現在のリッツソリスには個々としてなら比較的戦力の高い者達が残っておるが、数が圧倒的に足りんじゃろう」


「まぁ、今回は敵地で行われた魔王軍との戦いと違って、今は比較的近いところに治癒術士がいるからね。

 数の不利は支援や回復の魔法で多少は補えるけど、それはあくまでもエレオノール殿の率いている部隊が、こちらに戻って来た場合の話だね。

 私の部下もクロエをはじめとして、だいぶ出払っているし」


 二人の意見を聞いて、団長は少し考え込む。


「……スウサの戦況はどうだ?」


「私たちが抜けたことで、敵の殲滅(せんめつ)は予定より遅れると思われます。しかしキルウルク殿の協力とエレオノール殿の力があれば、そう長くはかからずに勝利することは可能なはずです」


「キルウルク? そう言えばケルガーからの報告に、アニマナイトの獣人と協力しているとあったな。どの程度の戦力だ?」


「『六征牙(ろくせいが)』の一人で『雷拳狼(らいけんろう)』キルウルク殿とその部下の獣士が9名、いずれも下級から上級の獣士です。

 連携はもちろん、ルナメキラの暗殺を任とするだけあって通常の獣士が10名いるよりも、戦力的にはかなり高いと思われます」


「ふむ、それならばエレオノールの部隊が到着するまで、こちらは守りを固めて耐えた方が良いか」


 騎士団長が考えをまとめようとしたところで、俺は大事なことを切り出す。


「団長、それについては少し気がかりがある。スウサの砦で一度姿を現した後、ルナメキラの所在が掴めていないのだ。

 奴がどう動くか分からない今、柔軟に対応できるようにしておかねば、かなりマズいことになると思う」


「なに!? それは初耳だな」


「ラジク殿の言う通り、奴の狙いが教会の者たちから変わっていないなら、必ずここに現れるはずだ。

 ウルファルクだけなら何とかなっても奴がどう動くかによっては、ここでいくら作戦を立てても無駄に終わってしまうだろう」


「そういうことなら、ルナメキラの狙いがモルドや教会の者である以上、それらをまとめて一カ所に集めてルナメキラに備えさせ、他は一丸となってウルファルクに当たるべきか……」


「今回は幸いなことに、冒険者たちの協力も得られておるからのぅ。エレオノール嬢が戻るまでは、彼らと協力してウルファルクを抑えておくのがワシも良いと思うぞい」


 団長は我々からの情報を吟味しているらしく、机の上に置かれた街や国内の地図を見ながら、再び考え込む。


「よし、ではウルファルクにはアイゼンフォート、アルテミア、レストミリアが当たれ。そして出来る限りこちらの被害を抑えつつ、エレオノールの帰還を待て。

 教会の者達と他の避難民は分けることにして、教会の者の守りをモルドとラジクが、他の避難民はアドルピスカとケルガーに任せる。

 いずれかが窮地に陥るようなら、ただちに狼煙を上げて救援を待て。王には申し訳ないが、その場合は俺が向かうとする。

 ……なんだラジク。随分と嬉しそうではないか」


「いや、団長の言葉が嬉しかっただけだ。感謝する」


「俺とて今回の命令には不満が有るからな。それはここにいる全員が同じだろう?

 王への忠誠は確かにあれど、それは我々を含めた民を代表する立場の者に対するものであって、必ずしも王個人に対するものではない」


 俺の事情や内心を知っている団長は、ふっと笑いながらそう言う。


「おぉ?騎士団長様ともあろうお方が、そんなにハッキリ言って良いのかい?」


「では聞くがレストミリア、お前の目の前でアベル将軍の娘と王が倒れていたら、お前はどちらの方を優先して治療するのだ?」


「そりゃもちろんアマリア様に決まってるよ。女神のようなアマリア様と、耄碌(もうろく)しかけた王なら考える必要すら無いね。たとえアマリア様が王を助けることを願ったとしても、それはお断りだよ」


 何の臆面もなくレストミリア殿は言い切った。まぁ予想はしていたが、何ともバッサリと言うものだ。


「ちょっとミリア、もう少し言葉を選んで言わないと…」


「じゃあアルテミアはどうなんだい?あの王とジグが同じように危険に晒されていたなら、どっちを助ける?」


「も、もちろんどちらも助けられるように努力するわよ!?」


「でもどちらかしか選べないなら?」


「そ、それは…王はだいぶお年を召されているし、すでに成人したお世継ぎがいることだし…。たとえ身分や立場が違うとしても…その、ジグはまだ子供だし、そういう事がないから……ねぇ?」


「だからアルテミアも、結局は可愛い教え子を選ぶんだよねぇ?」


「~~!」


 アルテミア殿は騎士としての立場と自分という個人の考えの間で、かなり悩んでいるようだった。これ以上レストミリア殿に苛められては可哀想なので、俺は助け船を出すことにした。


「もうそれぐらいで良いだろう。それに王には近衛や専属の騎士がいる。王の守りは彼らに任せておけば良い」


「そりゃあラジク殿やモルド殿も、私と同様に守るものが決まりきっているからねぇ。

 特にラジク殿は他にも理由があるだろうし…」


 レストミリア殿はアルテミア殿の頭を撫でながらそう言う。たしかにモルド殿は過去にアマリア殿を守ると誓っているし、俺も妹のことを案じたラファエラとの約束がある。


 しかしそれとは別の暗い感情によって、俺の中の天秤は決して王には傾かない。レストミリア殿は何か勘違いをしているようだが、あえて誤解されたままでいようと思う。

 本当の理由を知る者は騎士団長以外に、国内にもごく僅かしかいないのだから。


「よし、そろそろ無駄話は終わりだ。各自、自分の持ち場に向かえ。特にレストミリアとアルテミアは、アイゼンフォートからウルファルクについての詳しい情報を聞いておくように。

 それとラジクとモルド、お前たちはアドルピスカやケルガーに今話したことを伝えたのち、教会の者達を連れて街の北東部に移れ」


 そうして団長が皆に指示を出した直後、遠くから地面が振動するほどの爆発音が響き、全員に緊張が走る。


「今のは南の方角からか?一体何事だ!」


「も、申し上げます!今のはこちらが足止めをしていた巨狼が、咆哮波を放ったものと思われます!」


 団長の大声に、天幕の外にいた兵士が慌てた様子で質問に答えると、更に騎士が入ってきて報告をする。


「大型モンスターの相手をしていた冒険者からの知らせでは、これまでよりも更に敵の動きが活発化して、このままでは抑えきれないとのことです!」


「くっ、なぜこのタイミングで……いや、いずれにせよやることは変わらん。アイゼンフォート!アルテミア!レストミリア!お前達はただちに救援に向かえ!」


 団長の言葉に頷くと、三人はただちに動き出した。


「モルド殿、我々も急ごう!」


「うむ」


 敵に動きがあったのなら、こちらもモタモタしていられなかった。俺はモルド殿と共に天幕の外に出ると、練兵場の方に急ごうとした。

 しかしその直後、俺たちの進路を阻むように頭上から雷が落ちてくる。


「おやおや、そんなに急いでどうかしたのですか?」


「なっ…お前は!」


 すぐに戦闘態勢を整えた俺たちの目の前には、今まで姿を隠していたルナメキラの姿があった。


「ウルファルクの動きが急に活発化したのは、お前の仕業か?」


「だとしたら、どうだと言うんですか?」


「俺たちの前に三人が動いたはずだが、彼らを行かせたということは、こちらの戦力の分散が狙いか」


「忌々しいことですが、さすがにモルドは私の考えをよく知っていますねぇ」


「しかし俺たちをここで攻撃したと言うことは、練兵場に向かっては都合が悪いのだろう?」


「さて、それはどうでしょう?」


 ルナメキラは空中で楽しげに笑う。少なくとも俺にはその表情から何も読み取れない。


「モルド殿、いずれにせよ俺たちがここでルナメキラの相手をするなら、ウルファルクの相手をしている者達にこれ以上負担をかけなくて済む。

 それに練兵場のジグ達にも、コイツの手が及ぶことは無いと思うのだが」


「そう願いたいが、我々はすでに大洞窟で裏をかかれたばかりだからな……」


 モルド殿が言っているのは闇魔法による分身体や影武者のことだろう。たしかに本物とはそうそう見分けがつかないうえ、与えられた魔力量によってはかなり手強い相手になる。


「ぬぅ、そう言えばその手があったか。しかし、それならどうする?」


「どちらにせよ大人しく通してくれるとは思えん。本物ならばここで足止めして問題ないし、偽者ならば出来る限り早く倒して、皆のところに向かうとしよう」


「よし、ならばそれでいこう」


「作戦は決まりましたか?ではそろそろいきますよ!」


 そう言うとルナメキラは、両手から爪を伸ばして一気に距離を詰めてくる。俺は剣を抜くとモルド殿の前に立ち、ルナメキラの攻撃を防ぐ。


「こいつの攻撃は請け負う!モルド殿は攻撃に専念してくれ!」


「応!『エル・ヴォルガノン!』」


「ちっ!」


 モルド殿が横から溶岩球を叩き込むと、ルナメキラはこちらの剣を弾いて後ろに跳び、我々に向かって手の平から雷を放つ。

 それを互いに盾魔法で防ぎながら、こちらも溶岩球や風の刃で反撃していると、突然ルナメキラの背後に人影が現れ、ルナメキラの体からは赤々と燃える炎が噴き出す。


「な、なん、です…これは…?」


「わざわざこのようなところに、しかも単独でのこのこ現れるとは、よほど死にたいらしいな……ぬんっ!!」


 信じられないと言わんばかりの表情を浮かべるルナメキラに対して、奇襲をしかけた団長がそう言って魔力を最大まで高めると、ルナメキラの胸部を貫いた炎の剣は、その体を内部から焼き尽くして爆散させた。


「ぬぅ、あのルナメキラがこうも呆気なく倒させるとは思えんのだが、これも団長の奇襲が上手くハマった結果なのだろうか?」


「俺としても呆気ないと感じたし、モルド殿の懸念はもっともだな。しかし、それにしても助かったのは事実だが、部下を囮にして美味しいところを持っていくのは、団長としてどうなのだろうな?」


「お前たちが指示通りに動けないようだから、俺が手伝ってやったのではないか。礼を言われるならまだしも、文句を言うのはおかしいだろう」


「まぁ、たしかにそうかもしれんが……」


「ふふふ……アナタが騎士団長のディアブラスですね。噂に違わぬ実力ですが、それにしてもとんでもない挨拶のしかたでしたねぇ。少し(しつけ)が必要でしょうか?」


「「「!!!」」」


 俺たちが驚いて声がした方を見ると、そこにはルナメキラが立っていた。

 団長の剣はたしかにルナメキラの体を貫いて、粉々に吹き飛ばしたはずだ。その証拠に奴の肉片がまだそこかしこに散らばっている。

 しかし、目の前で笑っているそれはどう見てもルナメキラの姿をしていて、俺の頭は混乱してくる。


「俺の剣はたしかにお前を貫き、確実に殺したと思ったのだがな」


「えぇ、先ほどの一撃は、たしかにあの私を絶命させる攻撃でしたね」


「あの私、だと?」


「まぁ隠していてもいずれは分かることですからねぇ。さっさと種明かしをして差し上げますよ!」


 ルナメキラはそう言うと、背中から羽を生やして飛び上がる。しかしそこで俺たちは驚くべき光景を目にした。


「モルド殿、これは悪夢だろうか?」


「ぬぅ、さすがにこれは……」


 上空には辺りから一斉に飛び上がったルナメキラが少なくとも20人はいて、こちらを取り囲むように見下ろしている。


「狼狽えるな!四天王である奴がこのように大量にいてたまるか。必ず何か仕掛けがあるはずだ。幻影や幻惑、それに分身体、奴の変化(へんげ)の能力、その他全て思いつくことを試して正体を暴け!

『エル・メニア・サンダー・レイン!』」


 団長はそう言うと辺り一帯に雷の雨を降らせ、複数のルナメキラに向かって一斉に放った。

 するとルナメキラも一斉に雷を放ち、それを迎え撃つ。


「実際に迎撃したということは幻ではないようだ。しかしあの団長の攻撃を打ち消すほどの魔力を、あの数のルナメキラがそれぞれが持っているなら、たとえ分身体だとしてもかなりの魔力量だな」


「うむ。全てが本物とは思えんが、先ほどのように奇襲を成功させない限り、すぐに討ち取るのは難しいかもしれん」


 俺たちも団長に続いて攻撃を仕掛けると、ルナメキラは溶岩球を回避し風の刃を雷で相殺した。


「ん…?そう言えば奴は、先ほども俺の攻撃は受けたり迎撃したが、モルド殿の攻撃を避けていたな」


「ふむ。団長の炎剣も奴にダメージを与えていたとなると…」


「もしや弱点は火…か?」


「ほう、それならば試してみるか…。

『エル・エリア・ファイア・ウォール!』」


 団長が魔力を高めて魔法を発動させると、俺たちを中心とした一点からは教会の者達が張る結界のような形をした炎が、周囲に向かって全方向に広がっていく。


「くっ、『エル・アクア・シールド!』」


 空中にいたルナメキラは一斉に水の盾を発動させると、団長の炎をどうにか防いだ。

 しかしその中には防御しきれなかった者が数体いて、かなりの深手を負っていた。


「魔力量か、それとも属性の強さの違いか。いずれにしても個体差があるようだな?」


「ならば我々の持つ全てを試すとしよう。偽者だろうと本物だろうと、結局はいくら奴が『百化(ひゃっか)』として知られていようと、全ての属性に対応しているわけではあるまい」


「そうは言ってもモルド、お前はたしか火土と溶岩、俺は火雷土風、ラジクに至っては風しかないのだ。試せてもあと三属性では無いか」


「ふむ、まぁそれはそうかもしれないが……」


「それを言われては俺の立場が無いな。しかし団長、そこは物理的に破壊するのもありなのだろう?ならば俺は、属性に関係なく奴を斬り伏せてみせよう」


「全くお前という奴は……まぁいい。好きにしろ」


 俺たちはそう言うとすぐに行動を開始する。

 まずは頭数を減らすべく、先ほどの攻撃でダメージを受けた何体かのルナメキラから、先に叩くために動く。


「ち、調子に乗るのはまだ早いぞ!」


 ルナメキラは一斉に両腕を変化させると、いくつにも枝分かれした触手や、虫型のモンスターが持つ鎌のような腕に変えた。


「いくらでも化けると良い。俺は弟子の所に急いでいるのだ!お前が何に姿を変えようと全て斬り伏せてやる!」


 俺は全身に風を纏って風之太刀(かぜのたち)を振るうと、モルド殿や団長と共にルナメキラへと斬りかかっていった。

王命についてはラジクと同様に、不満がある騎士やモルドたちですが、その表現のしかたは各自で様々です。

レストミリアとラジク以外は、決して王を軽んじているわけではないのですが、騎士団にせよ治癒術士団にせよ軍にせよ、一部を除いては基本的に貴族や王族以外の出身の人間で構成されているので、上の者が下の者を守らないなら、自分たちも応える必要は無いという考えもある程度は、しかし確実に持っています。


それでもセントリングや他の王制の国でもクーデターなどが起こらないのは、そこまでしても体制を維持できないことや、やはり一部の特権階級の者たちは一般人に比べて、特に強い力を持つ傾向にあることと、その財力によって雇われ身辺を守る護衛や、側近の力が凄まじいためだったりします。


加えて公的な機関として存在する組織の中でも、近衛はその狂信的とも言える忠誠心から、王宮魔導師は研究のための出資を目当てに、王族や貴族に対してはかなり従順です。

その2つと並ぶ機関である騎士団や治癒術士団、それに軍部については、騎士団長や治癒術士長や元帥のもとでまとまってはいても、その思想や王と貴族に対する考えは個人個人で結構バラバラです。


ジグの周りには比較的、庶民派の人物が集まっていますが、今後は派閥の違う人物も出てくるかも知れません。

この辺りもいずれは設定などで、ある程度まとめられたら良いなと思ってます。


次回も閑話の予定(仮)ですが、恐らく別視点になるかもです。

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[一言] 団ッ長!!✨️✨️ 建前とはいえ罰を〜という話があったから少しガタガタしちゃいましたが王様に対しての考えが好きすぎる!!(*´Δ`*)✨️ そうさ自分の周りばっかり固める王様にはこうしてああ…
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