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転生の糸使い [830万PV突破・400万字、900話以上の大ボリューム!]  作者: 青浦鋭二
第1部 教会の孤児編 (襲撃・修行・エルフの里・黒骸王・巡回の旅・王都攻防戦)

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第110話 合同訓練 その6 練兵場での会話と次の試練

 目が覚めるとボンヤリとした視界には赤と白銀が見え、加えて口の中が何だか苦かった。

 そして目に映るそれがアマリアとレストミリアの髪の毛で、口の中の苦みが回復薬によるものだと理解するのに、少し時間がかかった。


「う、うーん。アマリアに…ミリアさん?状況はどうなってるんですか?」


「やぁジグ、ここはまだ練兵場だよ。どこまで覚えてる?」


「アイゼンフォート様と戦って…ええと…最後にエルフの弓を構えた所までは覚えてます」


「そうかい。ちなみにキミは弓を構えただけじゃなく、しっかり矢まで放ったよ」


「いたた…。あれからどうなりました?」


 アマリアに支えられながら起き上がると、まだあちこちが痛んだ。魔力はある程度回復しているので、首飾りもフル稼働で癒やしてはいたが、ダメージはなかなか大きいらしい。


「アイゼンフォート殿はキミの戦いぶりに満足げではあったけど、それと同時にあんなに攻撃を受けて、酷く落ち込んでもいたねぇ。

 いくら鍛えていても、流石に若い者や老いには勝てないと嘆いておられたよ。

 今は少し忙しいから詳しいことは後にしよう。アイゼンフォート殿はクロエが診ているけど、私はラジク殿とアルテミアも診なきゃならないから、ちょっと席を外すよ。

 アマリア様はこのままジグをお願いします。何かあればすぐ呼んでください」


「えぇ、分かったわ」


「え?師匠と先生を診るって、一体何が?」


 僕の質問には答えないまま、レストミリアは足早に去ってしまった。その代わりにアマリアが答えてくれた。


「ジグとアイゼンフォート様の戦いの後に皆が盛り上がってしまって、ラジク様もアルテミア様も負けてられないと言って、二人が試合をしたの。

 アルテミア様は最初、アイゼンフォート様が負傷してるし、自分やラジク様まで負傷したら何か起こったときに対応出来ないから、今は止めた方が良いと言ったのだけど、その時にちょうど任務帰りで報告に来ていた護聖八騎…だったかしら?

 その騎士様が現れて、自分がいるから心配するなと仰られて、アルテミア様も頷くしかなかったみたい。

 その後はとても激しい戦いになって、そうしたら練兵場がアイゼンフォート様の魔法で黒焦げになっていたのに、更に追い撃ちをかけるように、それはもう酷い有様になったのよ。実際に見た方が早いわ。ほら…」


 アマリアが指差す方向を見ると、練兵場は見る影もないくらいにボロボロで、地面はあちこちが抉れたり亀裂が生じており、壁も崩れ落ちていて、騎士達がその後片付けをしている最中だった。


「……これは何というか、何をしたらこうなるの?」


「私にもよく分からないわ…。でも騎士や治癒術士の皆も揃って見物していて、とても興奮したくらい凄い戦いだったのよ。

 爆風や破片が飛んできて、それを盾魔法で防いでいたクロエさんやミリアが、かなり大変そうだったわ」


「そして張り切りすぎた二人は怪我をして、僕みたいに回復魔法を受ける羽目になったと…?」


「どちらかというと、お二人とも魔力を使い果たしてしまったようだわ。あちこちに怪我もしていたけれど、互いに決定打には至らなかったみたい」


「へぇ、二人が戦う姿なんて滅多に見られるものじゃないし、僕も見てみたかったなぁ…。

 それにしても二人が強いのは知っていたけど、そんなに実力が拮抗してるとは思わなかったなぁ」


「距離をとればアルテミア様が、接近すればラジク様が有利だったみたいよ。

 お互いに相手の得意な距離にしないように、かなり激しく争っていたわ。

 まぁこの辺りはミリアが教えてくれた事だけど、それは置いといて…さぁ、話はこれくらいにしてまた少し休むと良いわ。

 ミリアの見立てよりもだいぶ早く目覚めたから、回復しきってないはずよ」


「あ、じゃあ最後にこれだけ。アイゼンフォート様は大丈夫なの?これでも結構、遠慮無しに攻撃したから、どうなったか気になるんだよ。教えてくれる?」


「ええと、アイゼンフォート様の事は…その、私の寿命が縮むかと思ったわ。でも後からきちんと話があると思うから、それまで待たないとダメよ。今は寝なさい」


「そう言われると凄く気になるんだけど…」


「ミリアも言ってた通り、嘆いてはおられたけれど無事だから、安心して今は休んでちょうだい」


「…わかったよ」


 気にはなったがこれ以上押してもダメそうなので、僕は諦めて指示に従うことにした。魔力の回復薬以外の薬の効果なのか、再び横になると眠気が襲ってきて、僕は間もなく眠りについた。


 その日は訓練と言う名の試合も全て終わっていて、治癒術士達も負傷者の治療をある程度終えたので、すぐに解散となったようだ。

 僕は寝ている間にクロエに背負われて、レストミリアやアマリアと共に教会に戻されたらしい。

 一応、アマリアや僕の護衛を兼ねて送り迎えをしているので、レストミリアが背負うわけにもいかなかったのと、クロエが是非アマリアを送っていきたいと言ったので、そうなったらしい。

 アイゼンフォートやラジクやアルテミアも、ある程度回復したので、皆無事に帰ったみたいだ。


 僕は教会で目覚めたが、魔力の使いすぎの影響や、無理をした部分がまだ痛むこともあり、食事を済ませるとレストミリアの睡眠魔法をかけられ、更にたっぷり翌日まで寝ることになった。


 翌朝、目が覚めると体の痛みは無くなっていて、ほぼ完全に体調は戻っていた。

 アマリアやモルド神父と話していると、ラジクがやって来た。


「お、もう体調は良いみたいだな?」


「はい。でも師匠こそ、昨日はずいぶんと楽しかったみたいですね?」


「うむ。アルテミア殿が相手でかなり厳しい戦いだったが、概ね満足している。彼女は本当に強くなったものだ…」


 元気いっぱいで答えるかと思いきや、ラジクはあまり僕には見せたことの無い、しみじみとした表情でそう言った。

 とても気になるけど理由は聞けないような、そんな雰囲気だった。

 しかしそんな表情はすぐに消え、またいつもの感じに戻って続ける。


「ところで体調も戻っているのなら今日は訓練ではなく、街まで少し付き合ってもらうことになるが良いか?アマリア殿も一緒にだ」


「僕は良いですけど…」


「え、私もですか?恐らく今日もミリアが迎えに来るかと思うのですが…」


「ああ、レストミリア殿には話をしてある。

 俺が二人を連れて来ると告げると残念そうにしていたが、クロエ殿からたまには治癒術士長らしく、職場にいるようにと言われて諦めていたな」


 二人でアマリアを見ると、いきなりの話だったようで少し驚いていたが、レストミリアに話が通っているなら問題無いということで、アマリアも一緒に行くことになった。

 その後はラジクとモルド神父が何やら話をしてから、僕たちは街へと向かった。


「昨日は結局聞きそびれたんですけど、アイゼンフォート様の様子や、師匠と先生の試合の様子が気になっちゃって。もうそろそろ教えて欲しいんですけど?」


「その辺りについては練兵場に着いてから話す。

 俺とアルテミア殿の事については、まぁ今度時間のあるときにでもな」


「さっきモルド神父とも話してたみたいですけど、また何か隠してたり企んでるんじゃないでしょうね?」


「全くお前という奴は……その通りだっ」


「やっぱり何かあるんじゃないですかっ!…と言うか何ですかそのドヤ顔は!?

 聞かれて素直に白状したから良いってもんじゃないですよ!?今度は一体何をするつもりなんですか?」


「そんなに問い詰めずとも、今回は別に隠すつもりは無いぞ。皆と合流してから伝えるつもりだったのだ」


「今回はって言うのも十分おかしいですけどね……むぅ、じゃあ大人しく待つことにします」


 そんなやり取りをしていると、練兵場に到着した。三日連続ともなるともう慣れたものだが、今日は皆の集合時間よりも早いのか、練兵場にはまだ誰も居なかった。

 少し待っていると、アルテミアとアイゼンフォートがやって来た。


「おはようございます。昨日はご指導ありがとうございました。僕がこんな心配をするのも失礼かとは思いますが、アイゼンフォート様はその…大丈夫でしたか?」


「ふぉっふぉっ、そんなに畏まらんでもよい。

 昨日のお主は良くやったし、それはワシの期待以上じゃった。

 ラジクの考えた通り昨日のことが伝われば、裏でアレコレ動いていた者も、しばらくは大人しくしているじゃろう。

 特に最後の攻撃は素晴らしかった。ほれ、これを見てみぃ」


「アイゼンフォート様……こ、これは!」


 アイゼンフォートはそう言うと、鎧を外して右肩を出して見せた。そこには首と肩の間に抉られたような傷痕があり、回復魔法によって治療はされているものの、かなりの大怪我に見えた。


「お主の最後の攻撃は、アルテミア嬢の嵐穿弓を思わせる威力と鋭さじゃった。

 ワシは勝ちを確信して、ちぃと油断してしまっての。ギリギリで反応はしたんじゃが、この有様じゃ」


「も、申し訳ございません…この無礼は如何様にも処罰を…」


「それは必要ないと言っておる。それにこの傷に関してはすでに治っておるし、クロエ殿からも傷痕を消せると言われたんじゃが、ワシが残すようにとワガママを言ったのじゃ」


「それは一体…?」


「油断した自分への戒めと、若者の成長の証としてこれは残す。ラジクやアルテミア嬢、それに他の騎士達も力を尽くせば、ワシにこのような怪我を負わせる事は出来るじゃろう。

 しかしそういった者たちではなく、見習いたちと変わらぬ年にも拘わらず覚悟を決め、努力を惜しまず精進するお主が、ワシに負わせたものじゃから残したいんじゃ。

 なぁに、難しく考える事ではない。まだまだ若いもんには負けぬというワシの思いと、お主の抱く皆を守りたいという気持ちを、この傷を見るたびに思い出すために刻んでおくのじゃ。

 じゃから礼を言いこそすれ、咎めたり恨むつもりは断じて無いから安心するがよい。

 昨日の戦いによって、ワシは更に強くなれると思うからのぅ」


「……わかりました。ありがとうございます。でも…」


「ん?なんじゃ?」


「アイゼンフォート様がこれ以上強くなられると、皆が自信を無くしてしまいそうですね」


「…く、くははははっ!心配には及ばん。そうならんように皆を鍛えてやるからのぅ!」


「まぁ見習いや若手には気の毒だが、騎士団の戦力増強には一番の近道かもな…?」


「ラジク殿、他人事みたいに言っててもアイゼンフォート様のことだから、きっと私たちも苦労することになるわよ…」


「もちろんじゃ。ヴォル坊もノル坊も含め、皆まとめて鍛えてやるぞい!

 …そう言えば昨日、『凍華槍(とうかそう)』アドルピスカ嬢が、任務から帰ってきたと聞いたが、元気にしておったかの?」


「あぁ、先生はちょうど治療を受けていて会っていませんでしたね。昨日は我々の所に顔を出してから、団長の所へ報告に行きましたよ。相変わらずでしたね」


「たしか今日からしばらくは休暇になるはずだけど、彼女のことだからラジク殿と同様に、休むことを知らないと思うわ…」


「ほう、なら今回の件にはアドルピスカ嬢も参加してもらおうかの?」


「うえっ!?では今回俺は、アルテミア殿とアドルピスカ殿と一緒に行くことに?

 これはもうサボるとか、楽しむどころの話では無くなるなぁ…」


「なんで私まで含めるのよ!?たしかに仕事はさせるけど、私は彼女ほど厳しくは無いわよ?」


「いや、たしかにそれはそうなんだが、普段は口うるさくても場合によっては寛大なアルテミア殿と、普段は無口なのにいきなり実力行使に出るアドルピスカ殿が揃うと、常に気が抜けないと言うか…」


「ラジク殿がサボらなければ良いだけの話よ。それにしても今回の件ならアイゼンフォート様も行きたがると思ってましたが、どうかしたのですか?」


「ひょっ!?ワ、ワシはほれ、リッツソリスの守りもあるからの。皆で留守にするわけにもいかんじゃろ?」


「ははーん…さては先生、アドルピスカ殿が帰ってきたから俺達と行動させて、自分はアルテミア殿も留守にしている間に、のんびりと過ごすつもりでしょう?」


「あぁ、そういうことね…。たしかに私が留守にしても代わりにアドルピスカ殿が居たんじゃ、いつもより頑張らないといけなくなるものね。

 それなら彼女もこちらに参加させて、自分が留守番をしようと…」


「ち、違うぞい?ワシはほれ、昨日大怪我をしたばかりじゃから安静に……うっ、いたたた!」


「先生、傷はすでに完治しているはずですし、ジグにはあんなに格好いいことを言っておいて、それはどうなんですか…」


 騎士達の話を聞きながら、僕とアマリアはラジクのドン引きという珍しいものを見て、思わず吹き出してしまった。

 それに釣られて皆で笑っていると集合時間が近くなったらしく、騎士や治癒術士が少しずつ集まってきた。


「まぁ今朝こうして皆より早く来てもらったのは、昨日の事について気にするなと伝えたかったのと、よく力を示したと言いたかったんじゃ。

 話はこんなところじゃから、あとは皆が集まるまで待機していてほしい。

 全員が揃ったら、今後の予定を伝えるのでの」


「はい、わかりました。お気遣いに感謝します」


 そのまましばらく待っていると、レストミリア達もやって来て皆が揃い、アイゼンフォートから今後についての話がされた。


「昨日は皆よく頑張っていたのぅ。先だっての治癒術士の訓練や昨日の我々の訓練により、治癒術士と騎士の双方の現時点での力を、ある程度把握することが出来た。

 それをもとに訓練として皆には新たな課題を与える。その課題とは数日の間、騎士と治癒術士を数人ずつに分けて小隊を組み、大型や複数のモンスターの討伐をするというものじゃ。

 当然、下級騎士未満の者だけではなく、引率や万が一に備えて、中級以上の騎士や治癒術士も何人か同行する。

 出発は明後日の夜明け前じゃ。今日はこれで解散とするので、明日いっぱいで準備を整えるが良い。ちなみに食料も自分で用意するか、基本は現地調達じゃ。

 必要なものがあれば、武器防具ならこちらで用意する。これ以外に何か質問があれば、直属の上司に尋ねるように。では解散じゃ!」


 うわぁお、なんかまた遠出することになったでござる…。隣を見るとアマリアも驚いてはいたが、この前の旅の記憶があるためか、少し期待の色もあった。

 でも今回は違うんだよアマリア、きっとあんなに快適な旅にはならないし、かなり厳しいことになるよ…戦闘もそうだけど、特に生活面で。


 憂鬱な気持ちになりながらも、僕は少しだけ期待した。楽しいかは別として、これなら同年代の見習いとも交流が持てるかも知れないと。

何だかんだありましたが、特に問題になることもなく(?)無事に騎士団の訓練は終わりました。


今回、新しい護聖八騎が話だけチラッと出ました。準備の模様を描くかどうかで変わりますが、次回かそれ以降は普通に出てくると思います。


街の中での訓練はひとまず終わり、外に出てモンスターを相手に実戦訓練を行うことになりましたが、どうなるか大筋以外は頭の中でもまだ確定してませんので、自分でも書いていて楽しみです(笑)

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