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二つ目の世界1

 セラビシアちゃんは家族との別れを済ませて私達の横に並んだ

 もちろん今生の別れじゃなくて、再会するための別れ

 ハクちゃんは最後までずっと泣いていたけど、もうついて来ようとはしていなかったわ

 危険すぎるこの旅路じゃハクちゃんを守る余裕なんてない。もし死なせてしまえばセラビシアちゃんの心が壊れてしまう

 それを心配したからルニア様もサニア様も彼女がついて来ることを拒んだのね

「さて行くとするか。必ず世界を救って帰ってくるぞ! 姉様、母様、妹たち、そしてハクよ! 行ってくる!」

 サニア様が転移の扉を開いた

 セラビシアちゃんの家族が手を振って見送ってくれる。ああやっぱり家族っていいものね

 私もこの戦いが終わったらアルタイルと家庭を持ちたいなぁ、なんて思ったり

 アルタイルはどう思ってるんだろう?

「到着するわ。慎重に行動して、この世界の住人が異世界から来た者を警戒して攻撃する、なんてこともあるから」

「ここはどういった世界なんですか?」

「そうですね、かつて私達も訪れた世界、人間族しかいませんがほぼすべての人が超能力と言う力を持った世界です」

「超能力!?」

「なんだそれは? 魔力のようなものか?」

「そっか、セラビシアちゃんは知らないんだね。そうだね、超能力は魔法みたいなものだと思っていいかもね。でも魔法と違って魔力は使わないんだ」

「魔力を使わない? それでなぜ力が使えるのだ?」

「もちろん別の力を使っているからよ。まあそれは見ればわかるから、ほら丁度お迎えも来たことだし」

「迎え?」

「久しぶりだねルーナちゃん。うちの娘は元気でやっているかな?」

 そう言ったのはダンディな五十代くらいの男性

 彼はニコリと笑ってサニア様と握手した

「ごめんなさい、今はもうその名前ではないの。私はサニア、本来の名前に戻ったのです」

「そうなのかい? てことはそっちの子は、君の中にいた」

「はい、この子はルニア、私の妹です」

 それからサニア様はこの世界での出来事を語ってくれた

 かつて神々や闇と呼ばれる存在、古の支配者など力ある方たちを陥れた大いなる世界の外から来た者がいた

 その者は異放者と呼ばれていて、全ての世界を消して新しい世界を創ろうとし暗躍していたの

 当然この世界も混乱の一途をたどる中、当時まだ神ではなかったサニア様が訪れた

 当時のサニア様はルーナと名乗っていて、その身に妹のルニア様を宿していて、戦いの時はルニア様が出てきて戦っていたみたい

 そしてこの世界で彼女が出会ったのが、現光の女神様であるイナミリア様

 その頃のイナミリア様は女神の幼体で、光の大神様の娘としてこの世界の明神さんという夫婦、つまり今迎えに来てくれたおじさんの娘として育てられてたらしいわ

 それにしてもサニア様、壮絶な冒険をしていたのね。この世界だけじゃなくて様々な世界を巡って、心はただの少女だった彼女はその異放者による陰謀を打ち砕いた

 色々な人の助けがあったからと彼女は語るけど、私には想像のできない苦しみだったと思う

「さて、俺はただの案内人だ。予言者エヴィケブロンの元へとお連れしたいのだがよろしいかなレディ?」

「はい、ところでその予言者エヴィケブロンと言うのはどなたですか? 以前はいなかったはずですが」

「ああ、あの人は表に出たがらないからね。予言をする時のみ地下から出て来る。今回その予言で君たちがうことが分かったんだ」

「ふーん、そんなのがいるんだ。じゃあもしかして私達に予言でも授けようってことなのかしら?」

「それはたぶんないよ。あの方が予言できるのはこの世界の範囲だけだからね。でも、この世界で起こることは予言できる」

「それはつまりこの世界に何かあるってこと?」

「まあ詳しい話は彼女から聞いてほしい」

 予言者! なんていうか素敵な響きよね

 でもこの世界にもしかしたら危機が迫ってるのかもしれないって聞くと、気を引き締めなきゃって思うわ

「そこに車があるからそれに乗ってくれ」

 明神さんはジェントルマンらしく私達を案内してくれた

 それにしても光の女神様のお父さんの名前が明神、明かりの神と書くなんて不思議

 彼の車に全員で乗りこんでその予言者さんがいる場所へと向かった

 全員が乗り込めるバンタイプの車。さすが予言者、人数も把握してたのね

 

 予言者さんのいる場所につくと数人の人が立っているのが見えた

 彼らは全員予言者さんの護衛らしいわ

「やあお待たせ、お連れしよ。この世界の救世主様を」

「おお! 貴方があの! こちらです、エヴィケブロン様がお待ちです!」

 明神さんに変わって案内してくれるのは髭を蓄えたおじいさんで、非常に温厚そうな丸っこい人

 ちょっと可愛らしいかも

 そんな彼について行って通されたのは小さな部屋

 人が数人も入ればいっぱいになりそうなところで、そこにモニターやらパソコンやらが所狭しと並んでいるものだから狭くてしょうがない

「むう、これはまたいかんともしがたく・・・。お、連れてきたかね? まあ腰かけてくださいな」

「何よここ、パリケルのとこより汚いじゃない」

「むう、こんな場所で申し訳ないです女神様、私が予言者と呼ばれるエヴィケブロンでありますよ。気軽にエヴィちゃんと呼んでくださいまし」

「いいから本題を言いなさいよ本題を」

「はい、では失礼して」

 エヴィちゃんは小さな女の子だった。十歳くらい? そんな彼女はゆっくりとこの世界にせまる脅威について語り始めた

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