いざ異世界へ1
親しい人、関わった人達に別れを済ませた私達はサニア様の力でいよいよ旅立つ
今生の別れじゃない、そんな別れにはしない
だから「行ってきます」とだけ言って私とアルタイルはサニア様のゲートをくぐった
まばゆい光に包まれて一瞬目をつむったけど、すぐに目を開けてゲートの先を確認して驚いた
「ここが、異世界? ここってもしかして」
「いや、地球じゃないみたいだ。ほらエルフや獣人がいる。でもかなり技術が進んでいるみたいだね」
そこは今いた私達の世界を遥か未来にしたかのように発展した世界
「ここはティエスタと言う世界ね。比較的安全で魔物もいなければ魔法もない世界。でも種族はたくさんいるわよ。エルフに獣人はもう見てるわね。あとは竜人やなんと機械人なんてのもいるわ」
「機械人? それって機械の体を持った人ってことですか?」
「うーんなんていえばいいのか…。人間族が遥か昔に作り出した一番新しい種族、とでもいえばいいのかしらね。機械と電子を司っているマキナ姉様が管理している種族よ」
ルニア様が言うには種族ごとに管理している神様が違うらしくて、その中でも地球上の人間族は複数の神様が見守っているんだとか
なにせ地球の人間族だけ特殊みたいだから
普通の人間族はアマテラス様という日本では超有名な女神様が管理してるようね
「さてここにはかつてこの世界で最強と謳われた魔王を探すわよ」
「ま、魔王様ですか? でもこの世界って魔法がないのになぜ魔王と名乗れる人がいるのです?」
「それはですね、かつてこの世界にも魔力があり、様々な力があったからです。しかしながら数億年前、かつての人間族が魔族を滅ぼすため使ったシステム兵器によってこの世界の魔力などといった力は枯渇、その兵器により人間族は自滅し、魔力が生命力の源であった魔族も滅んだというわけです。まぁそれだけではなく兵器は様々な力を吸い上げた結果、妖怪族もこの世界より滅んでしまったのです」
「妖怪族?」
「ええ、大昔は地球にもいましたが、妖力が無い地で彼らは生きることができません。今なお地球にも少し残ってはいるもの、絶滅も時間の問題でしょう。ですから地球の妖怪族は順次アマテラス様が別世界へと移動させているようです」
「なんだか色々ありすぎて頭が追い付かないです」
「追々説明していくから、今はともかく最強の魔王を探すわよ」
「はい…」
この世界にいるという最強の魔王はどんな敵をも一撃で屠るほどの力を持ってるらしい
私達の敬愛する魔王様よりも強いんだとか
「ん? あれ? この反応って、お姉ちゃん…」
「ええ、どうやら、まだ兵器は生きている。いえ、稼働しているみたいね」
「え?え? それってどういう」
「ま、問題ないでしょ。お姉ちゃん、場所って分かる?」
「だめ、妨害されてる。この兵器かなり性能がいいみたい。何重にもプロテクトをかけた上に見つかりにくいよう世界中に配置されているかのように見せてる。しかもどれが本物か私でも分からない」
「そっか、じゃあ全部調べればいいってことね?」
「ルニア、簡単に言うけどもしそこに兵器の仕込んだ罠があったら、私達はともかくこの子達じゃ簡単に死ぬわよ?」
げっ、それほどその兵器ってヤバいのかしら? できれば相対することが無いのを願うけど…。多分無理なんだろうなぁ
ひとまずは兵器は放っておいて、その魔王に会うことになったわ
きっと私達の力になってくれるはず
「魔王の位置は…。分かった。一気に飛ぶから掴まって」
「ちょ、こんな人ごみの中転移するんですか?!」
アルタイルが慌てて大声で止めてるけど、私達そう言えばここに来た時から人ごみの中だったはず
あれ? それなのに誰も気にしてない
「アスティラちゃんは気づいたみたいね。お姉ちゃんがちゃんと私達が気にされないよう気配遮断の力を使ってるから大丈夫よ」
「そうなんですか…」
アルタイルは声をあげたことが少し恥ずかしかったのか顔を赤らめてる
でもこれなら気にせず転移がどこでも出来るわね
「それじゃあ飛びます。二人とも私に掴まってください」
サニア様にもう一度掴まると転移が始まった
今度は転移門が出るタイプじゃなくて、瞬間的に移動できるタイプの転移みたい
ゲートタイプと移動タイプ、私はゲートタイプの方がいいな。だってこの移動タイプ、頭がグルングルン回って眩暈がするんだもん
転移した先は素敵な一軒家で、軒先に花が飾ってある
その花の前に一人の少女が水やりをしているのが見えた
狐耳があることから獣人かな?
「え? そんなまさか…。おかしいよお姉ちゃん、この子、妖怪族よ!」
「ええ、でもどうして妖怪族が? しかも白狐族だなんて…、妖怪族でも最上位じゃない」
どうやら水やりをしていた少女はこの世界では滅んだはずの妖怪族のようね。これはさっそく波乱の予感がするわ




