生まれたけど何か変なんですが8
魔法の授業も無事、とは言えないけどまあ何事もなく終わったことだし、次回の魔法の授業までまた修行の日々かな
そうそう、私の魔法を見た生徒のみんなが私に教えて欲しいと集まったんだけど、放課後のカルテアお姉ちゃんの仕事が終わるまでの間に教えてみることにした
一人で訓練してもいいけど、こうやって人に教えることで新しい発見があるかも
というわけで放課後は私が先生として簡単な魔法を教えてみることになった
聖都はソル君にプラム、アディリア、それからアディリアの取り巻きの男女数名と、ガルダ・ゼイオン君というゼイオン侯爵家の一人息子だ
アディリアの取り巻きは案の定アディリアといたいがためで、私を目の敵のように見ているけど、私の教えを真面目に受けてる辺り根は真面目なんだね
それからガルダ君なんだけど、彼は侯爵家の子で非常に態度が悪い!
何でこの授業を受けに来たの? ひやかしなの?
ホント腹立つ!
「なんだよそんな魔法。俺にしてみればくだらないね。雷魔法こそ最高の強さを誇るんだ。見てろよ」
火魔法について教えているのに勝手に雷魔法を使ってプラムやアディリアに向けて撃ってくる
それをソル君と私で止める感じだ
全く、一体どういう教育を受けているんだ。親の顔が見てみたいよ
「ガルダ君! これ以上私達の邪魔をするなら出て行ってください!」
ある日とうとう見かねてそう怒ってしまった
するとガルダ君は急に黙り込んみ、こちらを睨む
「ふん、弱いくせに粋がるなよ? 俺は強いんだ。お前なんてちょっと初級魔法の威力が高いだけだろ? 女のくせに、俺はな、雷魔法で魔導騎士を目指すんだ。カルテア様に気に入られてるからっていい気になるなよ? そら、ボルティカルランス!」
「危ない!」
みんなに降りかかるような危険な魔法。まだ何の耐性もない子供がこれを喰らったら、死んじゃう!
すぐに私は魔法結界を張ってすんでのところでみんなを守った
「なんてことをするんですか! 一歩間違えば死人が!」
「ふん、もっと連発出来るぜ? そらそら!」
これは大問題だ。この子はこの魔法の威力を分かっていない
魔王様や父様、カルテアお姉ちゃんはよく言っている。力の使い方を間違ってはいけないと
これは完全に間違った使い方。ならそれを正してあげないと!
「マジックコントロール!」
この魔法は相手の魔法のコントロールを奪って自分のものにする魔法
「うわっ!」
彼に自身の魔法が全て返っていった
地面をえぐり、土煙が舞い上がる
やがて煙が晴れると、彼は尻もちをついて驚愕に目を見開いていた
「あ、ああ」
「ガルダ・ゼイオン!」
「ひぃ!」
「君は今どういうつもりで魔法を放った?」
怒りに満ちた顔をしていたと思う
ガルダはガタガタと震え、私を見ていた、というより目を放せないでいた
「そそそそれは、け、怪我くらいさせ、て、俺の、強さを見せつけようと」
「怪我!? 今のは怪我では済まない事、分からなかったのですか?」
「そ、それはその、俺、この魔法使ったの、初めて、で」
「初めてで人を殺せるような魔法を使ったのですか!?」
「う、だ、だって俺…」
「だってもへちまもないでしょうが! この事はお父様にご報告させていただきます。追って処分が伝えられると思いますのでそのつもりで」
「え、そ、そんな!」
厳しいとは思わない。それだけのことを彼はした
幸いにも怪我人は一人もいないけど、一歩間違えれば誰かが死んでいたと思うとゾッとする
魔法は便利だし、魔物を倒すのに強力な武器になる
それ故に戦争で人に向けられることもあるため、当然人を殺せる
それを理解もしないで使ったことに私は怒りを覚えた
「今日の訓練はこれで終わります」
みんなシーンと黙り込んでしまった
次からは来ないかもしれないな
「ア、アスティラ!」
私が去ろうとすると後ろから声をかけられた
振り向くとプラムとアディリアが立っている
「その、守ってくれてありがとう! すっごくカッコよかった!」
「アディリア…」
「わ、私も! ありがとう!」
アディリアとプラムは私にお礼を言ってくれる
「いえ、怖がらせてしまいました。すみません、疲れたので私はもう帰ります」
嘘だ。疲れてなんていないけど、今この子たちの顔を見れなかった
恐れられているんじゃないだろうか、私が振り向いた瞬間震えるんじゃないだろうか
そう思ってしまう
マジックコントロールなんて魔王様くらいしか覚えていないような伝説級の魔法らしいし、それを間近で見たんだ
明らかに自分たちと実力の違う私をどう思っただろうか
それが怖くて、私は彼女たちの顔をまともに見ることもできずに、カルテアお姉ちゃんを待たないまま走って家に帰ってしまった
家に帰ってからずっと自室に引きこもり、一人で悩んでいると扉が叩かれた
「アスティラ、入ってもいいかしら?」
母様だった
「母様、私」
「聞いたわよアスティラ、お友達を守ったのね?」
「はい、でも、怖がらせてしまったかもしれないんです」
「大丈夫よアスティラ、貴方は領主の娘として正しいことをしたわ。もっと胸を張りなさい」
「でも母様」
「でもじゃありません! 貴方の力は民を守るためにあると言ったでしょう? 誰が何と言おうとあなたのことは私が認めるわ。それにカルテアもね。あの子もあなたのことをほめていたわよ」
「お姉ちゃんが?」
「ええ、誇らしいって。だからほら、部屋から出て、お夕飯を食べなさい」
「は、はい!」
母様とカルテアお姉ちゃんが認めてくれてる。これほどうれしいことはない
なら、私は、これからもこの力を誰かを守るために振るいたい