旅の始まり7
それから私とアルタイルがギルドの依頼を受けて、冒険者としての仕事をしている間はエヴァをレナとアイに任せることにしたわ
あの二人は面倒見がよくてエヴァも本当の姉妹のように懐いてる
境遇が似ていたこともあるかも
三人とも孤児で私が妹のように可愛がってるしね
それに母様もあの三人を娘同様に可愛がってくれてる
でももしこの先あのような子達が増えたら?
私はどうすればいいのかしら
この家だけじゃきっと全ての子を救いきれない
それなら
そうね、そのうち用意しましょう
たくさんの被害を受けてる子供達を救うための施設を
エヴァが来てから数週間経って私達は相変わらず依頼をこなしていた
そして今日もまた依頼を受ける
ここ数日でたくさんの依頼をこなしたので私達のランクは一ランク上がっていた
Dランクにね
これで依頼の幅も広がったから、私達はさっそくDランクの依頼を受けていた
その中に気になる依頼があったのよね
というのもそれは魔族の依頼じゃなくて、精霊族からの特殊な依頼だった
精霊族はあまり人前に姿を見せない種族で、もちろん魔族の前になんて本当に姿を見せないの
かなり珍しい依頼だけど誰も手を付けようとしていない
依頼内容がはっきりしないって言うのもあるだろうけど、精霊族ともめごとになると生きていけなくなるかもしれない恐怖もあるのよねこれ
精霊は自然に直結している種族で、もし何か他種族と問題でもあればとんでもないことになりかねない
そういえば噂で聞いたんだけど、人間族が今精霊と敵対し始めてるって
これってもしかして偽勇者が何か企んだために精霊族ともめてるんじゃないかしら?
未だに動きが無かったけど、最近はいろいろな種族と問題になってるって聞いたわ
それを受けて人間族と敵対する種族も出始めている
リザードマンとかトードマン、ダークエルフ、ドワーフもそうね
だんだんと人間族に不信感を抱く種族が増えてるのよね
ともかく私達はこの精霊族の依頼を受けることにしたわ
「それで場所はどこ?」
「ちょっと待ってね…。そんなに遠くないわ。エイトバックスの森ね。ほらこの街のはずれにある」
「ああ、あそこか。あそこは別段危険な魔物もいなかったはずだよね? なのに討伐依頼って書いてあるよ」
「ほんとだ。精霊なら相当強い魔物でも単独で倒せるはずよね?」
「もしかしたら生まれたばかりの精霊なのかもね。それだと他の精霊に守ってもらわないと駄目なはずだから」
「つまりこの精霊はまだ弱くて、守ってくれる精霊もいないってことなのかな?」
「そうだと思うけど、まあ会ってみないと分からないか」
というわけで私とアルタイルはエイトバックスの森に来た
心なしか前に授業の演習で来た時と違って変なざわめきが聞こえる
そこかしこで見られているかのような違和感もあるわ
「おかしいね、様子」
「ええ、それに精霊も見当たらないわね。あ待って、そこにいるわ」
私の指をさした方角に女の子が立っていた
その気配は小さくて力もあまりないみたい
その子はトテトテと歩いてきてお辞儀をした
「依頼を受けに来てくださったのですね! ワタシはセラルダ、機械の精霊です」
「機械の精霊!? 機械だって!?」
アルタイルが驚いてる
機械と言う言葉に驚いてるみたい
当然私もこの子が機械と言ったことに驚いたわ
だってこの世界にその言葉はないのだもの
その言葉を知っているってことは、アルタイルってもしかして
それにこの機械の精霊っていう少女はところどころに機械的な印象がある
目がチカチカと光り、肩や手首にキリキリとうごく歯車が見えてる
そうね、まるでアンドロイドのような感じ
でも表情があってちゃんと感情もあるみたいね
「ワタシつい最近ここで生まれまして、そしたらいきなりこの辺りの魔物が襲ってきたのです。このままではワタシは成長する前に殺されてしまうでしょう。ですからこの辺りにいる魔物の討伐、もしくはワタシを保護してください。悪いようにはしませんよ? 保護してくれたらワタシの力で色々とできることがあるのです」
「力?」
「そうです。機械の力、この世界にはないのにワタシが生まれました。それはつまり機械がこの世界で生まれたということになるのです。どこでどう生まれたかまではワタシは知らないですけどね」
つまり、私が機械の神力を手にいれたからこの子は生まれたってことになるのかな?
それはつまり、この子は、私の娘!
いやそれは飛躍しすぎか
でも精霊であるこの子を保護すれば、他の精霊との架け橋になってくれるかもしれない
それが理由ってわけでもないけど、私はこの子を放っておけないから保護することにした
母様にはまた子供が増えたことで半ば呆れられたけど、母様も自分の子供が増えているようで嬉しいのかも
ずっと表情が朗らかで、保護した子供達を見てニコニコしてる
とにかくこれで精霊の依頼は完了したと思う
ギルドは機械の精霊というとてつもなく珍しい存在に驚いたけど、悪い人に利用されないようにとギルド側もできる限り隠匿や保護に関する手助けをしてくれるって言ってくれた
それにしても私、まだ結婚もしてないのにどんどん家族が増えてる気がするんだけど…
まぁいっか




