旅の始まり1
私達は十七歳となった
祭典での黒い人族達の襲撃から二年、あれから捕虜となった彼らは魔王様の元で働くことになった
命を救われたことで非常に魔王様を崇拝するようになってる
それと、人間族との小競り合いは少なからずあるものの未だ偽勇者の動きがない
元黒い人族達に聞いてみたところ、恐らく減った十二勇士の補充をしているんじゃないかということだ
他の十二勇士はともかく、改造人間こと秘検体は恐ろしいほどの数の孤児や誘拐された子供などが犠牲となって、かなりの数の成功例がいるからいくらでも補充が効くらしい
その施設をつぶそうかとも思ったけど、数年前私が転移でそういった子を救いまくったこともあって転移を阻害する魔法をかけられてるみたい
悔しいけど、今はまだ助けには行けない
それからその元黒い人族達だけど、しばらく魔王様の元で暮らしていたら黒かった体は元の色に戻って行った
定期的に偽勇者から力を注いでもらわなければあの力は出せなくなるのね
あと秘検体723号ことレナちゃんは私の家でアイちゃんと仲良く暮らしている
元の体に戻す方法はまだ見つからないけど、魔族の研究者がなんとか方法を探してくれてる
まぁ現状そこまで苦労はしてないみたいね
二人は姉妹のように仲良くなって、二人で体の洗いにくい所を洗いっこしてるくらいだし
二人とも魔物を合成されてしまったせいで特殊な体をしている
早く元に戻る方法が見つかってほしい
私とアルタイルはこの二年とにかく強くなることに明け暮れたわ
今までは人族から勇者が生まれていた
それと同時に勇者に付き従う仲間も生まれていたんだけれど、今勇者は魔族から生まれた
初めての魔族の勇者であるため、その仲間がどういう風に選ばれるのか魔族にはまったく知識がなかった
ちなみに私がその一人、って言うのだけは分かってるんだけど、あれから女神様からの連絡もないし、強くなった私はちょっとやそっとじゃ死なないしで、現状手づまりだった
恐らくだけど私以外にも仲間は生まれてるはずなのに、分からなさ過ぎてその仲間を集めれないのよね
「まぁなるようになるさ」
ってアルタイルは言ってるけど、向こうの偽勇者がいつ何時攻めてきてもいいよう準備だけは常にしておきたい
というわけで私達はまず魔族国で起きている問題を解決することにした
それに伴い冒険者証も取った
人族が発行しているものとは違うけど、内容自体はだいたい同じ
レベル、スキル、魔法、職業などの情報が書き込まれていて、スキルを取得するためにはレベルを上げたときに使えるスキルポイントというものを使うみたい
ちなみに私は既に全てのスキルと魔法を取得しているためスキルポイントの使いようがない
レベルは発行時点ですでに78と表示されていて、アルタイルは69だった
ちなみにこのレベルは魔族の間ではそこまで高くない
寿命の長い魔族は100超えなんてざらで、魔王様なんて900を超えている
父様も母様も700超えだし、幹部は大体700以上かな
人族でも長命な種族は応じて高い
エルフ族なんて800超えもそこそこいるもの
あと人族じゃないけど、妖精族や精霊族、妖怪族なんていうのは1000超えもいるくらい
ただ彼らは人と魔族との戦争に加担せず、中立を守ってる
魔族を憎んでるわけでもないから普通に接してくれるのよね
以前妖精族であるケットシーの行商人なんて私が可愛いからっておまけまでくれたし
さて、旅立ちの日、父様と母様、それに魔王様とエイリアスさん、アルタイルのご両親や私とアルタイルの友人たちが見送りに来てくれた
友人たちも一応冒険者証を取ってはいるけど、彼らは彼らで別々のパーティを組んで旅がてら修行するみたいね
あ、プラムとガルダは冒険には出ずにそのまま街で士官になる勉強をするみたい
ラブラブな二人は一緒に士官になろうって約束をしてたらしい
ガルダは脳筋のような言動が多いけど、結構頭がいいから大丈夫だと思うし、プラムちゃんは言わずもがな
「無理だけはするなよアスティラ、それと、アルタイル君をしっかり守るんだぞ」
「アルタイル、アスティラちゃんを守れよ。将来の妻を守るのは男として当然の責務だからな」
私とアルタイルは両親にそう言われて多分真っ赤になってた
みんなに見送られて、私達は街から出て冒険者としての一歩を踏み出した
とはいっても拠点はこの街だからちょくちょくは戻ってくるんだけどね
ここで冒険者の制度について説明しておくと
冒険者にはランクがあって、始めがEランク
そこから依頼をクリアしていってランクを上げていく感じかな
で、最高ランクはSSSランクで、魔王様なんて元SSSランクね
父様と母様はSSランク
まぁ魔族は強い人が多いからSSSランクも魔王様含めてエイリアスさん、精霊族とのハーフで幹部のニナ・マルヴェードさんなど数人いる
ちなみにこのニナさんは現在精霊族の国にいる両親に会うため帰省してるみたい
お母様が精霊で、お父様が魔族。当然その魔力もすさまじい
ただ性格に難があってかなり泣き虫で、精霊族の力も相まって、泣くことで周囲に被害を及ぼすことがあるみたい
幹部になれたのは単純に魔王様に懐いているのとその強さのため
冒険者のランクに関してはこのくらいだけど、あとは魔物にもランクがある
弱い魔物はEランクで、強くなるにつれてランクが上がって行って、やっぱり上限はSSSランク
神竜なんてSSSランクで相当に強いらしいけど、魔王様は一度戦って勝ったらしい
その神竜は魔王様の配下にそのままなってしまったって言うから驚き
それが幹部のエリフィラ・イグファフタさんという人?で、普段は人間形態をとってる
優しくて包容力のある女性だけど、魔王様の配下になる前は守っている場所を荒らす者を殺しまくっていたという激しい性格の竜だったみたい
ちなみにその場所って言うのがこの魔族領の中心である神竜の森なのよね
彼女は普段そこに引きこもってるから会うことはないけど、魔王様の招集にはちゃんと答えてるみたいね
まぁニナさんに負けず劣らず魔王様に懐いてるから当然なのよね
何はともあれ最初は魔物に困っている近くの村へ向かうことになった
街の冒険者ギルドの依頼にあったEランクの依頼だから私達でもなんとかなりそうね




