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生まれたけど何か変なんですが43

 様々な場所でうずくまったり倒れている怪我人を安全な場所に運んで、治療をしてからまた別の怪我人を助け出す

 不幸中の幸いとはこの事で、死者は今のところゼロ

 それもこれもウェリザーナさんが魔法で結界を張ってくれているからね

 最初の襲撃で怪我をした生徒もその結界に守られているおかげでそれ以上の被害に遭わなかった

 だからこそ、大けがはしているものの命に別状がある生徒はいなかったのよね

「アスティラ、どうやらもう大丈夫そうだよ。皆決着はついたみたいだ」

 まわりを見回すと父様もベガさんもセナさんも対峙していた相手を完全に無力化していた

 縛り上げられた黒い人族たち

 その中で一人泣きそうな顔の秘検体723号と呼ばれた少女

 彼女は操られていたためなぜここで縛られているのかもわからず、さらには自分の体を見て恐怖に怯えているみたい

 私は彼女の縄のみをそっとほどく

「秘検体723号! 今よ! 暴れなさい!」

 赤の魔導士とかいう女がそう言ったけど、洗脳魔法は既に切ってあるから無駄

 723号という少女はおびえるだけだった

「全く、肝心な時に使えないじゃない! この失敗作が! 何とか逃げだし、ひっ」

「黙っていろ。それ以上喋れば首を撥ねる」

 ベガさんが剣を女の首元にあてるとすぐに黙り込んでしまった

「お前らはどうやってここまで来た? 人間にあの魔物はびこる森を抜けられるはずはないが?」

「しゃ、しゃべるわけないでしょ! そんなことしたら私殺されっぷばっ!」

 女の頭がいきなり弾け、肉片と脳漿が飛び散った

「キャァ!」

 思わず私は悲鳴を上げてしまった

「なるほど、口封じは万全だということか。しかしこのような魔法、一体…」

 もしかしてと思い、私は透視のスキルを使って723号ちゃんの頭を見てみた

 そこには小さなチップが埋まっていて、何やら不穏な気配がする

 すぐにそのチップを転移のスキルを使って取り出し、空中に投げた

 案の定チップは炸裂し、周りがどよめく

 私は一瞬のうちに掴まってる黒い人族たちの脳から全てのチップを取り出して握りつぶした

 その超小型の爆弾、どう考えてもこの世界の技術で作り出されるようなものじゃない

 でもそれは今置いておいて、死体となった赤の魔導士の死体を見つめ、真っ青な顔の黒い人族に話しかけた

「どう、これでもあなたたちはまだ信じられるの? その勇者と呼ばれる何者かを」

 絶句しているけど、そのうちの一人である黒い鬼人族の男が口を開いた

「勇者様は、我らを信頼していると…。この任務を任せて下さった。お互い信頼していると思った。しかしこれは…。我ら十二勇士は、なんのためにこれまで」

 信じていた相手に裏切られたことを知って全員が驚いている

 ただ一人、首だけになったゾンビ男のみが目だけで笑っているのが分かった

 話しを聞くために私は男の下あごを拾ってくっつける

「ヒャヒャヒャヒャ! うう裏切り? 違うねぇえええ、あの方は元々お前らのような寄せ集めをおおお、信じちゃぁいない。魔王を殺せればそれでいい。まぁそれすら失敗したただの失敗作どもにもう用はないだろうけどなぁああああ! クヒャヒャヒャ! それじゃあお前らぁあああ! 全員死んでくれや」

 ゾンビ男の頭が光り始めて、大きな力がそこに集約していくのが分かった

 バチバチと黒い雷のようなものが吹き荒れ始めて私とウェリザーナさんですぐに多重結界をその男の頭と体に張った

 チューンという音のあと大爆発が起き、その衝撃で地面が揺れる

 爆発を何とか抑え込むために結界を何度も何度も展開して抑え込み続け、小さくして言って、私は闇魔法そこに放った

「ダークホール」

 小さなブラックホールを発生させる強力な魔法で、これを使えることは誰にも話していない

 それこそ強力すぎて使用を制限されているような魔法

 でも今はそんなことを言ってる暇なんてないもの

 圧縮された爆発をブラックホールの中へ押し込んで消した

 辺りは一気に静けさに包まれる

「ふぅ、危ない所でした」

 倒れ込む私の肩にポンと手が置かれ、その手の先を見ると魔王様が立っていた

「す、すまなかった、な、アスティラ。我はもう、大丈夫」

「魔王様! そんな、まだ動いちゃだめです!」

「いや、いつまでも幼いお前に任せておくのでは、魔王の名が廃る。大丈夫、エイリアスに力を分けてもらったからな」

「ええ、マナちゃんならもう大丈夫よ。ううう、本当にありがとうねアスティラちゃん。お姉ちゃんを助けてくれて」

 大号泣し、涙と鼻水で顔がぐしゃぐしゃのエイリアスさんにお礼を言われ、私はそのまま下がった

「さてお前たちの処遇はどうするかな」

 ビクッとする黒い人族たち

「よし、どうせ戻っても殺されるだけだろう。お前たち、我の監視下なら多少制限はあろうがこの国で暮らすことを許すぞ」

「な、何を言ってるのか分かっているのかお前は! 俺たちはお前を殺そうと、魔族を殺そうとしたんだぞ!」

「それに関しては許さん。我を傷つけたことは別にいい、それがお前たちの任務だったのだろう。だが、何の関係もない、兵でもない私の大事な民を傷つけたことは生涯、お前たちが死のうが許すことはない。だがそれとお前たちが困っていることとは別だ。我は人族と理解し合いたい、いずれは手を取り合い、共により良い世界を築けると思っている」

「なんだよ、何なんだよ。聞いてた話と、違うじゃねぇか」

 槍を放って魔王様を傷つけた男は、涙ながらに聞かされていた話を語った

 魔王は残虐非道で、人族を見るや捕まえ、拷問をしながら死にゆくのを楽しむような者で、彼の家族を拷問して殺したのも魔王だと教えられたそうだ

「今思えば、攫われた俺の妻と娘の死体が、俺の家の前に置かれていたなんておかしいんだ。俺は勇者のいる首都アルザードにいたのに、魔族がどうやって俺の家まで来れる? あの時は怒りで冷静さを欠いていた。そうか、そういうことだったのか…。勇者が」

 ボロボロと涙を流しながら、いいように利用されたことに怒りをあらわにする槍の男

 ただの戦闘狂だと思っていた彼の名前は、デュマス・オールソンという武闘派の男爵で、故郷では百槍と呼ばれた固有スキルの持ち主で、百本の槍を自在に出し入れできそれらを操るスキルらしい

 彼を含め、改造人間の秘検体723号ちゃん、銀月のエリュー・レヴィンスというエルフの少女、拳闘王のリザードマン、エド・ヴァウンス、剣鬼ロウガ・アオミネという鬼人、氷結帝レイリリア・ニーベルスタというハイピクシーの女性が捕虜として捉えられた

 とはいっても全員偽勇者に裏切られたことを知ってもはやあちらに帰る気はないようだ

 彼らは自分の家族や大切な者を魔族に奪われたと聞かされていたらしくて、魔族に対する憎しみで自らその体を勇者に差し出し、黒い力を手にいれたらしい

 これからは魔王様の監視下の元、普通の生活をさせてもらえるみたい

「というわけだアスティラ、ガイア、この子はお前たちに託すぞ」

「は、はぁ」

 魔王様が私達に託したのは秘検体723号ちゃん

 彼女は元秘検体428号だったアイちゃんと同じく私達が面倒を見ることになった

 彼女もアイちゃんと似たような境遇ですでに両親はいないらしい

 だから私はまず彼女に名前を付けてあげた

 もともとの名前は既に思い出せないみたいで、レナちゃんという名前を付けた

 喜んでくれたみたいでよかった

 

 そしてそれから二年が経って、17歳になった私達は学園を卒業した

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